ITコンサルから情シスへのキャリアを解説
2024年06月24日更新
ITコンサルは、給与が高く、クライアント企業の経営・業務に貢献できることから、やりがいは大きく人気の職種となります。その反面、クライアントからの要求が高いこと、実力主義であることなどから激務になりがちで、精神的・肉体的負担も大きいです。ITコンサルに興味はあっても、長く働き続けられるか不安だという方も中にはいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、ITコンサルで経験を積まれた方のネクストキャリアとして、ユーザ企業側の情シスとしての働き方について説明します。コンサルよりも勤務時間が短く、落ち着いて長く働くことができることに加え、事業会社側にとっても、ITコンサルのスキル・経験は即戦力となるため歓迎されます。、その一方で、報酬、やりがい、その先のキャリアについては気にされる方も多いです。本記事では、ポストITコンサルのキャリアとしての情シスについて、メリット・デメリット含めて解説していきます。
監修者
永井 一聡
Nagai Kazutoshi
横浜国立大学卒業後、みずほ総研(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)やアクセンチュアで人事及びIT領域のコンサルティング業務に従事。自身の経験を生かしたIT/人事コンサル転職を得意とする。またコーチング経験も豊富に積んでおり、長期的なキャリア支援を提供可能。
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情シスの仕事
情シスの業務は、会社のシステムの保守運用、システムベンダーのマネジメント、そして企画や将来的なITへの投資検討など、上流から下流の運用保守まで多岐に渡ります。具体的には以下の通りです。
- システム構築・保守運用
- 新しいシステムの導入
- 既存システムの障害対応
- ユーザ問い合わせ対応
- ベンダーマネジメント
- システム導入・保守ベンダーの選定
- 案件のスケジュール・コスト管理
- ベンダー・業務ユーザとの調整
- システム企画・投資検討
- 業務改善のためのIT導入
- 既存ITコスト削減
- 社内システムの全体最適化
また、情シスの業務の大きな特徴は、自分の専門領域以外にも社内のすべての業務領域をカバーする必要がある点です。たとえば、SAPコンサルであれば、SAPの担当モジュールだけをカバーしていれば問題ありませんが、情シスの範囲はユーザが使うあらゆるシステムです。大企業の場合、部門や事業部ごとにシステム担当が分かれるため、たとえば自身が経理のシステムを担当することになれば、SAPのFICOモジュール以外にも、連結会計パッケージや経費精算システムなどの周辺システムもカバー範囲となります。
情シスでのITコンサルのニーズ
ITコンサルのどのような知識・スキルが情シスにおいて必要とされるか、そのニーズについて説明します。
特定技術・製品の専門知識
ITコンサルはSAPやRPA、情報セキュリティなど、専門領域が分かれます。特定の技術や製品の専門知識・スキルをユーザ企業内でトレーニングしようとすると、時間・コストもかかることに加え、ノウハウを揃えることも非常に困難で、実質不可能と言えるでしょう。したがって、そのタイミングで求める知見・経験がフィットしている人材を即戦力として採用する傾向にあります。 例えば、SAPを導入している企業であればSAPコンサルの経験者を求め、これからDXに積極的に取り組んでいきたい会社であれば、RPAやオートメーション技術に精通したコンサルタントを求めます。
コンサルティングスキル
情シスの役割は、自社のITにまつわる課題を解決することです。それは、エンドユーザの細かなオペレーションから、次期システム構想といったIT戦略に至るまで多岐にわたりますが、共通するのは「問題解決」、すなわち「コンサルティング」が求められることです。このスキルは一般的な事業会社で培うことは難しく、コンサルファームでのクライアントフェイシングの経験を通じて高いレベルにまで培われるものとなります。従ってITコンサル経験者は、単なる運用保守要員ではなく、IT戦略や構想策定、BPRといった超上流の役割を期待される傾向にあります。
プロジェクトマネジメントスキル
情シスの仕事内容の1つに、ベンダコントロールが挙げられます。これは、新規システム導入のみならず、運用保守のシーンにおいても求められます。そして、ITコンサルと違い、大きな案件から小さな案件まで複数の案件を任されることが多く、必ず外部ベンダとのやり取りが発生します。このことから、外部ベンダ含めた案件の進捗や課題の「マネジメント」を遂行する力が重要視されます。ITコンサルタントは若手のうちからチームマネジメントの役割を担うため、マネジメントのスペシャリストでもあります。こういった経験・スキルは情シスから見ても即戦力として高く評価されます。
情シス転職のメリット
ここではITコンサルから情シスへ転職した場合のメリットについて説明します。
労働時間が短くなる
