IBMとは 特徴や年収を徹底解説
2024年06月24日更新
今回は外資系IT企業として有名なIBMのコンサルティング部門について紹介いたします。IBMのビジネスは、20世紀のハードウェアとソフトウェアの提供中心から、21世紀以降はコンサルティング・サービス、ハイブリッドクラウドとAI(人工知能)へと大きく転換を遂げました。2021年には従来のグローバル・ビジネス・サービス(GBS)事業部門の名称を「IBMコンサルティング」へと変更し、他社との戦略的パートナーシップを最重要投資先として新たなスタートを切りました。最先端テクノロジーを活用したビジネス改革に取り組むIBMコンサルティングにご興味のある方は、ぜひご参照ください。
監修者
安部 拓朗
Abe Takuro
上智大学卒業後、ジェイエイシーリクルートメントに入社し、大手~ベンチャー企業まで幅広い業界を対象に延べ2,000名以上の転職を支援。大手総合エージェントで培った業界横断的な提案力や面接支援に強みを持つ。
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目次
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IBMコンサルの基本情報:会社概要と事業内容
会社概要
・社名:日本アイ・ビー・エム株式会社 ・代表者名:代表取締役社長執行役員 / 山口 明夫 ・設立年: グローバル:1911年 日本オフィス設立:1937年 ・従業員数:2009年以降非公開 ・資本金:1,053億円 (2022年6月時点) ・売上高:6,493億円 (2022年1月から12月) ・株式公開:なし(IBM Japan Holdings合同会社による100%保有)
IBMコンサルの事業内容
IBMコンサルはデジタル変革やM&Aを含む経営戦略・ビジョンの策定から実行までを一気通貫で支援しています。複雑化・専門化する組織を横断したアジャイルな変革体制を築き、刻刻と変化するビジネス最前線からのフィードバックに対応しながら、IBMやパートナーエコシステムの総合力、IBM自身の構造改革やM&A経験を活用し、戦略の策定からその実現までを成功に導きます。
専門領域はストラテジー、エクスペリエンス、テクノロジー、オペレーションの4種です。これらのグループが協働し、顧客企業のエコシステム全体と連携することで、ビジネス戦略やエクスペリエンス・デザインからテクノロジーや運用まであらゆる領域の改革を支援しています。
IBMコンサルのコア・バリュー
IBMは、”Making The World Work Better(世界をより良く変えていく)”という存在意義を企業活動の根幹として捉え、テクノロジーを現実の問題に適用することで、企業のビジネスと社会の双方に有益な進歩をもたらすことを目指しています。先端テクノロジーを起点としたイノベーション創出に際して、研究開発への資源投下から、テクノロジーを新たなビジネスの成長機会として育てる仕組みの実践、市場や環境変化を先取りする継続的ポートフォリオの見直しと成長へのシフトに一貫して取り組んでいます。
また、IBMのビジネスは、20世紀のハードウェアとソフトウェアの提供中心から、21世紀以降はコンサルティング・サービス、ハイブリッドクラウドとAI(人工知能)へと大きく転換を遂げました。IBMは一貫して先端テクノロジーに関する揺るぎないリーダーシップを持ち続けてきており、イノベーション創出における自社の提供価値として以下の3点を挙げています。
①テクノロジー領域リーダーとしての知見活用 ・IBMはテクノロジー領域におけるリーダーシップを数十年以上継続して発揮し続けている。 ・先端テクノロジー要素は、量子コンピューティングや先端半導体、耐量子暗号(次世代情報セキュリティー)、AI・データ分析、クラウド、インダストリー・サイエンスなど多岐に渡っている。
②先端テクノロジーの市場・事業化の実績 ・テクノロジーとビジネスの双方に精通する人材を保有し、先端テクノロジーを用いた事業化を実現する豊富な実績を有する。 ・IBM自身の活動及びお客様への支援を通じて、先端テクノロジーを活用した事業・市場の立上げや事業化に関する実績を培い、市場での競争力を持続的に高めている。
③戦略策定から実行まで一気通貫での伴走 ・机上の戦略策定のみならず、先端テクノロジーからビジネスの創出の実行まで一気通貫でパートナーとして伴走・完遂する。 ・また、事業を段階的に発展させるための専門家・組織(事業・技術領域、業界別)に加えて、新しい市場を創出するために、IBMのグローバル顧客・共創基盤を活用することも可能である。
