SCMコンサルタントへの転職 SCMについても徹底解説
2024年06月24日更新
SCMコンサルタントは、SCM(Supply Chain Management)の分野で企業の経営課題を改善し、売上増加やコスト削減を図るコンサルタントです。企業活動のグローバル化や技術革新、サービスの多様化に伴い、営業・顧客の範囲が広がる現在、世界中の企業から必要とされています。
本記事ではSCMとは何なのか、SCMコンサルタントの年収や転職に有利な資格などをご紹介いたします。
監修者
門山 友輔
Kadoyama Yusuke
システムベンダーで経験を積んだのち、大手転職エージェントであるパソナにてIT/コンサル業界向けの転職支援に従事。半期MVP6回、年間MVP受賞、全社売上レコード更新などの実績を有する。
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目次
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SCMコンサルへの転職 最新の採用動向
まずはSCMコンサルタントへの転職における最新動向について解説します。
SCMコンサルタントの採用動向のトレンド
SCMコンサルタントは、SCM(Supply Chain Management)の分野で企業の経営課題を改善し、売上増やコスト削減を図るコンサルタントです。昨今では、企業活動のグローバル化やデジタル技術の革新、企業が提供する商品・サービスの多様化に伴い、営業・顧客の範囲が広がっていることから、SCMコンサルタントは世界中の企業から必要とされています。
また、DX(デジタル・トランスフォーメーション)領域でもSCMコンサルタントが果たす役割はますます重要となっています。
未経験からSCMコンサルに転職成功する方の特徴
「未経験からSCMコンサルタントになれるか?」という質問をよくいただきますが、結論から言いますと十分可能です。そのような中でも、「事業会社でSCM領域の業務経験がある方」「SIerでのSE・プログラマ経験がある方」は、未経験からSCMコンサルタントへの転職に成功しやすいので、詳しく解説していきます。
事業会社でSCM領域の業務経験がある方
SCMコンサルタントになるには、まず購買・販売・物流・製造の知識が必須となります。従って、メーカー、小売り・卸業、商社、ロジスティクス企業での調達・営業・物流・生産管理の業務経験があれば、採用の可能性は高くなります。特に、自社での定常業務に加えて、業務効率化・改善活動に対して積極的に取り組まれた経験のある方は、コンサルタントとしてポテンシャルを高く評価される傾向にあります。
SIerでのSE・プログラマ経験がある方
SCMコンサルタントの案件には、SAPなどERPパッケージのSCMモジュールをはじめとしたSCM管理システムの導入が多数あります。したがって、SIerでSCM領域のシステムの開発・導入・運用保守の経験があれば、採用される可能性は非常に高くなります。また、SCMコンサルタントには、顧客折衝やチームマネジメントの能力が求められますので、上流工程やチームマネジメントの経験があれば、なお即戦力として高く評価される傾向にあります。
また、SCM領域では、基幹システムの導入以外にも、RPAによるオートメーション化やBIによるデータの可視化といったIoTやDX領域に関わる案件も多いため、RPAやBIシステムの導入経験があれば、さらに採用可能性は高くなります。
SCMコンサルタントとは?
次にSCMコンサルタントについて解説します。
SCMとは?