情シスは間接部門となります。従って、余計な人件費を増やさないためにも、残業はなるべくしないように指示されます。その分、業務時間内に仕事を終えなくてはいけないというプレッシャーはあるものの、全体的な業務量もコンサルと比べて少なく、メリハリをつけて働くことができます。もちろん、大規模なシステム切替プロジェクトにアサインされている場合は、本番稼働時期の問題もあるため、業務負荷が高くなることもあります。しかしながら、多くの会社ではコンプライアンスを重視し、基本的には徹夜や22:00以降の残業はさせないような措置が取られています。
超上流の仕事ができる
情シスは、コンサル経験者に対して、製品選定や次期システム構想、IT戦略といった、コンサルティングスキルが求められる役割を期待します。このことから、SAPなどのシステム導入を担当していたコンサルタントにとっては、ITコンサル時代よりも上流の仕事を担当することができ、スキルや経験の幅が広がり、やりがいにもつながります。会社によってはBPO検討といったNon-IT領域を担当するケースもあり、「コンサル時代よりもコンサルっぽい案件を任せられる」といった方もいらっしゃいます。
他部門への異動も可能
事業会社の情シスで経験を積めば、経営企画などの他部門への異動や海外現地法人への駐在も可能で、キャリアの幅を広げることができます。人事異動は運の要素もあるので必ず希望が叶うとは言い切れませんが、IT以外の仕事にチャレンジしてみたいという方にとっては、チャンスはゼロではありません。
情シス転職のデメリット
ここまで情シスのメリットについてお話しましたが、デメリットもあります。これについても解説していきます。
年収が下がる
ITコンサルよりも労働時間が短くなることで、年収は下がります。ITコンサルの年収レンジが600〜1,500万円だとすれば、大手日系事業会社の情シスは、400〜800万円に落ち着くことが多いです。40歳を超えて1,000万円を超えることもあるといったところです。外資系企業であればもう少し高い報酬は期待できますが、それでもITコンサルと比べれば低く設定されがちです。
ルーチンワークを任される
情シスは間接部門のため、少ない人員で業務を回しています。したがって、超上流の役割を担う一方で、エンドユーザからの問い合わせ対応や、社内決裁といった各種事務手続きなど、ルーチンワークとも言える細かい業務まで、幅広く対応しなければなりません。コンサルファームでは、専門領域の仕事だけをしていればよかったのですが、事業会社ではそうはいきませんので、人によってはやりがいがあまりないように感じてしまうかも知れません。
社内政治を意識しなければいけない
ITコンサルの役割は「あるべき姿を描き、最適なソリューションを提案する」ものです。対象的に、事業会社の役割は、「ソリューションを実行に移す」こととなります。事業会社の社内では、部門や担当者によって利害関係が異なることから、「正論」や「あるべき」が必ずしも通るとは限りません。常に、関係者と利害を調整しながら、落としどころを見出すことが求められます。人によってはそれが煩わしいと感じることもあります。
情シスに合ってる方の人物像
ここで、情シスの仕事に合っている方の人物像について説明します。
人の悩みに親身に相談に乗れる人
情シスの役割は、社内の問題を技術的な観点から解決することです。それは、エンドユーザのシステムオペレーションにまつわる問い合わせから、業務効率化の相談、また全社レベルの次期システム構想策定やIT投資計画策定など、レベル感は多岐にわたります。大きなことから細かいことまで、ユーザの要望を聞いて対応することが求められます。したがって、人に寄り添い、親身になって悩み相談に乗ることが好きな方には向いているかもしれません。
主体性・責任感がある人
社内SEは、コンサル以上にプロジェクトマネジメントや超上流の案件を担当することが多いです。外部ベンダとしてではなく、ユーザ企業のメンバとして最後まで実行に移すところまでがゴールとなります。そのため、「主体性を持って物事に取り組む姿勢」や「責任を持って最後までやり抜く姿勢」が求められます。こういった姿勢で仕事に取り組める方にとっては非常にやりがいのある職業となります。
まとめ
ここまで、ポストITコンサルのキャリアとして、事業会社の情シスの働き方について説明しました。情シスは、ITコンサルほど忙しくないことが多いため、プライベートの時間を確保しやすいです。また、コンサルティングスキルを活かして、製品選定やIT戦略といった超上流の役割を期待されることも多く、やりがいもあります。その反面、年収が下がったり、細かなルーチンワークにも対応しなければいけなかったりと、デメリットもあります。単に楽をしたいという気持ちで転職をしても、仕事内容のギャップがストレスに感じてしまうかもしれません。
一方で、「激務過ぎるのは望まないが、組織や現場のユーザに貢献したい」という気持ちがある方には打ってつけのキャリアパスとなります。ITコンサルのセカンドキャリアの一つとして、是非ご検討ください。
参考:情報システム部のリアルな仕事内容|株式会社MASSDRIVER 参考:情報システム関連の年収を職種別に紹介|Total IT Helper