出典:IBM公式 IBM戦略コンサルタントの視点 #2|先端テクノロジー起点のイノベーション創出
IBMコンサルで働く
案件の特徴
ここではIBMコンサルの案件の特徴として、①IBM Garageによる価値創造、②他社との戦略的パートナーシップ、③最先端テクノロジーの活用、④社内の各種専門家の知見の活用・協業という4点をご紹介します。
①IBM Garageによる価値創造 IBM Garageは、デジタル変革を加速させるための統合プログラムです。このアプローチでは、戦略コンサルタントのみならず、デザイナーやエンジニア、データサイエンティストと顧客一体でチームを組み、不確実で困難な課題解決に取り組みます。従来の計画型と異なり、価値検証に必要最小限の機能を備えたMVPを用いて実顧客で検証し、不確実性を減らしつつ価値を特定します。特定した価値は、社内の様々なテクノロジーや製品の専門家のアドバイスを踏まえ、最適な形でソリューションを適用して価値実現まで伴奏します。
②戦略的パートナーシップ IBMコンサルは他社と戦略的パートナーシップを締結しており、現在では「Amazon Web Services」「SAP」「Salesforce」をはじめとする10社と提携しています。例えばAWSとのパートナーシップに着目すれば、ビジネスの安全性、拡張性、およびオープン・イノベーションに関する専門知識を駆使して、お客様のAWS Cloudへのシームレスな移行を支援するコンサルティング・サービスを提供できるようになるなど、IBMのサービスをより向上させることが可能になっています。
③最先端テクノロジーの活用 加えて、IBMは、量子コンピューティングや半導体、AIなどの先端研究を始めとするテクノロジー企業として培った世界最先端の知見を有しています。戦略コンサルタント、先端テクノロジー専門家が有機的に連携し、先端テクノロジーを活用したビジネスの変革、イノベーション創造、実行性の高い競争戦略を策定し、その実現を牽引します。最近ではCoE(最新のトピック③を参照)と呼ばれるAIコンサルタントやデータサイエンティストからなる機関を設立しており、生成AIなどの最新技術を用いたビジネス改革をより一層加速させています。
④社内の各種専門家の知見の活用・協業 IBM社内には様々なテクノロジーや製品の専門家が在籍しており、プロジェクトに縛られずにあらゆる場面でその知見を活用します。特に先端技術や難解な技術を扱う場合には、IBMリサーチと協業し、実現における技術的な裏付けを担保します。
プロモーションの仕組み
IBMコンサルでは以下のように職位が分かれています。 コンサルタント シニアコンサルタント マネージングコンサルタント シニアマネージャー アソシエイトパートナー
また、職位とは別に「BAND(バンド)」と呼ばれる能力要件に基づく評価制度が存在します。新入社員はバンド6からスタートし、職種ごとの明確な評価要件に基づいてバンドのグレードも向上していきます。
日本IBMでは、昇給の度に自分自身が評価基準に到達しているかを文章で表現することが求められます。コンサルタントからシニアコンサルタント、マネージングコンサルタントと職位が上がる度に、業績に基づいた文章による自己アピールが必要になります。また、案件の取り扱い額が大きいことからクライアントも大組織であることがほとんどであり、いかに大きな組織を動かして受注をもらうかというスキルが重要視されます。
育成制度
IBMでは、入社後に半年間の新入社員研修と、Eラーニング教材による学習機会が提供されています。配属先で用いられる技術分野の学習や、それ以外の領域の知識、自社製品やサービスの知識についても学習することができます。後述のカルチャー項で述べるように、IBMには「教育に飽和点はない」という社員の学習を促進するモットーが存在し、ラーニング支援制度は非常に充実しています。例として以下のような制度が挙げられます。
・IbD (IBMer by Degrees):中途採用者のIBMerとしての早期活躍を支援するプログラム ・Future Skilling:将来ビジネスで必要になるスキルを、市場に先んじて育成する制度 ・e-Learning:豊富な学習コンテンツを時間/場所を問わず提供し、スキル育成を支援する制度 ・学びウィーク:年2回の集中スキルアップ期間
また、Checkpoint制度と呼ばれる、具体的なゴール設定とフィードバックを通じた短期的なキャリア形成の支援制度も存在し、こちらも新入社員育成の特徴の一つとなっています。
カルチャー
