クライアントの構造改革を実現するため、次世代のディールアドバイザリーの在り方を追求する【PwCアドバイザリー 人事責任パートナー 齋藤良司氏インタビュー】
2024年09月27日更新
企業紹介
PwCアドバイザリー合同会社は、M&A、事業再生・再編、インフラ関連ファイナンス支援の高い専門性をもって、変化するクライアント企業の成長戦略、構造改革や業界再編の実現を支援しています。PwCグローバルネットワークと連携しながら、クライアントがグローバル市場で競争優位性をより強固に確立できるよう、最適なサービスを提供しています。本日は齋藤 良司様に、同社の特徴と魅力についてお話をお伺いしました。
インタビュイー経歴
話し手
齋藤良司氏
PwCアドバイザリー合同会社
パートナー
メガバンクにて法人融資などに従事後、実行支援に特化した外資系コンサルティングファームにおいて売上・利益などの定量目標にコミットしたハンズオンの業績改善プロジェクトを数多く経験。2007年PwCアドバイザリー株式会社(現PwCアドバイザリー合同会社)入社以降は15年超にわたり一貫して事業再生プロジェクトに従事。上場・大手企業からオーナー企業まで、事業デューディリジェンス、事業再生計画の策定、経営管理高度化やM&Aなど含む事業再生・再編支援を数多く経験。
目次
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PwC Japanグループ内でコラボレーションし、ディールを通じてクライアントの構造改革を支援
──はじめに、自己紹介からお願いします
齋藤氏新卒でメガバンクへ入社し、法人営業等を経験した後、実行支援やハンズオンに特化したコンサルティングファームに転職しました。そこで5年程勤め、2007年にPwCアドバイザリー株式会社(現PwCアドバイザリー合同会社、以下PwCアドバイザリー)の事業再生部門に入社しました。 現在は引き続き事業再生に軸足を置いて案件をリードすることに加え、新卒採用を含む人事全般の統括も担当しています。
──PwCアドバイザリー様の概要について教えてください
PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)の中で、ディールアドバイザリーを専門とする法人です。提供しているサービスとしては、M&A、事業再生、インフラ関連ファイナンスの支援がメインです。アライアンスなど含めたダイナミックな企業変革、構造改革支援など、クライアントがインオーガニックな成長をしていくためにCxOレイヤーの方へ向けた専門性の高いサービスを提供しています。
──所属するコンサルタントの人数や特徴について教えてください
PwCアドバイザリー全体で、約850名のコンサルタントが在籍しています。男女比率としては、現状は女性が全体の20%強ですが、グローバルでI&D(Inclusion&Diversity)というテーマを推進しており、女性の採用においては数値目標も設定し、積極採用を進めています。
また、所属するコンサルタントの特徴としては、ハード面では、中途の方は業界やソリューション軸で何かしらの専門領域を持って入社された方が多いです。ソフト面では、チームワークやコラボレーションを重視する利他的な価値観を持っている方が多いかと思います。
──PwCアドバイザリーの特徴について教えてください
カルチャー的な側面として、協調性を重視したプロジェクト推進を重視していることが特徴的だと考えています。PwCアドバイザリー内でのコラボレーションは然ることながら、コンサルティング、監査法人、税理士法人、弁護士法人といったPwC Japan内でコラボレーションすることで、構造改革といった大きな問題を解決し、社会貢献をしていくことを徹底しています。 このようなコラボレーションに対する社員・職員の価値観、それを下支えするカルチャー・風土面が整っていることは当社の強みといえると思います。
また、コンサルタント視点では、PwCアドバイザリー内の他のチームや、PwC Japan内の他のプロフェッショナルとコラボレーションする機会が多いことにより、大きな経営アジェンダに携わることが可能です。そのため、成長環境としても非常に魅力的ではないかと考えています。
──プロジェクトの進め方について教えてください
当社では、ディールを実行するだけでなく、ディールを通じてクライアントの長期的価値創造を実現することを非常に重視しています。そのため、クライアントから「アライアンス戦略の検討だけやってほしい」とRFP(提案依頼書)をいただいたとしても、そのままディールストラテジーを提案するだけでなく、アライアンスの実行フェーズにおけるパートナー・ロングリストの整理など、後工程の支援も含めて提案を行い、クライアントの価値創造につながる一連の構造改革をグループ全体で協働して支援します。
