金融×AI の先に、業界の未来を描く。 “CoE のCoE”という挑戦で、金融の底力 を引き出す【Trust株式会社 取締役副社長CTO 友田氏インタビュー】
2025年05月23日更新
企業紹介
金融業界におけるAI・データ利活用の難しさは、業界特有の構造や制度と深く結びついています。そんな中、Trust 株式会社では、金融×AI の領域に専門性を持つ人材が集い、業界全体のアップデートに挑戦しています。今回は、AI データ事業部を率いるCTO・友田氏に、同部門のミッションや実際のプロジェクト、そして今後の展望についてお話を伺いました。
インタビュイー経歴
話し手
友田恭輔氏
Trust株式会社
取締役副社長CTO
東京大学を卒業後、新卒で楽天グループに入社。国内の金融子会社におけるデータ戦略の立案、組織立ち上げ、人材育成などを担当する。Trust での活動に加え、国際標準化機構（ISO）の金融領域のデータ活用に関する日本代表のエキスパートの一員として、データ活用に関するグローバルなルール作りにも関わる。
目次
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金融業界のデータ活用を推進してきた専門家としての歩み
──はじめに、自己紹介からお願いします。
友田氏 Trust 株式会社の共同創業者兼取締役副社長CTO の友田と申します。当社ではAI データ事業部という、金融機関向けのデータ活用に関するコンサルティングとAI を活用したプロダクト開発を行う組織の事業部長も兼任しています。 Trust に参画する前は、東京大学でAI・機械学習を学んだ後に新卒で楽天グループに入社して、国内の金融子会社におけるデータ戦略の立案、組織立ち上げ、人材育成などを担当していました。また、Trust での活動とは別に、国際標準化機構（ISO）の金融領域のデータ活用に関する日本代表のエキスパートの一員として、データ活用に関するグローバルなルール作りにも関わっています。ずっと「金融×データ」という領域を軸にキャリアを積んできました。
「CoE のCoE」で、金融業界を根っこから変えていく
──―AI データ事業部の役割やミッションについて教えてください。
友田氏 「テクノロジーとコミュニティで金融の未来を創る」というミッションのもと、私たちAI データ事業部は、業界の構造改革と現場の課題解決の両方に取り組んでいます。私たちAIデータ事業部が掲げるコンセプトに、 “CoE のCoE”というものがあります。金融機関の中には、データ利活用を推進するための Center of Excellence（CoE）組織があるのですが、運営や戦略設計、実行体制の構築が十分でないケースも多いんです。Trust では、そうしたCoE を支援するさらに上位のCoE──「CoE のCoE」として、組織設計、人材育成、施策推進、ガバナンス設計など、CoE の機能そのものを強化する役割になっていきたいと考えています。
データ戦略からプロダクト開発まで。4 本柱で業界変革を支援
──―実際の業務はどのような軸で展開しているのですか？
友田氏
私たちの事業は、大きく4つの柱で構成されています。
1つ目は「データ利活用戦略の策定」。たとえば、データ分析チームを新設したいクライアントに対して、戦略の立案から組織構築、人材の育成・評価制度設計までを包括的に支援します。最近はAI の本格的な普及に伴って推進を阻害しない形でのAI ガバナンス・データガバナンスの構築支援も行っています。
2つ目は「金融特有のデータ分析支援」。与信モデルの高度化、為替・債券市場の分析、金融業務におけるAI エージェントやワークフローの開発など、専門性の高い領域にも対応しています。実務に精通したメンバーが多数在籍していることが大きな強みです。
3つ目は「ツール導入の伴走支援」。たとえば Snowflake やDatabricks といったプラットフォームの導入を、単なる技術導入で終わらせず業務にどう活かすか、ユーザーにどう浸透させるかといった観点まで支援します。
4つ目は「プロダクト開発」。クライアントからのニーズをもとに自社でプロダクトを企画・開発し、横展開できるようにパッケージ化しています。現在はまだ全体の約 4 分の1 程度の規模ですが、将来的には事業の柱として成長させたい領域です。
金融業界を知る「実践者」が集う組織だからこそできること
──―他社との違いや、Trust ならではの強みはどこにありますか？