SCMとは「Supply Chain Management」の略です。サプライチェーンとは、原材料調達から製造、出荷、消費者の手元に届くまでのプロセスを意味します。つまり「購買・販売・物流・製造」の一連のフローをSCMと呼びます。SCM管理により利益率が向上すると、大きな収益につながるため「第2の収入源」と呼ばれることもあり、企業活動の重要な役割を担っています。
SCMコンサルタントの仕事内容
SCMコンサルタントの主な仕事内容は、企業のサプライチェーンマネジメントに関する課題分析や解決策の提案です。昨今では解決策の実行まで担うケースも多々あります。
SCMプロセスは企業にとってはコアコンピタンスに位置付けられますので、業界や企業各社によって要件や課題も多種多様なものとなり、業務の専門知識だけでなく、ハイレベルでの論理的思考力やクライアントフェイシングのためのコミュニケーション能力が求められます。
課題の抽出と分析
SCMコンサルタントは、企業の物流・サプライチェーンに関する課題を抽出し、分析を行います。在庫コストの削減や生産計画の最適化、サプライヤーとの協業強化、輸送・配送の最適化など、具体的な課題を把握します。
解決策の提案
課題を分析した後は解決策を提案します。システムやツールの導入・運用、プロセスの改善、新しいビジネスモデルの提案など、様々な解決策を検討します。
実行計画の策定
提案された解決策を実行するための計画を策定します。プロジェクトのスケジュールや予算、役割分担などを決定し、実行の準備を進めます。
実行支援
実行計画に基づいてシステムやツールの導入や運用、プロセスの改善、サプライヤーとの交渉や協業支援、輸送・配送の最適化支援など、実際の作業に関する支援を行います。
成果の評価
実行結果を評価し、改善点を洗い出します。問題点や改善点を抽出し、次回以降の改善点に反映させます。
「実行支援」においては、ITツールの導入が行われる案件が多数を占めることから、SCMコンサルタントはITスキルも必須となります。具体的には、センサーやロボット技術を駆使した製造・物流プロセスのオートメーション化、RPAを用いた事務作業の効率化、BIツール導入による各種データの見える化、リモート業務のためのBPM・ワークフローツールの導入など、プロジェクトは多岐に渡ります。
特に昨今では、「SAP 2027年問題」を背景に、SAP利用会社のバージョンアップの需要が高まっていることから、コンサルティングファーム各社でも、システム移行プロジェクトの受注が急増しています。SCMコンサルタントの仕事内容においても、SCMモジュールの導入コンサルティングや、それに付随したフロントシステムであるAribaや各種BPMツールの導入コンサルティングといった案件が増加傾向にあります。
SCMコンサルタントの働き方
今回はとあるSAPコンサルタント(Aさん)の事例をもとに、週のスケジュールや働き方を紹介いたします。
Aさんご経歴
- 年齢:26歳(当時)
- 学歴:都内有名私立大学卒
- 職歴:中途入社
プロジェクト
- クライアント:国内大手メーカー
- 内容:物流プロセスのBPR(Bisuness Process Re-engineering)
- フェーズ:課題の抽出と分析
1週間の働き方
月曜日
SCMコンサルタントは基本的にはカレンダー通りの働き方となります。休み明けの月曜日は、まずは今週のスケジュールを確認します。「課題の抽出と分析」フェーズでは、毎日のようにクライアントとの打ち合わせが入るため、予定の確認が完了次第、資料の準備に取り掛かります。
火曜日
火曜日は、エンドユーザーからのヒアリングを行います。ヒアリングシートを準備し、課題を抽出していきます。また、会議の議事録もスピーディに提出することが求められるので、短時間で議事を纏めて関係者へ提出します。
水曜日
水曜日はプロジェクトの社内進捗ミーティングです。特に大きな問題は発生していない模様です。明日もクライアントとの打ち合わせがあるので、資料の準備に取り掛かります。チームリーダーのレビューを受けるも、山のような指摘事項が発生。クライアントから突っ込まれないためにも、指摘事項には的確に対応していきます。
木曜日
木曜日もクライアントとのセッション。ヒアリングを重ねていく中でまた新たな課題が生まれます。課題はもれなく課題管理表へ起票し、解決策提案に向けた準備を進めます。
金曜日
週終わりとなりますので、1週間のタスクの進捗を確認し、課題を整理し、来週のセッションの準備を進めます。「今日は華金。友達との飲み会があるけど、まだ仕事が残っているなー。」土日に仕事を持ち帰るのは良くないので、金曜日のうちに片づけることに。約束の時間には少し遅れて華金会場に向かいます。
SCMコンサルタントの年収
SCMコンサルタントの年収レンジは600万〜1800万円に収まることが一般的です。担当者レベルでは高年収を狙うことは難しいですが、チームリーダーやプロジェクトリーダーのポジションを担うことができれば、年収1000万円超えも可能です。