──プロジェクトのテーマはどのようなものがあるか教えてください。
基本的には、先程申し上げたM&A、事業再生、インフラ関連ファイナンスの案件がメインですが、直近ではそれらにESG、ネットゼロ、DX、地政学リスク、不祥事/コンプライアンス対応といったテーマが密接に関わるような案件が増えてきました。 例えば、地政学リスクのテーマでは、中国におけるジョイントベンチャー戦略についての相談が増加しています。中国におけるジョイントベンチャーは、設立時に20~50年のジョイントベンチャー期限設定がなされていることが多いのですが、バブル後に設立された多くの企業がその期限を迎えつつあるため、昨今の地政学リスクや中国の経済状況を踏まえて、エグジット戦略の検討ニーズが高まっており、現地のメンバーとコラボレーションしつつサポートしています。
大企業の経営アジェンダの解決に資するディールの専門家を育てる
──貴社内でのプロジェクトアサインの仕組みについて教えてください
まずはアサイン先を決める前提となる組織を紹介すると、マネージャーまでは、Deals Execution Teamというキャリアの可能性を広げられるチームに所属します。そのチームでは、個々の専門性(Strategy、FA、FDD、Valuationやモデリングなど)を軸に、幅広いインダストリー(製造業、テクノロジー、サービス、エネルギー、インフラ、金融など)の案件に携わることでキャリアの幅を広げることを支援しています。マネージャークラスになると、セールスのサポートなども行いつつさらに専門性を固めていき、シニアマネージャー以上になると、7つあるインダストリーグループのどれかに所属するという仕組みになっています。 具体的な案件へのアサインについては、アサインチームが存在しており、全体最適となるようにアサインまでのプロセスをルール化した上で組織的に運用しています。アサインチームが各部門からのリクエストを受け付けた上で、メンバーの希望も考慮しつつ決定していくというフローをとっています。
──Deals Execution Teamのような広いキャリア構築を支援するチームはどのような背景で立ち上げたのでしょうか
今までは、例えばValuationやデューデリジェンス(DD)など、それぞれの専門領域のみでキャリアを積んでいくというキャリアパスが多かったです。しかし、今後大企業の経営アジェンダを解決するためには、ひとつの専門領域を突き詰めるだけでは不十分に思います。そこで、周辺領域の知見も含めて広くディールの専門家・構造改革の専門家となり、クライアントの構造改革全体を実現支援することができる人材を育成したいと考えました。Deals Execution Teamを立ち上げた理由はそこにあるといえます。私たちは専門領域での高度な知見をしっかりと習得することと、周辺領域の知見・経験も柔軟に得られるフレキシビリティを持ったアサインを可能にすることの、“二兎を追う”ことを目指しています。
──育成や研修の仕組みについても教えてください
現在PwCアドバイザリー単体でも年間80名程度の新卒社員を採用しており、未経験者の方でもキャッチアップできるよう非常に手厚い研修体制を整えています。また、各サービスライン、役職ごとに必要なケイパビリティを明文化しており、それに基づき様々な研修を履修できるような仕組みも構築しています。
育成の仕組みとしては、1人のメンバーに対し、プロジェクトマネージャー以外に、人事上の上司であるチームリーダーと、キャリアの相談にのるキャリアコーチがサポートする体制になっています。メンバーはそれぞれと、月に1回程度は1on1でコミュニケーションをとり、キャリアやアサインに関する相談を行うことが可能です。 なお、上司やプロジェクト、所属組織との相性というのもあると考え、そういったミスマッチでファームを去ってしまうことがないように、PwCアドバイザリー内の異動はもちろん、PwC Japan内での異動についてもオープンエントリー方式で応募することが可能な制度も整備しています。
ディールアドバイザリーというハードな仕事において、女性でも長期的に働ける環境を目指す
──女性活躍推進などのインクルージョン&ダイバーシティ(I&D)への取り組みに注力されているとお伺いしましたが、具体的に教えてください