友田氏 Trust の最大の特徴は、実際に金融機関でデータ利活用を進めてきた実践者が多く在籍していることです。特にCoE の立ち上げや運営に関わっていたメンバーも多く、現場の制約や実務上の壁を熟知しています。 たとえば、「予算をどう取るか」「ステークホルダーをどう巻き込むか」「人材をどう評価・定着させるか」といった課題は、理論やツールだけでは解決できません。そうした運用のリアルまで支援できるのが、私たちの強みだと感じています。 また、コンサル業界の中では珍しく、価格帯を抑えつつ長期にわたって伴走支援ができる点も魅力のひとつです。業界内外のネットワークを活用した柔軟な案件設計により、従来のファームよりもリーズナブルかつ高品質な支援を実現しています。
DX の崖を越える。12 兆円の経済損失と向き合う現場
──実際のプロジェクト事例について教えてください。
友田氏 あるクライアントでは、30 年以上もシステムが改修されておらず、設計書も人も失われ、ブラックボックス化していました。こうした「DX の崖（2025 年の崖）」は、経産省の調査でも年間最大12 兆円規模の経済損失を生むとされています。 私たちは、業務フローの可視化、データ構造の棚卸し、段階的なシステム置き換えを通じて、少しずつそのブラックボックスを解体しました。現場の混乱を最小限に抑えながら長期的な変革を実現していく、それが私たちの支援スタイルです。 他にも、信用リスクモデルの再構築やグループ横断のデータ統合基盤の設計支援、AI を活用した業務プロセス最適化など、多様なプロジェクトを手がけています。すべてのプロジェクトに共通しているのは、「持続可能な仕組みを残す」という視点。クライアントが自走できる状態を目指して支援しています。
40 名体制のチームで、共創する働き方を
──組織構成や働き方の特徴について教えてください。
友田氏 現在、AI データ事業部には約40 名が在籍しています。30 代が中心ですが、20 代の若手も増えてきており、40 代以上のベテラン層ともバランスよく構成されています。 働き方としては、フルフレックス制を導入しており、子育てと両立して働くメンバーや、育休から復帰して活躍しているメンバーもいます。実際、みなし残業時間を超えるような働き方をしている社員はほとんどおらず、時間の使い方は比較的自由度が高いと思います。また、Trust の特徴は「IT コンサルタントとAI 人材がチームを組む」点です。異なる視点・スキルを持つメンバーが横断的に議論することで、想定を超える成果が生まれる場面が多くあります。 キャリアパスとしては、マネジメントに進むジェネラリストと、技術を極めるスペシャリストの両軸を用意しています。それぞれの志向に合わせた成長支援が可能です。
専門性が、キャリアになる。学びと実践の循環がある場所
──どのような人がこの事業部に向いていると思いますか？
友田氏 「分析はできるけれど、ビジネスにどう活かすかが見えない」「データ準備ばかりで、データ分析をする機会がない」といった葛藤を持っている方は、Trust での仕事に大きなやりがいを感じてくれるはずです。 金融という専門領域に軸を置きながら、AI・データの実践知を深めることができる。しかも、それを単独で完結させるのではなく、IT コンサルタントやプロダクトチームと協働しながら形にしていく。その過程がスキルだけでなくキャリアの方向性まで整えてくれると思います。 また、AI やデータに関しては未経験から学べる研修やe ラーニングも用意しており、Python の基礎から体系的に学べる環境があります。
日本の金融を、世界とつなぐ視点で
── 今後の展望と、求める人物像について教えてください。
友田氏 今後は、パッケージ化・プロダクト化をさらに推進し、クライアントへの提供価値を拡張していきたいと考えています。再現性ある支援を増やしていくことで、より多くの企業に届けられる仕組みを整えていきたいです。また、グローバル展開も意識しています。AI データ事業部では一部の社内ミーティングを英語で実施しており、実際に海外の事例やナレッジをキャッチアップして支援に活かすこともあります。今後、海外クライアントへの展開も視野に入れています。 金融業界への強い想いと、技術を活かしたいという意思。その両方を持つ方と、ぜひ新しい未来を創っていけたら嬉しいですね。
── 最後に、Trust株式会社への転職を検討されている方へメッセージをお願いします。
友田氏 Trust では、金融業界をアップデートしたいという思いを持った人たちが集まっています。 コンサルティングやデータサイエンスの経験を活かして、新しい課題に挑戦したい。チームで協働しながら、専門性を磨いていきたい。そんな方にとっては、Trust はとてもおもしろい環境だと思います。 データから業界構造まで変えていく挑戦を、ぜひ一緒に楽しみましょう。
──ありがとうございました。
