総合コンサルファームのポストコンサル
2025年07月31日更新
総合系コンサルティングファームは、近年最も勢いのあるコンサルティングファームの一つです。 総合系ファームはあらゆる業種・テーマに対応できるケイパビリティの広さを武器に、変化する市場に上手く対応しながら業績を拡大してきました。 特に、直近ではデジタル化の潮流にともない、IT領域のコンサルティングを上流から下流まで一気通貫で提供できる総合ファームへの引き合いは非常に強くなってきています。 本記事では総合系ファームでの経験を有する人が次のキャリアをどう選択されるのかを解説しています。総合系コンサルに転職するだけでなく、その後のキャリアについて興味がある方は是非お読みください。
著者

藤田 祐督
Fujita Yusuke
横浜国立大学卒業後、サイバーエージェントに入社。子会社副社長/COOとして新規事業の戦略策定〜ブランディング、プロダクトマネジメントまで一気通貫で推進。その後、アクセンチュアでの事業戦略立案・DX支援、NTTドコモでの新規事業立ち上げを経てMy Visionに参画。
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監修者

大河内 瞳子
Okochi Toko
株式会社MyVision執行役員
名古屋大学卒業後、トヨタ自動車での海外事業部、ファーストリテイリング/EYでのHRBP経験を経てMyVisionに参画。HRBPとして習得した組織設計、採用、評価などの豊富な人事領域経験を生かした支援に強みを持つ。
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総合コンサルファームのポストコンサルキャリア
総合系コンサルは、幅広い業種のクライアントに対して、戦略立案からその実行支援、システム導入、保守運用、業務改善といった包括的なコンサルティングサービスを提供しています。 また、在籍するメンバーの職種や専門性も多種多様になっています。コンサルタント以外にもエンジニアやデザイナー、データサイエンティスト、マーケター等、幅広いバックグラウンドをもったメンバーが在籍しており、必要に応じて適宜最適なメンバーをアサインし、クライアントへサービスを提供できるのが総合ファームの強みになっています。 そのため、所属するチームや経験によって、その後のキャリアプランが大きく異なってくることが多いです。
ビジネスコンサルとITコンサルについて
次に総合系ファームのコンサルタントを、ビジネスコンサルとITコンサルに分類して説明します。
近年は、総合コンサルファームのプロジェクトがITコンサルファーム化している
現在、総合系コンサルティングファームは、直近のデジタル化の潮流にともない、IT領域のコンサルティングの案件拡大を進めています。その結果、ITやテクノロジーにバックグラウンドがあるコンサルタントが増加しており、IT系ファームとの境目が曖昧になっています。
その中で、従来のビジネスコンサル系のコンサルタントだけでなく、IT系コンサルタントが増加した結果、その後のキャリアパスがIT系ファームに近くなっている傾向があります。
ビジネスコンサルとは?
ビジネスコンサルタントとは、戦略・構想策定といった上流工程フェーズから、実行支援やインプリケーション等のデリバリーフェーズまで、クライアントの事業・ビジネス面に関わる経営課題のコンサルティングを一気通貫で提供するファームのコンサルタントのことを指します。
以下のプロジェクトは具体的なビジネスコンサルのプロジェクト事例の一部抜粋になります。
・大企業が出資しているJVの業務立ち上げ支援 ・間接部門の業務削減及び高度化 ・製薬メーカーに対する新規事業創出
昨今の総合系ファームでは、上流工程だけでなく、実行支援も求められています。またDX化のトレンドの影響で、ITに関するソリューションも必要不可欠になっています。
ITコンサルとは?