PwC UKでは、職員の女性比率、昇進の女性比率、パートナー女性比率を5:5にするなどI&Dへの取り組みを非常に積極的に推進してきました。日本でも同様に、特に女性の採用や、長く働けるような環境作りに注力しています。 現在は、時短勤務、リモートワーク、各種補助や育休をはじめとした休暇制度などの制度自体は整ってきましたので、ネクストステップは、制度を本当の意味で使いやすくするため、実効性を高める工夫を進めることです。実際に、女性のマネージャーから「休む制度は多いが、ワーキングマザーの人は休みたいのではなく働きたいと思っているので、そのためのサポートをもっと充実させてほしい」という声を聞いたことがあります。例えば、現状ベビーシッター利用補助制度はあるのですが、小さいお子さんが熱を出してベビーシッターを急遽呼ばないといけない場合、使いやすくしてもらうための工夫として、例えばイントラ上に提携業者がまとめて、電話の取り次ぎまでサポートするようなアイデアなどもあり、今後工夫できることは多いと考えています。
──ありがとうございます。一般的にディールアドバイザリー業務はハードだと思いますが、そういった環境の中でも働きやすい仕組み作りに注力されているのですね
はい、当社のトップは現在女性なのですが、マネジメント層は、クライアントフェイシングのあり方、情報システム、マネタイズ手法、教育体制なども含めて働きやすさを追求するための変革を推進しています。ディールアドバイザリーの仕事は確かにタフな仕事ですが、このタフな仕事でも様々なバックグラウンドや仕事のニーズを持つ多様な人材が働きやすい就業環境を作ることができれば、他の業界・業種でもきっと同様に実現することができ、結果として日本社会を変えるほどのインパクトを与えることができると考えています。業務の品質を下げることはなく、クライアント経営課題の解決の質向上と、I&Dの両立を本気で実現したいと考えています。
目的はあくまでクライアントの構造改革。次世代のディールアドバイザリーの在り方を追求する
──PwCアドバイザリーの今後の展望について教えてください
今後は、伝統的なディールアドバイザリーをそのまま続けるだけでは競争優位性がなくなってしまうと考えているため、デジタルやアウトソース含めた実行支援の領域も掛け合わせるなど、ディールのみならずディールを通じた企業価値の向上を支援することを目指します。そのため、従来型の専門性を持っている方だけでなく、デジタルに知見を持っている方、特定の業界・業種で業務改善の経験がある方など、幅広い人材の方に入っていただくことでクライアントの長期的価値創造を支援していきたいと思っています。
──デジタルに強みを持つ人材は、PwCアドバイザリーでどのように活躍していくことができるのでしょうか
1つ目は、従来のディールアドバイザリー業務におけるDDや各種分析作業をデジタル技術でより高度化していくことや、ビッグデータやデータアナリティクスの技術を活用してクライアントの売上成長やコスト削減に向けた具体的かつ実行可能なソリューションを提案することです。
2つ目は、社内の情報共有やクライアントへのアウトプットを全て共有化したプラットフォーム化を実現することです。ファーストステップとして社内活用を進め、次のステップではそのプラットフォームをクライアントに共有できるようにし、クライアントとリアルタイムに密にコミュニケーションをとっていくことを目指しています。 このプラットフォームの活用イメージとしては、プロジェクトの最後にクライアントに数百ページのレポートを納品し議論するのではなく、リアルタイムに議論しながら改善を加えていくことで成果の質を向上できると考えています。 こういった取り組みはPwCのグローバルネットワーク全体で進めており、そのプラットフォームのローカルへのカスタマイズや、社員・職員向け教育のためには、デジタルに知見がある人材のリードが必要であり、そのような専門性を持つ方に活躍いただけると考えています。
──PwCアドバイザリーにおいて、デジタルに強みを持つ人材はどのようなキャリアを歩むことが可能なのでしょうか
デジタルに強みを持つ人材の方も、あくまでディールアドバイザリー業務を行うサービスラインに所属いただき、プロフェショナルキャリアを歩んでいただきます。その上で、KPIとしては他のディールアドバイザーとは若干異なる設定をするなどの工夫をしてミッションも明確化します。当社では基本的にはサービスラインに所属してクライアントと密にコミュニケーションをとり、本質的な課題解決に携わりながら強みを活かしていただきたいと考えています。
──最後に、転職を検討されている方向けのメッセージをください
PwCアドバイザリーでは、単にディールを実行するのではなく、ディール後も見据えたバリュークリエーション型のアプローチでクライアントの構造改革を実現していきます。例えば、事業再生案件であれば、クライアントのマネジメントのトップと同じ目線に立ち、会社の方向性や各事業の存続判断、全社的なリストラクチャリングを検討するなどの貴重な経験を若いうちから積むことができます。小さな枠に留まらず大きな構造改革にチャレンジしたいという方には良い環境を提供できると思っていますので、共感いただける方は是非お待ちしています。
──ありがとうございました