技術の可能性をまだ世にない事業へつなげる――技術起点の新規事業開発に挑む日本総合研究所 事業開発・技術デザイン戦略グループ
2026年09月16日更新

企業紹介
株式会社日本総合研究所(以下、「日本総研」)は、シンクタンクとしての知見とコンサルティング機能を活かし、民間企業・官公庁に対して、産業課題や社会課題の解決を支援しています。その中で事業開発・技術デザイン戦略グループは、技術・研究開発を軸に、クライアント企業のR&Dテーマ開発から事業化に向けた伴走まで幅広く支援しています。 技術そのものを理解するだけでなく、それをどの市場で、誰に、どのような価値として届けるのか。まだ市場も顧客も明確でない領域に入り込み、技術の可能性を事業として形にしていく点に、同グループならではの面白さがあります。本記事では、事業開発・技術デザイン戦略グループの部長である岡田匡史氏、シニアコンサルタントの日和佐登氏に、グループの特徴やプロジェクトの魅力、技術系人材が活躍できる理由、転職を検討されている方へのメッセージを伺いました。
インタビュイー経歴
話し手

岡田匡史氏
株式会社日本総合研究所
事業開発・技術デザイン戦略グループ 部長
大学院修了後、2004年に日本総研に入社。マネジメント系のコンサルティングを経験したのち、技術起点の事業開発やR&D支援に活路を見出し、現在の事業開発・技術デザイン戦略グループを立ち上げた。製造業、ライフスタイル領域、エネルギー・インフラ領域など、幅広い産業で新規事業開発を支援している。
話し手

日和佐登氏
株式会社日本総合研究所
事業開発・技術デザイン戦略グループ シニアコンサルタント
大学院修了後、2020年に大手半導体メーカーに入社し、半導体プロセス技術の研究開発に従事。研究開発から量産現場に近い技術検討まで、技術の実装を見据えた開発業務に携わるほか新規事業の検討にも参画する。2023年に日本総研へ入社。現在は技術起点の新規事業開発支援を中心に、事業化を見据えた技術シーズの探索やR&Dテーマの設計支援に携わる。
目次
まだ市場も答えもない領域で、事業をゼロから組み上げる
──事業開発・技術デザイン戦略グループでは、どのようなテーマに取り組んでいるのでしょうか。
岡田氏私たちのグループは、技術系メーカーのR&Dや事業開発、ライフスタイル領域の新規事業、洋上風力などの大規模投資型ビジネスまで、幅広いテーマを扱っています。共通しているのは、クライアント自身もまだ十分に分かっていない領域、世の中にも答えがない領域に入り込み、ゼロから事業を組み上げていくことです。 本業の延長線上で、クライアントがすでに答えを持っているテーマを支援するというよりは、「新しい技術をどう事業にするのか」「まだ形になっていない市場をどう捉えるのか」といった、正解のない問いに向き合うことが多いですね。研究所に眠っている技術や、用途が明確でない技術シーズを前に、「本当に事業になるのか」「どの市場で価値を発揮するのか」「どの企業やプレイヤーと組むべきなのか」といった問いを、クライアントと一緒に考えていきます。 組織としては十数名規模の少数精鋭です。取り扱う領域は非常に広く、これまでグループとして500領域ほどに関わってきました。一つの産業だけを深掘りするのではなく、技術、産業、地域、ファイナンスなどを横断して考えるため、簡単な仕事ではありません。ただ、その分、他では得にくい経験ができる組織だと思います。
──グループを立ち上げられた背景についても教えてください。
岡田氏もともと私自身がさまざまなコンサルティング案件に取り組む中で、クライアントから高くご評価いただき、リピートにつながるテーマが、新しい領域の事業開発や技術起点の支援に集中していたことがきっかけです。 日本では、事業開発という機能が本格的に広がり始めたのは比較的最近です。研究開発や技術はあるものの、それをどう市場につなげ、事業として成立させるかに悩む企業が増えていました。優れた技術を、どの顧客に、どの用途で、どのようなビジネスモデルとして届ければよいのか。そうした課題に対して、専門的にアプローチする組織をつくった方がよいと考え、グループを立ち上げました。
研究開発の経験を、事業を生み出す力へつなげる
──日和佐さんは、研究開発職からどのような思いでコンサルティングの世界に転職されたのでしょうか。

