BPOとは?アウトソーシングとの違いや大手プロバイダも解説!
2025年09月26日更新
コンサル業界の研究を進めていくと、DX、IoT、ERPなどの用語が出てきますが、これらの用語がイマイチよく分からないといった方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、本シリーズでは、コンサル業界への転職を希望されている方向けに、コンサル業界の頻出用語を解説していきます。
今回は「BPO」について解説します。BPOは、ひと昔前に多く取り上げられたテーマで、コンサルティングの現場でも頻繁に登場するワードです。しかしながら、BPOとは具体的に何なのか、十分に理解できていないという方も多いのではないでしょうか。そのような方に向けて、具体的な事例も交えて分かりやすく説明していきたいと思います。
著者

藤田 祐督
Fujita Yusuke
横浜国立大学卒業後、サイバーエージェントに入社。子会社副社長/COOとして新規事業の戦略策定〜ブランディング、プロダクトマネジメントまで一気通貫で推進。その後、アクセンチュアでの事業戦略立案・DX支援、NTTドコモでの新規事業立ち上げを経てMy Visionに参画。
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監修者

岡﨑 健斗
Okazaki Kento
株式会社MyVision代表取締役
東京大学を卒業後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。主に金融・通信テクノロジー・消費財業界における戦略立案プロジェクトおよびビジネスDDを担当。採用活動にも従事。 BCG卒業後は、IT企業の執行役員、起業・売却を経て、株式会社MyVisionを設立。
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BPOとは?
BPO(Business Process Outsourcing)とは、企業の業務プロセスを一括して外部に委託するアウトソーシングの一種の形態です。BPOの対象は、人事・総務・経理・受付など企業のバックオフィスに加えて、コールセンターやヘルプデスクといった業務が中心です。BPOの導入により、企業は人件費などのコストを削減することができます。また、企業の売上の柱となる「コア事業」に人的リソースや資金を集中させることが可能となり、競合優位性の向上につながります。
BPOとアウトソーシングの違い
一般的にアウトソーシングとは、自社業務の一部を外部委託することを指します。一方、BPOはノンコア業務や、自社がノウハウを持たない業務についてまとめて外部委託することを指します。例えば、人事部の業務の中で、給与計算のみを外部委託する場合はアウトソーシングにあたりますが、福利厚生や勤怠処理、各種申請手続きなど、人事部のすべての業務を外部に委託する場合はBPOに該当します。
また、BPOの場合は委託先で業務プロセスを設計し直すため、業務プロセスの効率化もセットで行われます。たとえば、これまで紙で実施していた業務を電子化したり、マニュアルで実施していた処理にRPAを導入を導入して自動化したりなど、そういった業務プロセスの再設計も委託先ベンダで実施されます。このように、委託対象の業務範囲のみならず、責任範囲も広いのがBPOとアウトソーシングとの大きな違いと言えます。
引用:BPO事業のいま BPO のデジタル化と4つの軸でビジネスの成長を導く - Accel by Magic Moment
BPOとシェアドサービスの違い
業務効率化・コストカットの施策として、BPOと並んで「シェアドサービス」が度々挙げられます。シェアドサービスは、グループ内の企業の分散している間接業務を1つの組織(シェアドサービスセンター)にまとめて、業務の効率化やコスト削減を目指す手法です。BPOとの違いは、外部に業務委託するのではなく、自社のスタッフで業務を行う点です。 日系企業の場合、人員削減をすぐに行うのが難しいことから、しばしばシェアドサービス化してからBPOを行うといった、段階的な施策が取られるケースが多いです。
BPOの市場動向
IDCによると、2021年のBPO市場は前年比5.1%増の8,856億円で、2021年~2026年の年間平均成長率(CAGR)は3.9%、2026年の同市場規模は1兆717億円と予測しています。BPOが盛んに取り上げられたのは2000年代から2010年代であるため、現在は成熟市場となっていることに加え、COVID-19の影響もあり、成長率は鈍化傾向にあります。但し、市場規模自体は拡大しているため、コンサルファーム各社の業務改革のテーマとしては今後もまだまだ需要が見込まれます。
図:国内BPOサービス市場の支出額予測:2021年~2026年(出典:IDC Japan)
BPO活用事例
ここでは、BPOにより業務効率化を実現した事例を紹介します。
事例①:経理プロセス(味の素)
