M&Aの年収はなぜ高い?業界の平均や中央値、他業界との比較を紹介
2025年10月21日更新
M&A業界は、企業の合併や買収を通じて経営課題の解決や成長戦略の実現を支援する専門領域です。取引金額が大きく、成果が企業の将来を左右するため、専門職のなかでも高い報酬水準が設定されています。そのため「M&A業界はなぜ年収が高いのか」「職種によってどのくらい違うのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。
一方で、成果報酬の仕組みや案件単価の高さ、スキルに応じた給与体系など、M&A業界特有の要因を正確に理解している人は多くありません。キャリアを検討するうえでは、年収の相場だけでなく、職種・年次・スキルによる違いを把握することが重要です。
本記事では、M&A業界の平均年収・中央値から、他業界との比較、年収が高い理由、さらに収入を上げる具体的な方法までを体系的に解説します。実際のキャリアアップの道筋や仕事の魅力にも触れながら、M&A業界で働くイメージを明確にできる内容です。
著者

大河内 瞳子
Okochi Toko
株式会社MyVision執行役員
名古屋大学卒業後、トヨタ自動車での海外事業部、ファーストリテイリング/EYでのHRBP経験を経てMyVisionに参画。HRBPとして習得した組織設計、採用、評価などの豊富な人事領域経験を生かした支援に強みを持つ。
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監修者

山口 翔平
Yamaguchi Shohei
株式会社MyVision代表取締役
早稲田大学を卒業後、JTB、オリックス生命を経てコンサルティング転職に特化した人材紹介会社へ入社。 長年のエージェント経験を基に、より多くの求職者様に対して質の高い転職支援サービスを提供するため、株式会社MyVisionを設立。
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目次
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M&A業界の年収相場
M&A業界の年収は全体的に高水準で、同年代の平均を大きく上回ります。成果報酬型の給与体系が多く、経験や実績に応じて報酬が大きく変動するのが特徴です。
ここでは、M&A業界の年収の中央値・職種別・年次別の目安を整理し、他業界との比較を通じて相場を具体的に把握します。
中央値
M&A業界の代表的な企業である日本M&Aセンターの年収中央値は約960万円(OpenWork)です。平均年収は1,100万円前後とされていますが、中央値との差からもわかるように、一部の高額報酬層が平均値を押し上げている構造が見られます。
同社の報酬体系は成果報酬型が中心で、成約件数や案件規模によって収入に大きな差が生じます。トップアドバイザーは高収入を得やすい一方で、案件数が少ない時期は平均を下回ることもあります。
実績に応じて高報酬を目指せる点は魅力ですが、安定的な収入を得にくい点も、M&A仲介業界の特徴といえます。
職種別の年収
M&A業界の大手4社(M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、M&A総合研究所、日本M&Aセンター)の職種別年収レンジをOpenworkのデータで確認すると、成果報酬型の傾向が強く、ポジションによって報酬額に大きな差があります。実績を上げるほどインセンティブが加算され、上位層では年収が数千万円規模に達します。
基本給が月収40万円〜60万円ほどに設定されており、月収以上の報酬は、ほとんどが成果報酬(賞与)になっています。
職種 | 年収レンジ |
---|---|
アソシエイト | 400万円〜600万円 |
アドバイザー | 470万円〜5,000万円 |
営業 | 800万円〜4,200万円 |
コンサルタント | 600万円〜5,000万円 |
M&A業界は成果主義の側面が強く、同じ職種でも企業や個人の実績によって年収に大きな差が生じます。そのため、同じ職種でも年収800万円の人もいれば、年収1億円、10億円の人がいることもM&A業界ならではの特徴です。努力と実績次第で早期に収入を伸ばせる環境といえます。
年次別の年収
M&A業界では、年齢に比例して年収が上昇する傾向がありますが、成果報酬型の影響が大きいため、年次が浅くても高収入を得ることが可能です。個人の実績や担当案件の規模によって、同年代でも大きな差が生じます。
M&A業界を代表する企業である日本M&Aセンターの年次別推定年収は以下のようになります。
年齢 | 推定年収 | 推定範囲 |
---|---|---|
25歳 | 678万円 | 401万円〜1,147万円 |
30歳 | 879万円 | 520万円〜1,486万円 |
35歳 | 1,185万円 | 700万円〜2,004万円 |
40歳 | 1,225万円 | 724万円〜2,072万円 |
参考:OpenWork
年次が上がるにつれて平均年収も高くなる傾向にありますが、若手でも成果を上げれば早期に1,000万円を超えるケースもあり、なかには5,000万円に到達しているケースもあります。
他業界との比較