IBMにはかつて「THINK(考えよ)」という文化が存在していました。これは1911年にIBMの前身であるC-T-R社にて、IBMの初代社長となるトーマス・J・ワトソンSr.が提唱したモットーです。ワトソンは、非常に細分化されていたC-T-R社に確固とした文化を根付かせる試みに直ちに着手し、NCR(National Cash Register )社の営業部長のときに採用したモットーである「THINK(考えよ)」をいち早くC-T-R社の社是に充てました。C-T-R社を一つにまとめるため、組み立て製造ラインの作業員から技術者、販売員、秘書に至るまで、すべての従業員が「考える人」になるように奨励しました。
また、IBMは従業員の行動指針として策定した下記の基本的信条を掲げています。
・個人の尊重 ・最善の顧客サービス ・完全性の追求
さらに、IBMには「教育に飽和点はない」という理念が存在し、全ての社員が最先端の知識を学び続けることが求められます。2021年入社式の社長メッセージにて、代表取締役社長の山口明夫氏はこの理念に関連して次のように述べています。
「変化に対応するには、常に学び続けることが必要で、IBMには創業以来「教育に飽和点はない」という理念が根付いています。学んだことを仕事に活かし、お客様や仲間の役に立つことができ、その喜びを感じることで、さらに学ぶ。このサイクルを大切にしてください。IT業界は常に新しいテクノロジーや手法が創出されます。皆さんはこれから最新技術や世界中の事例など、IBMが蓄積してきた膨大な情報にアクセスし学ぶことができます。頑張り次第では、ある領域の第一人者になることもできますので、ぜひチャレンジしてほしいと思います。」
働きやすさについて
グローバル企業であるIBMでは、障がいの有無・人種・性別・思想・文化・出身地などに関わらず、各個人がその能力を最大限に発揮しビジネスに貢献できる環境を目指す、ダイバーシティー&インクルージョンの考えを世界中で一貫して推進しています。
女性の活躍支援
日本IBMの女性社員が活躍する機会は、企業風土の改革推進により拡大し続けています。さらには、2016年4月に施行された女性活躍支援法に基づき、「しなやかに自分らしく」成長を望む女性社員を応援する企業風土を、開拓し続けています。
積極的な採用と登用
・女性の採用比率:1割程度から4割へ引き上げ ・メンタリング/スポンサーシップ制度:役員が女性社員の登用を積極的に意識・関与
意識改革・企業文化の醸成
・対象別ダイバーシティー研修(管理職/女性社員/社員)の実施 ・社員とビジネス・リーダーの参画(カウンシル活動)と情報発信 ・成果主義の徹底(High Performance Culture)
定着率の向上
・キャリア継続を支援する柔軟な働き方の推進 ・在宅勤務、短時間勤務、裁量勤務等の働き方制度の導入 ・出産・育児、介護、健康維持に関する支援(企業内保育園、特別休暇制度、各種セミナーの実施等)
子育て支援
日本IBMでは、子供の育成環境の整備や柔軟な働き方制度の充実などに力を入れ、社員の子育てを応援しています。1972年の育児早退制度、1985年の育児休職制度など、積極的な人事制度導入を推進してきました。1998年以降は、一人ひとりの出産や育児の事情に応じられる働き方制度の改革を進めてきました。2011年・2015年には企業内保育園を設立しました。2020年には休暇制度を拡充し、性別を問わず育児休暇の取りやすい職場風土の醸成に取り組んでいます。
ワークライフ
社員が個々の能力を最大限に発揮し、より豊かな生活を実現するには、仕事と生活のバランスをとることが大切です。ワーク/ライフ・バランスを実現するうえでは、柔軟な働き方こそが鍵となります。日本IBMでは、勤務場所に柔軟性を認める、e-ワーク制度の推進や、ライフステージの変化を柔軟にサポートするさまざまな制度を通じて、社員のより良いワーク/ライフ・バランスを促進しています。
在宅勤務の取り組み 「e-ワーク制度」
e-ワーク制度は、個々の社員がそれぞれの事情により、自宅で勤務を行うことができる制度です。1999年に、育児をする女性社員の声によって始まったこの制度は、現在では育児などの事由を問わず利用でき、男性社員の利用も大変多くなっています。午後に外出の予定がある日には、午前はe-ワークにして直行するなど、通勤時間などの無駄を省き、場所にとらわれないワーク/ライフ・バランスのとれた効率的な働き方を実現するものとして、社内に完全に定着しています。自宅からは、高度のセキュリティーを保持しつつ会社のネットワーク環境に接続し、オフィスと全く同じ環境で仕事ができます。
