シンクタンクとは 言葉の意味やコンサルタントとの違い、年収や仕事内容を徹底解説
2024年05月30日更新
コンサルティング業界の中で代表的な戦略系・総合系ファームについてはイメージできるものの、「シンクタンクは具体的に何をやっているのか」「シンクタンクとコンサルティングファームは何が違うのか」といった観点に答えられる方は多くないのではないでしょうか。
シンクタンクは近年急速に規模を成長させており、コンサル転職希望者の中でも人気が高い企業群となっています。
本記事では「シンクタンク」について、その言葉の意味や年収、仕事内容について解説したいと思います。
弊社ではシンクタンクへの転職支援も積極的に行っておりますので、特に未経験からの転職を検討されている方は是非参考にしてみてください。
監修者
門山 友輔
Kadoyama Yusuke
システムベンダーで経験を積んだのち、大手転職エージェントであるパソナにてIT/コンサル業界向けの転職支援に従事。半期MVP6回、年間MVP受賞、全社売上レコード更新などの実績を有する。
プロフィール詳細を見る
目次
全部見る
シンクタンクとは
シンクタンクの源流
シンクタンクの起源は19世紀後半にイギリスで設立されたフェビアン協会や、20世紀初期にアメリカで設立されたブルッキングス研究所と言われています。フェビアン協会やブルッキングス研究所は、社会課題や経済に関して調査や研究を行うことを目的として設立されました。
それ以降、シンクタンクの多くは政府系組織として非営利で活動してきました。日本国内においては、高度経済成長下に様々なシンクタンクが設立されており、現在は主に政府系シンクタンクと民間系シンクタンクが存在しており、政府系シンクタンクは政府の政策立案や検討の支援、民間系シンクタンクは企業の経営戦略策定や検討を支援しています。
コンサルティングファームが企業の戦略策定や業務支援を行うのに対して、従来のシンクタンクは経済分析や政策立案・提言を目的としてきました。しかし、長年にわたり組織活動を行ってきた過程で、次第にシンクタンクも、企業の戦略策定や実行支援、システム開発といったコンサルティングサービスを提供するようになりました。その結果、現在の民間のシンクタンクが提供するサービスは、総合系コンサルティングファームとほぼ同様のものになっています。
シンクタンクとコンサルの違い
経済分析や政策立案・提言を業務とするシンクタンク機能に対して、コンサルティングサービスはクライアントに対して戦略立案から実行支援まで含めて行うという違いがあります。
しかし、前述したように、近年ではコンサルティングサービスをメイン業務としているシンクタンクも増えており、シンクタンクとコンサルティングファームの業務内容についてはほとんど違いはありません。
そのような中で1つ挙げられる大きな特徴としては、シンクタンクは大手の金融機関や企業グループを親会社に持つ場合が多いということがあげられます。
例えば国内で最も有名なシンクタンクの一つである野村総合研究所(NRI)は、野村證券のアナリスト部門が独立した旧・野村総研と、野村證券の電子計算部門が合併したことによって生まれた野村グループのシンクタンクです。
また三菱UFJフィナンシャル・グループに属する三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)や、三井住友フィナンシャルグループに属する日本総合研究所(JRI)など、日本のシンクタンクには金融機関を母体とする組織が多いことが分かります。
これらのシンクタンクは、グループ企業のチャネルを活かして案件を獲得することが多く、他のコンサルティングファームと同様に、大企業や官公庁向けに、幅広い領域でコンサルティングサービスを提供しています。
シンクタンク企業一覧(代表例)
下記は主要シンクタンクの企業一覧です。
シンクタンクの仕事
シンクタンクではコンサルティングファームと非常に近い領域でサービスを提供していますが、細かく分類すると、大きく下記の3つの領域に分けることができます。
- 調査・研究業務領域
- 経営戦略領域
- 業務・システム領域
