戦略コンサルタントのポストコンサルキャリア
2024年06月24日更新
戦略系コンサルティングファームとは、数あるコンサルティングファームの中でも、経営戦略に特化しているコンサルティングファームです。具体的には、M&A・事業売却、中長期経営計画の策定、マーケティング戦略・DX戦略の策定、全社組織再編、新規事業の立ち上げなど、多岐にわたるテーマに携わります。
一方で、昨今のトレンドでは、戦略系コンサルティングファームは戦略策定だけに留まらず、実行支援の領域までその提供サービスの幅を広げてきています。その背景には、ビジネス全体におけるデジタル化と、それらを活用するためのDXニーズの増加があります。
本記事では戦略系ファームでの経験を有する人が、どのような次のキャリアを選択されるのかを解説しています。戦略系コンサルへの転職だけでなく、その後のキャリアについて興味がある方は是非お読みください。
監修者
岡﨑 健斗
Okazaki Kento
株式会社MyVision取締役
東京大学を卒業後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。主に金融・通信テクノロジー・消費財業界における戦略立案プロジェクトおよびビジネスDDを担当。採用活動にも従事。 BCG卒業後は、IT企業の執行役員、起業・売却を経て、株式会社MyVisionを設立。
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戦略コンサルファームのポストコンサルキャリア
戦略コンサルのポストコンサル動向
ポスト戦略コンサルティングファームのキャリアパスは、起業を除くと大きく三つに分けられます。一つ目は事業会社・ベンチャー(企画部門)に転職するケース、二つ目は事業会社(経営企画・M&A部門)に転職するケース、三つ目はPE・VC・投資銀行といったプロフェッショナル職種に転職するケースです。戦略系コンサルと総合系コンサルファームのポストコンサルのキャリアを比較すると、総合系ファームと比較して、より企業の中枢・上流に転職しやすくなる場合が多いです。
コンサルから事業会社へ転職する場合、ワークライフを維持しながらキャリアステップを図れたり、自分自身の指向性や熱量とマッチを重視して転職する場合が多いです。一方、PE/VC等へ転籍する場合は、ファイナンスを軸としてキャリアの幅を広げられる/自身のバリューを最大化できる可能性が高まります。
ケース①:事業会社・ベンチャー(企画部門)への転職
戦略コンサルティングファームからの主なキャリアパスの一つとして、事業会社・ベンチャー(企画部門)への転職が挙げられます。
その中でも、既存事業のグロースを担う事業責任者/事業責任者候補としてキャリアを積むケースと、新規事業開発の事業責任者候補としてキャリアを積む2つのケースがあります。事業会社の企画に配属される場合、前者のケースが多いです。その背景としては、採用枠自体が前者の方が多いこともありますが、各ポジションで求められる経験/スキルも異なることが要因として挙げられます。
既存事業のグロースを担う事業責任者/事業責任者候補としてキャリアを積むケース
既存事業のグロースを担う事業責任者/事業責任者候補のポジションで求められる主要なスキル/経験として、プロジェクトマネジメント能力が挙げられます。
既存事業の場合、人的リソースが投下された状態の中で、チームマネジメントを行いながらゴールを達成することが求められます。
また昨今では総合商社のように社内のコンサルティング部門を有する場合も多く、その場合コンサルタントとして採用されるケースも多くなっています。
この部署へ転職する場合は、コンサルティングファーム時代に関連している事業のプロジェクトや、戦略策定・事業企画の支援に携わっていると転職可能性が高まります。
新規事業開発の事業責任者候補としてキャリアを積むケース
新規事業系のポジションとして転職する場合、求められる主要なスキル/経験として、プロジェクトマネジメント能力に加え、社会人としての総合力が挙げられます。前提として、新規事業の場合、投入される人数が非常に少ない場合が多いです。プロジェクトマネジメントの前段階、例えば、社内リソースの把握(現状把握)、新規事業仮説の導出、連携先企業との折衝、仮説検証(PoC等の実施)、経営陣への答申、社内リソースの確保等、様々な業務を1人でこなす必要があります。そのため、これらの業務経験を有する戦略コンサルティングファームは、非常に転職先から重宝されるスキルです。特に新規事業創出系のプロジェクト経験があると、非常に重宝されます。