IT系コンサルタントとは、IT戦略策定などの上流工程フェーズから、 DXツールの導入やインハウス運用支援などのデリバリーフェーズまで、クライアントのITに関わる経営課題へのコンサルティングを一気通貫で提供しているファームのコンサルタントのことを指します。
以下のプロジェクトは具体的なITコンサルティングファームのプロジェクト事例の一部抜粋になります。
・IT戦略策定やIT組織立ち上げ、ITデューデリジェンス ・ERP導入やSCM、CRMシステムの導入支援 ・ビックデータを活用した業務改善提案
企業活動のDX化のトレンド影響で、IT戦略の策定から実行支援まで行えるITコンサルティングファームの需要が高まってきており、急速に成長しているIT系ファームが数多く存在しています。
ビジネスコンサルのキャリアパスとは
続いてビジネスコンサルのキャリアパスについて説明します。
前述の通り、総合系ファームは業務が多様化している中で、IT系の案件が増加しており、IT系のバックグラウンドを持つコンサルタントが増加しています。ここでは、ビジネス系/IT系それぞれのバックグラウンドを持つコンサルタントごとのキャリアパスについて紹介するため、IT系以外のコンサルタントを”ビジネスコンサルタント”として定義した上で説明します。
ビジネスコンサルのキャリアパス
まずビジネスコンサルとしては、以下のようなプロジェクトを経験することが多いです。
戦略策定
コンサルファームの案件として、戦略立案案件が挙げられます。戦略立案の案件は、時代の潮流に即した全社戦略再構築/赤字に陥っている事業の再生等が該当します。
他にもデュー・デリジェンス(通称DD)が挙げられます。デュー・デリジェンスの案件は、クライアント先が買収を検討している/予定している企業の評価や買収シナジーの検証等が該当します。
BPR/BPO
BPRとはビジネス・プロセス・リエンジニアリング(Business Process Re-engineering)と語句からも読み取れるように、既存の仕組みや習慣を再構築し大きく変化させることが多く、日本語では「業務改革」と呼ばれます。既存の業務を整理した上で、理想の業務のあるべき像を策定し、その実現に向けて業務を構築します。
BPOとはビジネス・プロセス・アウトソーシング(Business Process Outsourcing)の略語で、自社で担っている業務を専門業者へと外部委託することです。いわゆる外注(請負)と異なる点として、業務そのものだけでなく「プロセス全体」を委託する、継続的かつ幅広い視野でのアウトソーシングを行う時に用いられることの多い語句です。営業部門においてインサイドセールス(見込み顧客の育成・開拓を主目的とする内勤型営業)の外部委託や、総務部門の業務全体を外注化する動きなどがその一例です。
BPOを導入する目的が「業務効率化・生産性向上」といったものであるのに対し、BPRの最終目的は「ビジネスや組織における諸問題を根本的に解決すること」です。BPOの適用範囲はいわゆる「ノンコア業務」と呼ばれる企業の基幹をなすビジネス以外の業務であることが一般的ですが、BPRはコア業務・ノンコア業務といった区分けをせず、組織全体を改革していくことすべてに適用されます。
そのため、BPRは一般的に遠大な計画となり、達成までに長い期間や高いハードル、コストや工数が必要です。BPRを進める上では、BPOの導入やRPAの活用などを行いつつ、多様なアプローチから長期的なスパンで改革を継続していくことが必要です。
PMO
PMO(ピーエムオー)とは、Project Management Officeの略で、組織内に存在するプロジェクトを統括し、プロジェクトマネージャーの業務や意思決定、各プロジェクトの円滑な進行を支援する部門や組織のことです。
特に、IT、建設、メディカルなどの業界では、プロジェクトベースで事業が進められていることが多く、このような企業のほとんどが、PMOを設置しています。その場合、コンサルファームも同様にPMOを組織してプロジェクトに臨みます。PMOの仕事内容は、プロジェクトによって多岐に渡り、進捗管理、品質管理等の管理業務をはじめとして、PMの後方支援として幅広い支援を実施します。また、並行して様々なプロジェクトにかかわる中で、PMOにはガバナンス・プロセスを標準化すること、プロジェクトマネジメントに関する人材開発も求められるなど、PMOは幅広い役割を担っています。