ライフステージの変化への対応 「短時間勤務制度」
結婚や出産、あるいは介護など、ライフステージの変化によって、仕事と生活の配分はその時々で微妙に変わってきます。IBMでは社員のキャリアが途切れないよう、フルに働けないときでも、通常の80%、60%の勤務をすることができます。
各種育児介護支援プログラム
上記以外でも、日本IBMでは、子どもが満2歳までの育児休職、介護休職、看護休暇など、仕事と家庭生活を両立するためのさまざまな制度を設けています。さらに、社員の経験者や社外の専門家から両立の実例やノウハウについて学ぶワーク/ライフ・セミナーも実施しています。また、ベビーシッター割引券や契約保育園の利用、育児・介護に関する相談窓口の設置、インターネット上での育児・介護情報提供など、育児や介護の支援プログラムも充実しています。
障がい者の活躍を支援する取り組み
IBMでは多様なニーズを持つ障がい者の社会参加を、さまざまな角度からサポートしています。主な取り組みとしては、ノーマライゼーションの施策や、就労機会の提供と就労支援が挙げられます。
ノーマライゼーションの施策
障害のある社員が制約なく業務に従事できるよう、労働環境や支援制度の整備に力を入れ、個々の事情への柔軟な配慮を実現しています。
・多様な働き方制度:障害を不利としないために、就業規則に含まれる時間的・空間的に柔軟な勤務形態を活用できるものとし、赴任の判定には独自の算定基準を用います。
・災害避難行動支援制度:入社・異動・新規障害登録のタイミングで「障害のある社員のための緊急避難安全チェックリスト」を詳細に作成し、緊急時の避難に備えます。
・職場環境整備の実施:情報情報保障ツールの貸与、自家用車・事業所駐車場の利用許可、事業所バリアフリー整備等、身体の障害で不利が生じないよう環境を整えています。
・BUILDING ACCOMMODATION ASSESSMENT TOUR(BAAT):障害のある社員が安全に勤務できるよう事業所内をツアー(チェック) し、問題があれば改善する取り組みです。入社時や事業所異動の際、必要に応じ実施します。
就労機会提供と就労支援
・Access Blue:日本では珍しい長期の障がい者向けインターンシップ・プログラムです。時代のニーズに応えるカリキュラムを通じ、就職観形成とスキル修得ができます。
・Business Concierge Service:各個人の事情に合わせた働き方を受容し、強みを引き出すことで統合的な労働力を創生し、会社の成長に貢献することを目指す、新しい障がい者雇用のモデルです。
・マッサージルーム:主に視覚障害のあるヘルスキーパー(マッサージ師)が施術することで、従業員が心身のリフレッシュをする施設を備えています。
LGBTQ+を支援する取り組み
IBMでは、世界規模でLGBTQ+に向けた情報開示や意見交換の場を設け、ダイバーシティー&インクルージョンの観点から、人事制度の拡充や社会への働きかけを行なっています。2020年以降は 「Be Equal Allyship」をスローガンに、LGBTQ+等のマイノリティーの理解増進キャンペーンを実施しています。日本IBMでは、2016年に「IBMパートナー登録制度」を施行しています。2016年以来、Work With Prideの策定するPRIDE指標で6年連続ゴールドを獲得しています。
社会的責任(CSR)への取り組みについて
IBMは「世界をより良く変えていく触媒になる」ことを目的として掲げ、ビジネス倫理、環境、そして私たちが働き、生活するコミュニティにおいて、世界に永続的でポジティブな影響を与えることを目指します。IBMの環境、社会、およびガバナンス(ESG)への取り組みを以下に紹介します。
環境への影響
天然資源を保護し、汚染を低減し、気候関連リスクを最小化するためのより良い道筋を作ること。
目標
・2030 年までに温室効果ガスの排出量のネットゼロ達成 ・2025年までにIBMの非有害廃棄物全体の90%(重量比)を埋立と焼却処分以外の方法へ転換 ・2025年までに、IBMソリューションを活用して環境に良い影響をもたらす、お客様との取り組みや研究プロジェクトを100件開始
倫理的な影響
倫理、信頼、透明性、そして何よりも説明責任を優先するイノベーション、ポリシー、ビジネスを創造すること。
目標
・IBMエコシステム・パートナー向け研修にテクノロジー倫理教育を組み込み、2022年末までにパートナー1,000社に提供 ・経営幹部向け年間インセンティブ・プログラムにダイバーシティーの指標を追加 ・社会的責任と環境への責任、倫理、およびリスク計画を含む健全なビジネスの実践について、100%のサプライヤーに遵守いただく