一方で、新規事業仮説の導出は、戦略コンサルティングファームでの経験を活用できる半面、使う頭/観点が異なる上に一定以上のビジネスセンスも必要であるため、非常にチャレンジングな転職でもあります。
事業会社の企画部門への転職のメリット・デメリット
事業会社・ベンチャー(企画部門)の場合、失敗時のリスクはある一方で、事業がグロースした際の成果、売上等の規模感/コスト削減幅等がダイレクトに自分の成果となります。そのため、事業会社で目に見える成果を挙げれば、自身のキャリアアップだけでなく、何よりも”手触り感”をもって仕事ができる点もメリットの一つです。またワークライフバランスも改善される傾向があります。
一方、デメリットとしては、共に働くメンバーとの連携/育成の苦労や慢性的なリソース不足に悩む可能性があります。戦略コンサルティングに参画しているメンバーは、レベルが高く、指示を受けることなく自走可能な少数精鋭集団であることが多いです。しかし、事業会社・ベンチャー企業の場合は、戦略コンサルティングファームほどエントリー時にフィルターをかけている訳ではないため、人材の質が不均質となってしまう可能性もあります。また、年収も事業会社と比較して、減少するリスクもあります。
ケース②:事業会社・ベンチャー(経営企画・M&A部門)への転職
事業会社・ベンチャーの経営企画・M&A部門に転職するケースもあります。
昨今では、経営企画よりも事業会社のM&A部隊に転職する人材の方が多い傾向にあります。前者が少ない背景は、まず経営企画のポジション自体が少ないこともありますが、戦略コンサルティングで手掛けていた領域に類似性が高く、チャレンジングな戦略コンサルタントからするとやや物足りなさを感じる場合もあります。M&A部隊の方がバイサイドの現場側の論理や事業シナジーを踏まえた投資の観点等を新たに深く学ぶことができ、加えて買収やPMIを当事者再度で関与することができるため、後者の方に流れる傾向が強いです。
求められるスキル/経験としては、経営企画の場合は基本的に戦略コンサルティングで培ったベーシックスキル/経験になります。中でも、全社的な方針策定や中期経営計画策定のプロジェクトに関与しているとより高く評価されます。 一方で、M&A部隊への転職の場合、戦略コンサルティングでM&A案件、特にデューデリジェンスプレジェクトを経験していることを前提に、実際の買収先との交渉やPMIなど、より泥臭い部分でのスキルも必要とされます。
事業会社の経営企画・M&Aへの転職のメリット・デメリット
事業会社・ベンチャー(企画部門)の場合とほぼ同様です。特に経営計画やM&Aはコンサルの内容と類似性が高いため、キャッチアップがスムーズということがあります。 失敗時のリスクはある一方で、事業がグロースした際の成果、売上等の規模感/コスト削減幅等がダイレクトに自分の成果となります。そのため、事業会社で目に見える成果を挙げれば、自身のキャリアアップだけでなく、何よりも”手触り感”をもって仕事ができる点もメリットの一つです。またワークライフバランスも改善される傾向があります。
一方でデメリットとしても、事業会社・ベンチャー(企画部門)と同様です。特に経営企画の場合、社内調整や数字の計算など、地味な作業が多いため、入社前とのギャップを感じる場合もあります。
ケース③:PE・VC・投資銀行への転職
プロフェッショナルキャリアとして、PE・VC・投資銀行へ転職するケースも見られます。特に新卒で戦略コンサルティングに参画した方がこの道を選択されるケースが多い傾向にあります。中途で戦略コンサルティングファームに参画してこの道へ転職する場合、バックグラウンドが金融系等の方が多い傾向にあります。