また、英語や中国語といった外国語のスキルが堪能な方は、活躍できるプロジェクトの幅が広がるので、自ずと年収が上がりやすい傾向にあります。
SCMコンサルタントへの転職について
SCMコンサルタントに転職するメリット
クライアントの経営・業務改革に貢献できる
SCMコンサルタントの役割は、サプライチェーンプロセスの専門家として、企業の経営・業務課題を解決することです。特定の製品・ソリューションに縛られず、ゼロベースでの課題抽出から解決策の提案、実行支援を担います。サプライチェーンという、企業のコアコンピタンスに関わる領域において、このようにクライアント企業に貢献できることこそが、大きなやりがいに繋がります。
年収が高い
SCMコンサルタントは、ハイレベルでの課題分析・提案や、チームマネジメントの役割を担いますので、SCM領域の業務知識や業界知識だけでなく、論理的思考力やコミュニケーション能力が求められます。また、実行支援においてはITツールの導入も避けては通れないため、ITの専門知識も求められます。このように、高度かつ幅広いスキルが求められることから、特定の製品・サービスを扱うコンサルタント以上に高い収入が期待できます。
グローバルな舞台で活躍できる
昨今、デジタル技術の革新により、企業活動のグローバル化は進む一方です。ほとんどの国の企業が国内だけでなく、世界中を市場にして事業展開しています。また、製造・調達・物流も国内ではなく海外を拠点とするケースがほとんどです。従って、案件の内容も海外拠点の立ち上げ支援や、海外拠点向けの業務改革といったものも多々あり、グローバルな舞台で活躍できるというのも魅力の1つと言えます。
フリーランスとして独立できる
SCMコンサルタントとしてのスキル・経験があればフリーランスとして独立することができ、企業に所属している頃よりも高い年収を狙うことができます。中には収入が2倍になるケースも見られます。独立前に所属していた企業の社格やタイトル、プロジェクト経験にもよりますが、最低5年程度のコンサルタントの経験があれば、月単価120〜180万円が狙えます。特定業界・業務領域の豊富な経験と専門知識、もしくはSAPのSCMモジュールなど特定ソリューションの高い専門知識を有していることや、あるいはマネージャー以上のポジションを担うことができれば、月単価200、300万超えも十分可能です。
また、週3勤務や年間で半年のみ勤務などワークライフバランス重視で自分のペースで働いたり、フリーランスコンサルの報酬を元手に、新たなビジネスを立ち上げて投資するなど、様々な働き方を実現できます。
SCMコンサルタントの大変な部分
ここまで、SCMコンサルタントの良い点ばかりを説明しましたが、大変な部分もあります。
SCMコンサルタントは、製品・ソリューションに依存しないコンサルティングスキルが求められるため、クライアント業界や業務の専門知識や、ハイレベルでの論理的思考力・コミュニケーション能力が求められます。また、実行支援を担当することとなれば、ITツールの導入も不可避となるため、ITスキルも欠かせません。このように、幅広くかつ高い専門知識・スキルが求められることから、勤務時間外での自己学習は必須となります。
また、プロジェクト単位での働き方となりますので、フェーズ終盤はハードワークになりがちです。スケジュールが大幅に遅延しているプロジェクトでは、深夜労働が恒常化するケースもあります。昨今では各社で働き方改革が推進され、長時間勤務が常態化しないような制度が確立されてはいるものの、やはりクライアントに対しては期日内での業務遂行責任を果たさなければいけないので、どうしてもハードワークをせざるを得ないタイミングは生じます。
したがって、「毎日定時に上がって、アフターファイブを楽しみたい」といった方にはお勧めできません。
SCMコンサルタントに求められるスキル・経験
SCMコンサルタントは、クライアント企業の課題抽出から実行支援まで、幅広いフェーズを担当することになります。従って、担当する業界や業務領域の専門知識だけでなく、ハイレベルでの論理的思考力やコミュニケーション能力が必須となります。また、実行支援フェーズではITツールの導入も不可避となりますので、ITに関する専門知識も求められます。
また、グローバル案件も多数ありますので、英語を始めとした語学のスキルも求められます。特に、市場や調達先、拠点が中華圏となることも多いので、昨今では中国語スキルがあるとより活躍の幅は広がります。
SCMコンサルタントに転職するために有利な資格
SCMコンサルタントになるには資格が必須ではなく、実績やスキルが重要視されます。ただし、SCMコンサルタントが取得していると有利な資格がいくつかございますので、紹介させていただきます。
語学資格
昨今グローバル案件が増えているため、TOEICを始めとした各種語学資格は大きなアピールポイントとなります。
ビジネス資格