M&A業界の年収は、他業界と比べても突出して高い水準にあります。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和6年)によると、主要業界の平均月収は以下の通りです。これを年収ベースに換算すると、M&A業界との差がより明確に見えてきます。
業種 | 平均月収(万円) | 年収換算(万円) |
---|---|---|
鉱業・採石業・砂利採取業 | 37.2万円 | 約447万円 |
建設業 | 35.3万円 | 約423万円 |
製造業 | 31.9万円 | 約382万円 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 43.8万円 | 約525万円 |
情報通信業 | 39.1万円 | 約469万円 |
運輸業・郵便業 | 30.5万円 | 約366万円 |
卸売業・小売業 | 34.4万円 | 約412万円 |
金融業・保険業 | 41.1万円 | 約493万円 |
これらのデータと比較すると、M&A業界の平均年収(約800万〜1,500万円)は、国内主要業界の平均を約2〜3倍上回る水準にあります。特に金融・保険業と比べても依然として高く、成果報酬によるインセンティブが大きく影響していることがわかります。
また、M&A業界では実績に応じて報酬が急上昇する仕組みのため、20代後半でも年収1,000万円を超えるケースが少なくありません。年功序列ではなく、成果に応じて大きく変動する点が他業界との大きな違いです。
M&A業界の年収が高い理由
M&A業界の年収が高いのは、成果報酬型の給与体系や案件単価の高さに加え、専門性の高い知識が求められるためです。景気動向や事業承継需要の拡大も相まって、優秀な人材への報酬水準が上がっています。
ここでは、M&A業界で高収入が実現しやすい主な理由を3つに整理して解説します。
成果報酬体系
M&A業界では、案件の成約に応じて報酬が支払われる「成果報酬型」の給与体系が一般的です。報酬の多くは成功報酬として支給され、案件が成立すれば一度に高額のインセンティブを得られる仕組みになっています。
この体制により、担当者は自ら案件を獲得し、最後まで完結させる責任を負います。個人の実績が報酬に直結するため、努力と結果が明確に評価される環境です。成約までのプロセスは長期化することもありますが、成果が出た際のリターンは非常に大きいのが特徴です。
一方で、成果に依存する側面が強いため、収入の変動幅は大きくなります。安定よりも挑戦や高収益を重視する人にとって、成果報酬型の仕組みは高いモチベーションを維持できる制度といえるでしょう。
需要が高くなっている
M&A業界の年収が上昇している背景には、国内でM&Aの需要が急速に拡大していることがあります。中小企業庁によると、日本のM&A件数は近年増加傾向で推移しており、2019年には4,000件を超えて過去最高を記録しました。未公表案件も含めると、実際の取引件数はさらに多いと考えられています。
また、後継者不足を背景に、全国の事業引継ぎ支援センターでの相談件数・成約件数も増加傾向にあります。大企業だけでなく、中小企業の間でもM&Aが経営戦略や事業承継の手段として定着しつつあり、アドバイザーやコンサルタントの需要が急拡大しています。
このように、案件数の増加に対して人材が追いついていない状況が続いており、経験豊富な専門人材には高額のインセンティブが提示されています。特に、企業評価・法務・税務に精通した人材の希少性が、M&A業界全体の年収水準を押し上げる大きな要因となっています。
収益性の高いビジネスモデル
M&A業界は、一件あたりの取引金額が大きく、成功報酬として得られる手数料も高額になるため、ビジネスモデル自体の収益性が高い業界です。成約手数料は取引総額の数%に設定されることが多く、一件の成立で数千万円規模の報酬が発生することもあります。
また、固定費が比較的少なく、人件費と専門知識への投資が中心である点も高収益を支える要因です。企業買収や事業譲渡など専門性の高い案件を扱うため、顧客単価が高く、景気が安定している局面では収益が大きく伸びやすい特徴があります。
こうした高利益構造により、業界全体の平均年収も自然と上昇しています。個々の成果に加え、業界の収益性そのものが、M&A業界を高収入が期待できる職種として支えています。
M&A業界で年収を上げる方法
M&A業界では、成果報酬型の仕組みのなかで実績を積むほど、報酬が大きく伸びていきます。案件選定や専門知識の深化、クライアントとの信頼構築など、個人の行動が年収に直結するのが特徴です。
ここでは、M&A業界で収入を高めるために意識すべき具体的なポイントを解説します。
売れる案件に注力する
M&A業界で高収入を得るためには、成約見込みの高い案件にリソースを集中させることが重要です。成果報酬型の仕組みでは、案件が成立しなければ報酬が発生しないため、効率的な案件選定が収入を左右します。
特に、買い手と売り手のニーズが明確で、交渉がスムーズに進む案件は成約率が高くなります。市場動向や業界再編のタイミングを見極め、実現可能性の高い取引に注力することが成果につながります。
限られた時間のなかで複数の案件を抱えることが多いため、優先順位を明確にし、成果を出しやすい案件に戦略的に取り組む姿勢が求められます。
専門性を高める
M&A業界では、専門知識の深さが成果と報酬に直結します。企業価値評価や財務分析、法務・税務の知識を高めることで、より複雑な案件や大規模な取引を担当できるようになります。