調査・研究業務は、現在のシンクタンク全体の業務に占める割合は低いものの、シンクタンクの起源であり、特有のサービスです。研究員と呼ばれる特定領域の専門家が、クライアント企業からの依頼で調査レポートを作成したり、シンクタンク独自で調査レポートを作成・公表したりします。また、政府向けにレポートを作成し、国の政策や法案作成時のインプットとする場合もあります。
経営戦略領域や業務・システム領域のプロジェクトでは、他のコンサルティングファームと仕事内容に大きな差はありません。数名程度でプロジェクトチームを組成する場合もあれば、システム開発などの大規模案件では数十名もの体制で参画する場合もあります。
シンクタンクの役職についてはシンクタンクごとに名称が異なりますが、おおむね以下のように分類されます。
シンクタンクの役職と業務内容
役職 | 業務内容 |
---|---|
プリンシパル、ディレクター(主任研究員) | 案件の受託やプロジェクトへの提言 |
シニアマネージャー、マネージャー (副主任研究員) | プロジェクト全体の取りまとめ |
シニアコンサルタント(研究員) | 実作業の大部分を担当 |
コンサルタント(準研究員) | 情報収集や資料作成などのサポート |
横にスクロールできます
シンクタンクの働き方
シンクタンクのメイン事業であるコンサルティングサービスでは、他のファームと同様にクライアントからの依頼に基づき、プロジェクトベースで働くことになります。
シンクタンクでは幅広い領域のクライアントを支援するため、その働き方は自身の担当するプロジェクトのフェーズや形態、プロジェクトを管理するマネージャーの方針等に大きく依存します。
プロジェクトのフェーズ
シンクタンクでは、システム案件の割合が多い傾向にあります。システム案件の場合、プロジェクト開始直後や、システムリリースの直前などはハードワークになる場合が多いです。特にリリースタイミングでは、クライアントと一緒に夜間勤務となることもあります。
プロジェクトの勤務形態
プロジェクトがクライアント先への常駐か、フルリモートか等によっても働き方は大きく異なります。 近年ではフルリモートのプロジェクトも多くなってきていますが、勤務形態はクライアントの方針によるところが大きいです。クライアント先に常駐する場合は、クライアントの勤務時間に合わせて出勤することになります。
プロジェクトマネージャーの方針/自身のロール
プロジェクトマネージャーがマイクロマネジメント志向である場合は、内部ミーティングやレビュー回数も増えるため、勤務時間は長くなる傾向になります。また、レビューを行う後輩がいる立場の場合は、稼働時間は増加傾向にあります。
シンクタンクの年収
シンクタンクは日系企業ではありますが、年収は他の業種と比較して高額であると言えます。
下記は主要シンクタンク毎の平均年収です。
企業名 | 平均年収 |
---|---|
野村総合研究所(NRI) | 1,235万円 |
三菱総合研究所(MRI) | 1,009万円 |
三菱UFJ リサーチ&コンサルティング(MURC) | 925万円 |
日本総合研究所(JRI) | 703万円 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | 691万円 |
横にスクロールできます
※出典: ・野村総合研究所(NRI) ・三菱総合研究所(MRI) ・三菱UFJ リサーチ&コンサルティング(MURC) ・日本総合研究所 ・みずほリサーチ&テクノロジーズ
シンクタンクで求められるスキル
シンクタンクで求められるスキルには、他ファームと同様に論理的思考力や問題解決力、コミュニケーション能力等、様々なものがあります。
以下はシンクタンクで求められる代表的なスキルです。
専門領域における知識・経験
シンクタンクでは、クライアントとなる企業の業界トレンドや、業務内容、固有の課題など幅広い知識が必要となります。そのため特定領域における専門知識を保有していることは一つのアドバンテージとなります。 また、シンクタンクではシステム開発の案件も多く、IT・システム関連の知見があると活躍しやすくなっています。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は多くのメンバーやクライアントとプロジェクトを進めていく上で必須のスキルとなります。 またシンクタンクではクライアントを巻き込みながら実行支援していくようなプロジェクトの割合も高いため、コミュニケーション能力は非常に重要になります。