ビジネス関連の資格としては、中央職業能力開発協会が主催する、ビジネス・キャリア検定が挙げられます。業務領域で試験分野が別れておりますが、SCMに関わる分野としては、「 営業・マーケティング」、「生産管理」、「ロジスティクス」となります。その他、日本貿易実務検定協会が主催する「貿易実務検定」も、SCM領域の専門知識を証明するのに有効な資格となります。これらの資格を取得しているからと言って、即戦力として評価される訳ではありませんが、SCM知識を体型的に学ぶことができて実務に活かすことができる点に加え、何より履歴書や面接でのSCMコンサルタントへの意欲を大きくアピールできることに繋がりますので、学習いただくことを推奨します。
その他、SCMコンサルタントを目指す上で、簿記の資格を有していれば、高く評価される傾向にあります。企業においては、購買・販売・物流・製造プロセスで発生した取引は、最終的には会計上の数値として反映されるため、会計知識を抑えておくことは重要です。特に原価計算はSCMプロセスとは密接であるため、知見があればなお高く評価されます。
IT資格
実行支援ではITツールの導入が必須となるため、IT資格の有無も評価ポイントとなります。最低限「基本情報技術者」は取得しておくことを推奨します。その他、SIer勤務であれば、SAP認定コンサルタントやMicrosoft認定コンサルタントなど、ERP製品のモジュールコンサルタントの資格を有していれば、転職においては高く評価されます。ただ、これらのベンダ資格は高額かつ受験資格が限られており、独習することは難しいため必須ではありません。ただ、現在所属している企業の資格取得支援制度が活用できるならば、取得しておくことに越したことはありません。
SCMコンサルタントに転職成功するための対策
経験・未経験問わず、キャリアの棚卸しを行い、アピールできる経験・スキルをまずは把握しましょう。専門的スキル・経験以上に面接官が特に重要視するポイントは、「リーダー経験」と「コミュニケーション能力」となります。面接では質問に対しては端的かつ的確に受け答えできるよう、準備と対策を行いましょう。また、時間があれば上記資格(特に、語学資格とビジネス資格)の勉強に励むことをお勧めします。
SCMコンサルへの転職でよくあるご質問について
SCMコンサルタントのキャリアパス
SCMコンサルタントは通常、「購買」・「販売物流」・「製造」といったように、業務プロセスごとに担当が細分化されます。もちろん、領域横断でプロジェクトを経験することもありますが、特定の業務領域に対する知見を深めた上で、そこから領域を横展開していくキャリアパスを辿るケースが一般的です。
また、コンサルティングファームでマネージャー以上のポジションを目指していく場合、特定業界のスペシャリストとして専門性を伸ばすのが一般的となります。実際、コンサルティングファームの各インダストリ部門の責任者(パートナー、プリンシパルetc…)も、元々SCMコンサルタントからキャリアをスタートさせて、特定業界のスペシャリストとして、担当クライアント企業と契約している全プロジェクトの責務を負うポジションを担っている方が多数いらっしゃいます。
コンサルティングファームでのキャリアアップの他には、事業会社の各部門や経営企画、社内コンサルティング部門が選択肢になり得ます。実行支援でITツールの導入経験が豊富な場合は、情報システム部門も選択肢になり得ます。事業会社側もコンサルティングファームでの経験・知見を求めて採用していることから、定常業務というよりは、業務改革や事業戦略に関わるポジションを任されるケースがほとんどです。しかしながら、まずは年単位で現業を経験することが必須となるため、「思っていた職務を任されない」、といったギャップに悩まされるケースも散見されます。よって、キャリア選択においては、これらのことを加味する必要があります。
未経験からSCMコンサルタントに転職することはできるのか
結論から申しますと、未経験からでもSCMコンサルタントに転職することは可能です。しかし、狭き門であることは事実です。大手コンサルティングファームでNon-ITのビジネスコンサルタントを目指す場合、大手事業会社でのSCM領域での業務経験が前提となります。また、年を重ねるほどコンサルタントへの転身も難しくなるため、キャリアチェンジしたい場合は20代から行うことをお勧めします。
SIerでの勤務経験がある方は、実行支援でITツールの導入から始めて、さらにハイレベルなコンサルティング業務にステップアップしていくキャリアプランが考えられます。
未経験からの転職は狭き門であるとは言え、転職できる可能性があることは確かなので、面接対策など含め、まずは弊社へご相談ください。
まとめ
グローバル化やデジタル化が進む中、SCMコンサルタントの需要は、世界的に益々増加しております。また、クライアント企業のコアコンピタンス領域の改革の一端を担えたり、物流プロセスのオートメーション化や在庫データの可視化など多種多様な案件を経験できたりする可能性があり、非常にやりがいの高い職種と言えます。職務は重いですが、その分高い報酬や給与も期待できます。
コンサルティングファーム各社でも採用の門戸は広がっているので、SCMコンサルタントとしてのやりがいと、上流コンサルタントとしての地位、高い報酬を目指す人にはおすすめの職種となります。