公平性への影響
IBM社内および世界中で、ダイバーシティー(多様性)、公平性、インクルージョン(包摂性)を重視し、すべての人に安全な空間と機会を提供すること。
目標
・2030年までに世界で3,000万人のスキル開発 ・2025年までに400 万時間のボランティア活動を記録 ・2025年までに、働きながら学校に通う実習型プログラムとニューカラー(New Clollar)人材向けプログラムへ2億5千万米ドルの投資 ・2025年までに1次サプライヤー向けダイバーシティー関連支出の15%を黒人系サプライヤーに割り当て
IBMコンサルの平均年収
職位別年収目安
・コンサルタント:400〜700万円 ・シニアコンサルタント:700〜900万円 ・マネージングコンサルタント:1000万円〜 ・シニアマネージャー:1500万円〜 ・アソシエイトパートナー:1800万円〜
年齢別年収目安(日本IBM全体)
・25歳:約600万円 ・30歳:約700万円 ・35歳:約840万円 ・40歳:約980万円 ・45歳:約1120万円 ・50歳:約1230万円 ・55歳:約1300万円
※上記年収の目安は、公式サイトに掲載された情報ではありませんので、参考程度にご活用ください。
IBMコンサルの最近のトピック
トピック①IBM Consulting、マイクロソフトとの協業を強化し、企業の生成AI導入を加速
IBMはマイクロソフト社との協業を強化し、企業の生成AI導入の加速に向け、ビジネス・プロセスを刷新し、生成AIの活用を効果的に拡大していくために必要な専門知識と技術を提供する新たなサービスを発表しました。両社は、企業のAzure OpenAI Serviceの実装と適用拡大の支援に注力していきます。新たなオファリング「IBM Consulting Azure OpenAI Service」は、デベロッパーやデータ・サイエンティストがGPTシリーズやCodexシリーズを含む強力な大規模言語モデル(LLM)を適用できるフルマネージドAIサービスで、Azure Marketplaceで提供されます。企業の生成AI導入戦略と、固有かつ付加価値のある初期生成AIユースケース策定の支援を目的としています。
この新サービスに加え、IBMとマイクロソフトは、IBM ConsultingのスキルとAzure OpenAI Serviceを活用し、将来性のある解決策を作り出したり特定のユースケースに取り組むため、A Iに関する以下の協業を進めています
・調達、ソーシングから支払いまで:両社は共同で、Microsoft Power PlatformとAzure OpenAI Serviceを組み合わせた「IBM Consulting Global S2P Platform」を提供し、企業が手作業に依存し断片化した調達・購買プロセスを自動化し、サプライチェーンに関する新たな洞察を得られるよう支援します。このサービスは、業務効率の改善や時間の削減、ユーザー向けの新しい実用的な洞察を生成するように設計されています。
・要約とコンテンツ生成:金融機関や銀行は、生成AIの要約を通じて、顧客向けにカスタマイズしたコンテンツの開発をどのように加速できるかを模索しています。例えば、IBM Consultingとマイクロソフトは、ジュリアス・ベア・グループとのハッカソンで、財務レポートを効率的に処理し要約すると同時に、レポートの音声バージョンを自動的に作成するユースケースに取り組みました。
・医療プロセスの合理化:IBM Consultingは、Azure OpenAI Serviceを活用して、複雑な医療記録や医療方針を自動的に取り込み分析することで、事前承認プロセスの自動化を支援する「IBM Consulting Prior Authorization OpenAI Solution」を提供します。さらに、医師や看護師が患者の医療記録から情報を収集するのを支援するバーチャル・アシスタントを開発しました。このサービスは、事前承認リクエストの処理に必要な時間を短縮し、管理負担を軽減し、臨床医の体験向上することを目的としています。
・エンタープライズサーチとナレッジベース:多くの組織では、社員の業務に必要な情報は分散し共有されていません。IBM Consultingとマイクロソフトは、Wintershall Dea 社の膨大なナレッジベース内の情報検索用に設計されたナレッジ抽出ツールを実装を共同で支援しました。OCR(光学的文字認識)とMicrosoft Azure OpenAI Serviceを統合することで、手作業によるブラウジングを不要としたユーザー・フレンドリーなツールが開発され、ユーザーは価値ある洞察を簡単に検索できるようになりました。