味の素株式会社では、グローバル食品企業トップ10入りを目指し、経理部門における経営に対する参謀機能、グループ会社に対する統率・支援機能の強化が求められていました。 当時、経理部門では、各部門の経費担当者が作成した会計伝票の内容確認を行っていましたが、経費担当者への経費処理に関する業務知識の蓄積や維持に一定の工数を要していました。 そのような業務負荷を軽減すべく、経理部門と各部門の経費担当がそれぞれ担っていた業務をBPOセンターに集約することとしました。併せて、業務プロセスを見直すことによって、業務のあり方を再構築し、経理部門と各部門の業務負荷を大きく軽減することが可能となりました。 特に経理部門においては、これまで同業務に要していた工数の8割を削減することができ、グローバル化推進に向けて必要な業務へとリソースを集中させることができました。
事例②:受注プロセス(月桂冠)
月桂冠株式会社では、物流部門において、各支店ごとに行っていた受注業務を京都・伏見に設立したセンターに集約させ、社員のみで受注業務に対応していました。
しかし、担当者の異動に伴う引き継ぎ対応、退職に伴う欠員対応に多くの時間を要し、部門として本来取り組むべきコア業務に専念できないという課題がありました。
そのため、同業務にBPOを導入することが合理的だと判断し、外部委託と併せて、業務標準化やデジタル対応を進めることによって、誤発注率の削減やより少ない人員での業務対応を実現するなど、業務を大きく改善しました。
社内リソースは物流企画などのコア業務にシフトし、今後の成長につながる取り組みに専念する体制を構築しました。
・参考:BPO事例インタビュー:月桂冠株式会社 | パソナのBPO・アウトソーシングサービス
大手BPOサービスプロバイダ
ここでは、代表的なBPOサービスを提供する企業(委託を受けて業務を遂行する外部企業)を紹介します。
アデコ株式会社
対応する業務・分野
事務センター・バックオフィス業務、テレマーケティング・コールセンター、採用代行、営業代行・モニタリング、ショップ・複合型施設・イベント運営、受付・インフォメーション、図書館・学校業務、就業支援など
特徴
全国に拠点を持ち、7,500件以上の業務を受託しているため多くのノウハウが蓄積されています。経験豊富なスーパーバイザーが600名以上在籍しているので、ニーズに合わせた人材を配置させることが可能です。
トランスコスモス株式会社
対応する業務・分野
マーケティング、コールセンター、システム監視・ヘルプデスク、ECなど
特徴
トランスコスモスのアウトソーシングサービスは、全世界で168のサービス拠点(国内66拠点、海外102拠点)を持っており、またサービスの守備範囲も広いのが特徴です。コンタクトセンター業務においては、25言語に対応していますし、EC業務では、お客様企業の事業戦略やブランド戦略に沿って、仕入、オペレーション、販売に至るまで、世界48の国と地域にワンストップサービスを提供しています。 その他にも、販売や契約に関わる業務や、経理業務などのバックオフィス業務のBPOサービスも充実しています。 BPOプレイヤーとしては、2020年度売上高が世界第3位の実績があり、グローバルなビジネスを手掛けている企業へのサービス提供にも強みがあります。
株式会社パソナ
対応する業務・分野
総務・庶務事務、人事労務、経理・財務、営業事務・受発注、営業・販売、カスタマーサポート、調達・購買、海外人事労務
特徴
パソナのBPOサービスは、現状の見える化や業務設計を行い、業務が安定して運用されるまでPDCAサイクルを回していき、企業を全面サポートします。社内の共通業務から業界固有の業務に至るまで、パソナは業界を問わず幅広く対応し、業務の効率化、品質の向上、コスト削減、企業の事業競争力の強化を図ります。
株式会社KDDIエボルバ
対応する業務・分野
バックオフィスサービス、採用代行サービス、写真撮影・動画制作サービス、コールセンターなど
特徴
バックオフィス業務を実行するリソースが全国に37拠点あり、顧客のニーズに応えられる体制が充実しています。コンタクトセンターやクライアント企業内でのデータ入力や書類発送等、幅広くバックオフィスサービスを提供しています。 コールセンター業務においては、社内でそれらのシステムを保有するには、オペレーターの育成や繁閑期の調整、設備問題などさまざまな課題が発生しますが、それらの課題を解決するための充実したサポートを提供しています。
株式会社NTTデータスマートソーシング
対応する業務・分野
バックオフィス業務、間接業務BPO、システムオペレーション、ドキュメント変換・校正サービス「変換職人」、社員トレーニングなど
特徴
BPOセンターを全国7か所に配置し、バックオフィス業務やそれに付随する間接業務を全面的にバックアップしています。単に事務処理をするだけではなく、お客様への資料・商品の発送までのサービスをワンストップで提供します。 また社員トレーニングサービスとして、業務マニュアル作成、講習会の運営、リリース後のヘルプデスク業務などについて、担当者を変更することなく一貫して支援します。映像ソリューションを活用することで、トレーニングビデオの作成や、パソコン・スマートフォンへの配信を提供することも可能です。