特定業界に精通している人材は、交渉時に信頼を得やすく、クライアントからの指名を受ける機会も増えます。金融や会計、経営戦略などの知見を体系的に身につけることで、提案の質と成約率を同時に高めることが可能です。
専門性を磨き続けることは、長期的に見ても安定した成果と高収入を維持するための最も確実な方法といえるでしょう。
成果を上げる
M&A業界では、明確な成果を出すことが最も直接的に年収へ反映されます。成果報酬型の仕組みでは、案件の成約数や取引金額が報酬額を左右するため、個人の実績が評価の中心となります。
高い成果を上げるためには、案件の初期段階からクロージングまでを一貫してマネジメントし、各プロセスでスピードと精度を両立させることが求められます。特にクライアントとの信頼関係や、他部門との調整力が成約率を大きく左右します。
成果を積み重ねることで、より大規模な案件や重要な顧客を任されるようになり、報酬水準も段階的に上昇します。継続的に実績を出し続ける姿勢が、高収入を維持する最大の要素といえます。
クライアントとの信頼関係を構築する
M&A業界では、クライアントとの信頼関係が成果と報酬の両方を左右します。案件の多くは紹介やリピートによって生まれるため、継続的な信頼構築が安定した成約の機会につながります。
信頼を得るためには、短期的な成果だけでなく、クライアントの将来を見据えた提案や誠実な対応が欠かせません。経営者が抱える課題や感情に寄り添いながら、最適な解決策を提示する姿勢が評価されます。
関係性を深めることで、交渉がスムーズになり、条件面での合意形成も進めやすくなります。結果的に、成功報酬の機会が増え、長期的に安定した高収入を実現できる基盤となります。
M&A業界の魅力とやりがい
M&A業界は、企業の将来を左右する重要な意思決定に関わることができる点が大きな魅力です。経営課題の解決や新しい事業の創出など、社会的インパクトのある仕事に携われることから、専門職のなかでも高い充実感が得られます。
また、案件を通じて財務・法務・戦略など幅広い知識を実践的に身につけられるのも特徴です。努力と成果が明確に評価される環境のなかで、自身のスキルを磨き続けることができます。
ここでは、M&A業界で働く人が感じる代表的なやりがいを4つの観点から紹介します。
企業の未来を左右するプロジェクト成功による達成感
M&Aの現場では、一つの案件が企業の存続や成長戦略を大きく左右します。買収や統合が成立すれば、新しいビジネスが生まれ、従業員の雇用や地域経済にも影響を与えることがあります。そうした重要な局面に関わり、プロジェクトを成功させることは大きな達成感につながります。
特に、経営者と議論を重ね、信頼を築きながら最適な解決策を導き出す過程には、他の職種にはない責任とやりがいがあります。成果が目に見える形で社会に反映される点が、M&A業界ならではの魅力です。
高度な専門知識とスキルの習得
M&A業界では、財務・法務・税務・企業価値評価など、幅広い専門知識を実践的に学ぶことができます。案件ごとに異なる業界構造や経営課題に向き合うため、分析力や戦略的思考力が自然と磨かれます。
また、交渉やプレゼンテーションを通じてコミュニケーション能力も鍛えられます。経営者との直接的なやり取りが多く、ビジネスの本質を理解する経験を積める点も大きな魅力です。
専門性と実務スキルを兼ね備えることで、他業界でも通用する汎用的なビジネス力を身につけられます。
知的好奇心が満たされる多様な体験
M&A業界では、業種や企業規模を問わず多様な案件に携わる機会があります。製造業からIT、医療、サービス業まで、さまざまなビジネスモデルに触れることで、経営や市場の仕組みを深く理解できるのが特徴です。
全く同じ案件がないため、毎回新しい課題に直面し、その都度学びが得られます。調査・分析・交渉などを通して、多角的な視点から物事を考える力が養われます。
変化の多い環境で常に知的刺激を受けながら働ける点は、学び続けることを楽しめる人にとって大きなやりがいとなります。
成果が報酬に反映される評価体制
M&A業界では、成果主義の評価体制が明確に整っています。案件の成約や顧客満足度など、具体的な実績が報酬に直結する仕組みが特徴です。努力の過程だけでなく、最終的な結果が正当に評価される点が、仕事のモチベーションにつながります。
成果を上げた社員には高額のインセンティブが支給される一方で、成果が少ない時期には報酬が抑えられることもあります。自分の行動や成果がそのまま評価に反映されるため、実力で勝負したい人にとってやりがいのある環境です。
公平性と透明性の高い評価制度は、挑戦意欲を高め、長期的なキャリア成長を後押しする仕組みとなっています。
まとめ
M&A業界で高収入を実現するには、成果報酬型の仕組みを理解し、自ら成果を上げる力を磨くことが必要です。案件の成約を通じて得られる報酬は非常に大きい一方で、専門知識・分析力・交渉力といった実力が求められます。努力が結果に直結する環境であるため、準備不足のまま挑戦するのは容易ではありません。
M&A業界に転職を考えている人は、以下の以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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