出典:IBM Japan Newsroom - IBM Consulting、マイクロソフトとの協業を強化し、企業の生成AI導入を加速
トピック②愛媛県今治市、東京大学と日本IBM、しまなみ海道の島でのテクノロジーと臨床知を学び合う「しまなみ学び・交流の場」事業で連携
愛媛県今治市、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科・工学部(以下、東京大学)と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、しまなみ海道に浮かぶ大三島を舞台に、テクノロジーと臨床知の学び合いをテーマとした「しまなみ学び・交流の場」事業を行う連携協定を締結したことを発表しました。この事業は、2019年7月から東京大学と日本IBMが実施している、先端デジタル技術と人文社会科学を融合した社会モデルの創出を産学連携でデザインする研究プログラム「コグニティブ・デザイニング・エクセレンス(CDE:Cognitive Designing Excellence)」の取り組みの一環となります。
「しまなみ学び・交流の場」事業では、東京大学、日本IBM、また両者が運営する「コグニティブ・デザイニング・エクセレンス」の参画企業と地域の関係者がしまなみテクノロジー市民大学講座協議会を組織し、「しまなみテクノロジー市民大学講座」の開講と運営や、しまなみ地域の島内外の人流を作り出す活動の提案と実証実験を2024年3月まで実施します。
日本IBMは、「社会のために、お客様のために、そして人々のために、これまで以上になくてはならない存在に」なるため、2019年から日本を代表する企業約20社と「コグニティブ・デザイニング・エクセレンス」の取り組みを推進してきました。今後、「しまなみテクノロジー市民大学講座」の開講および運営に加え、しまなみ地域の島内外の人流を作り出す活動の提案と実証実験の実施に、今治市、東京大学、参画企業と共に取り組んでいきます。この実証実験を通じて、日本全体の地域が抱える課題を産官学・住民連携で解決するための一つの指標となることを目指します。
出典:IBM Japan Newsroom - 愛媛県今治市、東京大学と日本IBM、しまなみ海道の島でのテクノロジーと臨床知を学び合う「しまなみ学び・交流の場」事業で連携
トピック③IBM Consulting、AIエキスパートを擁するCenter of Excellence for generative AIを設立
IBM Consultingは、Center of Excellence (CoE) for Generative AIを設立しました。このCoEは、IBM Consultingの既存のグローバルAI & オートメーション事業に所属、これまで4万件以上のお客様企業のプロジェクトを支援してきた21,000人のデータ・サイエンティストおよびAIコンサルタントが含まれます。さらに、1,000人以上の生成AIの専門知識を持つコンサルタントがおり、ITオペレーションや人事、マーケティングなどの主要なビジネス・プロセスの生産性を高め、顧客体験を向上させ、新しいビジネス・モデルを生み出すために、世界中のお客様企業と協業しています。本CoEは、新たに発表されたIBM watsonxを含む企業向けAIや、ビジネス・パートナーのエコシステムによるテクノロジーを活用し、お客様のビジネス変革の加速を支援していきます。
CoEは好調に始動しており、2023年だけでも、IBM Consultingは100社以上のお客様と議論を重ね、従来型機械学習のAI戦略立案と生成AIの導入を支援しました。例えば、マスターズでAIが生成したスポーツの音声解説を数百万人のファンに配信したり、生成AIとIBM Watson®を組み合わせて三井化学の製品の新しい用途の発見を検証したり、ブイグ・テレコムの顧客エンゲージメント・プロセスで生成AIを適用したりしました。IBM Consultingでは、基盤モデルを適用した初期のプロジェクトのいくつかにおいて、価値創出に要する時間を従来のAIアプローチと比較して最大70%加速させることができました。
出典:IBM Japan Newsroom - IBM Consulting、AIエキスパートを擁するCenter of Excellence for generative AIを設立