戦略コンサルティングファーム出身者に求められやすいスキル/経験としては、ファイナンス面での経験です。特に財務DDや事業再生の経験に代表されるように、企業を客観的に分析するスキルや、投資後の企業の経営支援を行えるスキルが求められます。大前提として、デューデリジェンスのプロジェクト経験は必須です。 また特にPE/VCが顕著ですが、実際に投資先の経営改革を主体的に行い、成果を挙げることが求められるため、戦略コンサルティングで手掛けるスコープの範囲よりも広くなります。具体的には、社外取締役としての動きや、PL/BSへの責任などが挙げられます。
またPEやIBDの場合が顕著ですが、ポテンシャル採用が主流となっています。そのためコンサルファームから転職を目指す場合、ファイナンス系やDDなどM&A案件を経験した上で、ジュニアスタッフ時代にポテンシャル採用として入社するケースが多いです。
PE・VC・投資銀行への転職のメリット・デメリット
PE・VC・投資銀行へ転職するメリットは*、戦略コンサルティングで培ったスキル/経験をベースに、さらに自身のバリュー/付加価値を高められる*点です。戦略コンサルティングのデューデリジェンスでは、企業価値を客観的かつクイックに評価することがゴールです。一方、PE/VC/投資銀行の場合は、その先の投資へ繋げ、投資後の企業価値の向上/改革に関しても、実際に出向等の形で投資先に出向き投資先の経営を担い、経営の成果に直接コミットすることができます。実際に自分で経営・事業を執行する場合も多く、事業会社とは別の意味で、”手触り感”を感じることができます。また、報酬面はコンサルファーム以上の水準である場合が多いです。
一方で、PE・VC・投資銀行へ転職するデメリットは、戦略コンサルティングファームでのハードな働き方を継続する必要があり、場合によっては更に労働負荷が増すタイミングもあります。求められる仕事の水準も非常に高く、そもそも転職への難易度が非常に高いです。
その他、起業・独立・フリーランスという道もありますが、また別記事で紹介させていただきます。
良いキャリアを進むために必要なこと
続いて戦略系ファームを退職後、ポストコンサルとして活躍するにあたり、コンサル時代に注力すべきことや、コンサルを退職する際に気を付けるべきポイントについて説明します。
コンサルファーム内でのランクアップについて
「ポストコンサルで希望通りの企業に転職したい場合、コンサルでどの役職まで続けておいた方が良いですか?」という質問をいただくことがあります。 結論として、ポストコンサルとして希望する職業の役職や、求められる役割によって異なります。
例えば、大企業の場合、求められる水準や要求が高いため、シニアスタッフ〜マネージャークラスである方が望ましいです。一方、スタートアップやベンチャー企業であれば、そこまでコンサル時代のランクによる影響はありません。
また、役職だけでなく、求められる役割によっても異なります。例えば、大企業における事業推進のリーダー、プロジェクトのリーダー、管理職となると、コンサルファームのマネージャー以上の役職が求められる傾向があります。一方、同じ会社でも実務担当者レイヤーであれば、スタッフクラスでも採用の可能性が高まります。
給料面でのダウンサイドについて
ポストコンサルにおいて、給与面は考慮すべき重要なポイントです。一般的にコンサルファームは給与水準が高く、同等の給与水準の事業会社は非常に少ないです。
特にマネージャー以上の給与を支給できる事業会社は殆どありません。またマネージャーやシニアマネージャーであれば、年齢的に家族を持っていることも多いため、安易に給与水準を下げることが難しい場合もあります。また、そもそもシニアマネージャー以上だと、コンサルティングが最も自分にフィットした職業である可能性もあります。
そのため、ポストコンサルへの転職の際には、年収が下がる可能性があることを考慮した上で、適切にキャリアを選択していく必要があります。
まとめ
今回は戦略系ファームのポストコンサルに焦点を当てて紹介させていただきました。 コンサルティング業界の中でも入社難易度の高い戦略系コンサルティングファームのネクストキャリアについて、理解を深めていただけたでしょうか。 MyVisionでは、コンサル転職に関する情報提供から、適切なファームや求人ポジションの紹介、選考対策まで、個々人の事情に合わせて幅広く支援しています。 コンサルティングファームへの転職を少しでも検討されているようでしたら、まずはお気軽にお問い合わせ下さい。