BPOにおけるコンサルファームの役割
企業がBPOベンダをうまく活用するためには、BPRや業務改革の専門知識が必要です。また、クライアント企業側にもBPOを設計するための人員が必要となります。そのため、コンサルファームは、クライアント企業とBPOベンダーの橋渡しの役割を担います。また、中には業務のBPOを受け持つ部隊を融資、コンサルティングから実行まで一気通貫でサービス提供しているファームもあります。ここでは、BPOにおけるコンサルティングファームの役割について詳しく解説します。
役割①:BPOに対する課題や不安の解消、導入目的の明確化
BPOの経験が十分でない企業においては、「本当にコスト削減が可能か」「サービス品質が下がらないか」といった懸念を持つ場合もあります。そのような疑問をひとつひとつクリアし、BPO導入までの道筋を明らかにする支援を行うことが可能です。 BPOの成功に不可欠な導入目的の明確化を、BPOによって何を実現したいのか、どのような課題を解決したいのかという観点からサポートしていきます。
役割②:対象業務範囲の設定、業務プロセスの再構築
委託をする業務の範囲を明確に定めなければ、委託元の企業とBPO事業者の双方で業務の重複や抜け漏れが発生してしまう可能性があります。 それらを未然に防ぐために、業務の棚卸しや複雑で専門的な業務プロセスの可視化を行うことを支援することが可能です。 また、単なる業務委託ではなく、業務の改善を目的としたBPOを進めるにあたっては、最新のデジタルツールなどを活用した業務の再構築が効果的です。デジタル化の潮流を押さえ、それを念頭におきながら、BPOの効果を最大化するための打ち手を立案することが可能です。
役割③:BPO実行時の伴走支援
BPOの導入をゴールとせず、取り組み状況を継続的に確認していくとともに、更なる業務改善の余地を探していくことが効果的です。プロジェクト運営の経験が豊富なコンサルファームがクライアント企業と伴走しながら、BPOの導入に伴うKPIの設定や進捗管理、必要な改善手段の立案・実行支援を通じて、導入効果を高めていくためのサポートを実行することが可能です。
BPOに強いコンサルファーム
BPOは、総合系・IT系コンサルファーム各社で案件を取り扱っています。ここでは、BPOコンサルに強いコンサルファームをいくつかピックアップいたします。
アクセンチュア
世界有数の総合コンサルティングファームであるアクセンチュアは、BPOソリューションに強みがあります。経理・人事・調達・受注から、システムのヘルプデスク・運用保守まで幅広い業務領域におけるBPOの知見があります。AIやRPOのノウハウが多数あることから、これらを活用してBPO対象の業務を効率化して高パフォーマンスでのコストカットを実現しています。 また、BPOセンターを有していることから、企画・業務設計のみならず、BPOの実行まで一気通貫して引き受けることが可能です。
IBM
世界有数のITベンダであるIBMは、BPOソリューションにおいて豊富な実績を有しております。バックオフィス業務(人事・経理・間接材購買・総務)、サプライチェーン、マーケティング/セールスなどの幅広い業務領域を対象とし、お客様の要件に合わせたビジネスの成果と効果の最大化を目指して国内外のデリバリー・ロケーションから業務の効率化・高度化を推進してきました。 日本においても那覇にBPOセンターを有しており、企画・業務設計のみならず実行まで一気通貫して引き受けることを可能としています。今後は更に北九州、札幌、仙台、中国地方等の他拠点からもBPOサービスをご提供できるように拡大を予定しています。
富士通
日本有数のITベンダである富士通は、情シス業務(ヘルプデスク、システム監視サービス、トラブル対応サービス、グローバルサービスデスク、マイナンバーBPOサービス)のBPOを担っています。 システムを導入するだけでなく、その後の運用保守に関わるところまでBPOとしてサービスを提供しているのが大きな特徴と言えます。
まとめ
本日は、BPOについて解説しました。BPOは10~20年前から企業の業務効率化・コストカット・競争力強化のためのソリューションとして幅広く取り扱われているテーマです。コンサルティングファームにとってBPOは「業務改革のソリューションの1つ」であるため、BPOをどのプロセスに適用すれば効率化に繋がるか、という視点でプロジェクト業務に臨むことが求められます。
また、BPOはシステム導入やBPRなど他のソリューションとセットで検討されることも多いため、直接BPOの案件を担当していなかったとしても、コンサルタントとしてクライアントの業務・課題を理解し、価値提供していくためにBPOについて理解しておく必要があります。 この記事をきっかけに、少しでもBPOについての理解を深めていただければ幸いです。