論理的思考力
論理的思考能力はシンクタンクにおいても最も重要なスキルの1つです。
シンクタンクでは他のコンサルティングファーム同様、複雑な課題に対して決められた期間で高い価値を提供していく必要があるため、論理的思考力は必要不可欠となります。
また、シンクタンク本来の業務である、調査・研究業務においても論理的思考力は必須であると言えます。
シンクタンクのプロジェクト事例
シンクタンクでは数多くのコンサルティングを行っています。今回はシンクタンクが行っているプロジェクト事例をいくつか紹介します。
シンクタンクの仕事がより具体的にイメージできるようになると思いますので是非ご確認下さい。
野村総合研究所(NRI)のプロジェクト事例
auじぶん銀行:勘定系システム、フロントシステムの更改
auじぶん銀行は、KDDIと三菱UFJ銀行により共同設立された銀行で、 モバイルに特化した金融サービスを提供しています。「銀行を連れて、生きていこう。」のブランドメッセージのもと、スマホの自由さ、便利さを銀行の機能においても実現することを標榜しています。
auじぶん銀行では、さらに付加価値のある金融サービスを提供するため、開業以来利用していた勘定系システムを見直す必要があり、そのシステムの構成を、勘定系システム、インターネットバンキングシステム、ESB(システム間の連携を担う)の3層構造に更改することとしました。
そのうち野村総合研究所(NRI)では勘定系システムとESBの導入・開発を担当し、予定通りプロジェクトを進めることで本格稼働までサポートしました。また、これらシステムの稼働後の運用保守もNRIが行っています。
みずほ証券:音声認識技術と人工知能の活用で、通話モニタリング業務を高度化
みずほ証券では、営業品質の向上観点から、顧客である投資家と営業員との通話を録音し、その通話内容をモニタリングする業務を行っていました。しかし、課題としてこの業務をより効率化・高度化する必要があり、野村総合研究所(NRI)に依頼しました。
野村総合研究所(NRI)は音声認識技術によ ってテキスト化された通話内容を人工知能で分析し、重要なポ イントを抽出するシステムを開発、大幅な業務時間の短縮・高度化を実現しました。
本システムでは、通話内容の要約ルールや、チェックリストおよびガイドライン等を教師データとして用いながら、膨大な通話データを用いて機械学習を自動的に行い、通話内容の中でモニタリングすべき発話を画面に抽出・ 表示します。これにより、担当者はモニタリングすべき箇所を容易に確認できるようになりました。
日本総合研究所(JRI)のプロジェクト事例
資源エネルギー庁:バイオ燃料等の在り⽅に関する調査
日本総合研究所(JRI)では資源エネルギー庁の依頼の元、バイオ燃料の導⼊が進む欧州や⽶国を対象に、バイオ燃料の導⼊状況や導⼊政策、導⼊課題、プロジェクト事例等について調査を実施しました。調査にあたっては机上での調査に加えて、現地政府機関、事業者等へのヒアリング調査も実施しました。
また、バイオ燃料のあり⽅検討委員会などの開催、運営、資料作成等の事務局業務も支援。上述の調査・分析を踏まえ、具体的制度設計の検討を⾏うとともに、追加的な調査・検討なども実施しました。
シンクタンクのコンサルとの違いや仕事内容についてのまとめ
今回はシンクタンクに焦点を当てて仕事内容や年収、働く環境をご説明いたしました。 シンクタンクの成り立ちやコンサルティングファームとの違いについて理解を深めていただけたでしょうか。
*MyVisionでは、コンサル転職に関する情報提供から、適切なファームや求人ポジションの紹介、選考対策まで、個々人の事情に合わせて幅広く支援しています。 コンサルティングファームやシンクタンクへの転職を少しでも検討されているようでしたら、まずはお気軽にお問い合わせ下さい。