組織・人事コンサルティング
クライアントの企業に対して、組織/人事領域に関する課題を分析・明確化し、その解決策を提案や実行支援を行います。具体的な支援内容としては、M&Aに伴う人事制度統合、グローバル人事マネジメント体制の構築、ジョブ型制度の導入、DEI風土の浸透支援、評価・報酬制度や等級制度などの制度構築、人材採用戦略立案・実行支援、人材育成体系の構築、モチベーションアップ等の人材開発・組織開発などが挙げられます。
ビジネスコンサルのキャリアパスとしては、自身が携わってきた領域に関連した職種・職業になる傾向が強いです。具体的には、以下のようなルートが挙げられます。
インダストリー系のビジネスコンサルを経験した場合
・営業企画、オペレーション企画など業界固有業務の企画部門 ・その後、COOや事業部門担当役員などを目指すルート
ファンクション系のビジネスコンサルを経験した場合
・特定ファンクションの企画部門(サプライチェーン、デジタル新規事業部など) ・その後、バックオフィス統括系役員などを目指すルート
ポストコンサルで希望する業界や職種がある場合、それに関連するプロジェクトを経験することが重要です。
IT系コンサルタントのキャリアパスについては以下に整理しましたので、ご覧ください。
ビジネスコンサルとして良いキャリアを進むために必要なこと
続いて総合系ファームを退職後、ポストコンサルとして活躍するにあたり、コンサル時代に注力すべきことや、コンサルを退職する際に気を付けるべきポイントについて説明します。
コンサルファーム内でのランクアップについて
「ポストコンサルで希望通りの企業に転職する場合、コンサルタントとしてどの役職で転職すればいいですか?」という質問をいただくことがあります。 結論として、ポストコンサルとして希望する職業の役職や、求められる役割によって異なります。
例えば、大企業の場合、求められる水準や要求が高いため、シニアスタッフ〜マネージャークラスである方が望ましいです。一方、スタートアップやベンチャー企業ですと、そこまでランクによる影響はありません。
また、役職だけでなく、求められる役割によっても異なります。例えば、大企業における事業推進のリーダー、プロジェクトのリーダー、管理職となると、コンサルファームのマネージャー以上の役職が求められる傾向があります。一方、同じ会社でもスタッフクラスや、実務担当者になると、スタッフクラスでも採用の可能性が高まります。
給料面でのダウンサイドについて
ポストコンサルにおいて、給与面は考慮すべき重要なポイントです。一般的にコンサルファームは給与水準が高く、同等の給与水準の事業会社は非常に少ないです。
特にマネージャー以上の給与を支給できる事業会社は殆どありません。またマネージャーやシニアマネージャーであれば、年齢的に家族を持つ場合も多いため、安易に給与水準を下げることが難しい場合もあります。また、そもそもシニアマネージャー以上だと、コンサルティングが最も自分にフィットした職業である可能性が高く、コンサルファーム以外への転職をすることが少ない場合もあります。
そのため、ポストコンサルへの転職の際には、年収が下がる可能性があることを考慮し、許容範囲を定めておく必要があります。
PEに行きたい場合について
絶対数は少ないですが、総合系ファームからPEファンドに転職するケースもあります。 その場合、M&Aやファイナンス系の案件を経験していることが条件として必須です。
また入社するランクも検討する必要があります。PEファンドでのシニアスタッフやマネージャーランクであれば、即戦力としての採用が前提になります。そのため、できればスタッフランクのうちにポテンシャル採用で入社することが望ましいです。
まとめると、M&Aやファイナンス、DD系のプロジェクトを経験しつつ、できる限りスタッフランクで転職することが望ましいと言えます。
まとめ
今回は総合系ファームのポストコンサルに焦点を当てて紹介させていただきました。 コンサルティング業界の中でも近年勢いのある総合系コンサルティングファームのネクストキャリアについて、理解を深めていただけたでしょうか。 MyVisionでは、コンサル転職に関する情報提供から、適切なファームや求人ポジションの紹介、選考対策まで、個々人の事情に合わせて幅広く支援しています。 コンサルティングファームへの転職を少しでも検討されているようでしたら、まずはお気軽にお問い合わせ下さい。