日和佐氏前職では、半導体メーカーの研究所にて、プラズマプロセスの研究開発に携わっていました。クリーンルームでの実験・評価に加え、論文投稿や学会発表など、アカデミアに近い研究活動を経験しました。また、工場の生産ラインに近い開発テーマにも関わり、先端技術を実際の製造プロセスへ適用していく難しさと面白さを体感しました。 加えて、社内の新規事業プロジェクトにも参画し、多様な専門性を持つ技術者とともに、社内に蓄積された技術をどのように事業へ結びつけるかを検討する機会がありました。その中で強く感じたのは、研究や技術開発の現場には非常に優秀な技術者が多くいる一方で、技術を事業へ転換するための経験や知見は、必ずしも十分に蓄積されていないということです。優れた技術や人材をもちながら、事業化の進め方が見えず、技術者が試行錯誤している状況を目の当たりにし、そうした人たちがより力を発揮できる仕組みづくりに関わりたいと考えるようになりました。
日本総研のこのグループを選んだ理由は、R&Dの初期段階から技術者と直接向き合い、技術の可能性を事業化までつなげる支援を行っている点に魅力を感じたためです。面接の場でも、岡田さんは私の研究内容に深く関心を持ち、技術の中身に踏み込んで議論してくれたことが印象に残っています。並行して面接を進めていたコンサルティングファームもありましたが、ここまで技術の話に踏み込んでくるところはなく、技術と事業の両方に真剣に向き合えると感じたことが入社の大きな決め手になりました。
──岡田さんは、どのような経緯で現在の領域に進まれたのでしょうか。
岡田氏私は入社後、組織変革や経営管理、M&Aなど、マネジメント系のコンサルティングを担当していました。ただ、特定の専門性を高める方向も素晴らしいですが、毎回まったく違う、見たことのないテーマに向き合う方に面白さを感じていました。 宇宙工学を学んでいたこともあり、技術そのものへの関心はもともとありました。ただ、研究者として一つの技術を突き詰めるというよりも、技術をどう社会や事業につなげるかに関心がありました。クライアントから評価いただける案件も、新しい技術や未知の領域を事業化するテーマが多く、その結果、こうしたテーマに特化した組織を立ち上げることになりました。
レポートで終わらず、事業が動くところまで伴走する
──事業開発・技術デザイン戦略グループでは、具体的にどのようなプロジェクトに取り組まれているのでしょうか。
岡田氏大きくは、技術系メーカーやインフラ企業のR&D・事業開発支援、ライフスタイル領域における新業態開発、エネルギー・地域開発を含む投資型ビジネスの支援などがあります。 例えば、カーボンニュートラルに関連する新技術を、単に製品化するのではなく、どのようなビジネスモデルで展開するのかを一緒に考える案件があります。機械、素材、バイオ、プラントエンジニアリング、パワーエレクトロニクスなど、幅広い技術領域が対象です。技術を理解したうえで、市場規模、競合、規制、サプライチェーン、必要なパートナーまで見ながら、事業として成り立つ形を考えていきます。 ライフスタイル領域では、食品やウェルビーイング、リゾート・宿泊業態などで、2050年を見据えたR&Dテーマ探索や、地域・自然環境の価値向上につながる事業開発を支援しています。また、洋上風力や深海資源開発など、大規模な投資や地域連携を伴うプロジェクトにも取り組んでいます。こうした案件では、企業の成長戦略を描くだけでなく、地域、行政、金融機関、複数の事業者を巻き込みながら、実装可能な座組みをつくっていくことが求められます。
──他ファームとの違いや、クライアントから評価されている点はどこにありますか。
岡田氏一つは、技術者と同じ目線で会話できることです。技術の中身に踏み込みながら、そこから事業をどうつくるかまで考えます。もう一つは、レポートを書いて終わりではなく、事業を実際に組み上げるところまで踏み込むことです。 たとえば、あるレーザー技術を持つメーカーの支援では、研究所に眠っていた技術のアプリケーションを探索し、グローバルに市場を探し、事業機会につなげていきました。技術そのものは面白いものの、どこに使えるのか、どの用途であれば顧客が対価を払うのかが見えにくい状態でした。そこで、用途候補を広く洗い出し、技術的な適合性と市場性の両面から絞り込み、事業化の方向性を検討しました。 また、洋上風力では、現在稼働している事業の開発段階から深く関わってきました。アパレル領域でも、ブランドポートフォリオの見直しから戦略ブランドの特定、リブランディングにつながる支援を行ったことがあります。必要であれば、アライアンス先を探し、顧客を探し、マネタイズモデルを考え、事業が動くところまでやります。単なる戦略策定ではなく、事業をつくるために必要なものはすべてやる、というスタンスです。
──日和佐さんが印象に残っているプロジェクトについても教えてください。
日和佐氏特に印象に残っているのは、R&Dの初期段階からクライアントに入り込み、技術開発テーマそのものを一緒につくっていくプロジェクトです。単に既存の技術をどう事業化するかを考えるのではなく、そもそもどの市場を狙うのか、どのような用途を想定するのか、そのためにどの技術課題を解くべきなのかというところから議論できる点に、R&Dテーマ開発プロジェクトの面白さを感じています。 技術開発が行き詰まってから事業化の相談を受けるケースもありますが、その段階では、すでに技術の方向性や開発テーマがある程度固まっており、取り得る選択肢が限られてしまうこともあります。だからこそ、R&Dの早い段階から市場や用途を見据え、事業化の可能性を高める方向に技術開発テーマを設計していくことが重要だと考えています。
実際のプロジェクトでは、市場環境や技術トレンドを踏まえながら、クライアントの技術がどの市場で価値を発揮できるのか、どのような企業や研究機関と組めばより大きな事業機会につながるのかを検討します。さらに、有望なテーマを選ぶだけでなく、事業化に向けて必要となる性能要件や、解くべき技術課題まで具体化していきます。場合によっては、関連する論文を数百本単位で読み込み、技術の原理や開発動向を理解したうえで、事業化に向けた論点を整理することもあります。
前職で研究開発に携わっていた経験は、研究者や技術者の方々と向き合う上で大きな強みになっています。研究者の方々が何に悩み、どこにこだわりを持っているのかは、自分自身の経験と重ねると理解しやすいと感じています。一方で、現在の仕事では、技術者の視点だけでなく、市場性、収益性、パートナー候補、実装までの道筋も見なければなりません。 技術そのものを深く理解したうえで、それを市場で価値を生むテーマや開発要件へと落とし込んでいく。そこに、このグループならではの面白さと、自分自身の経験を生かせる余地があると感じています。
未知のテーマに向き合い、突破口を見つける力が磨かれる
──このグループで働くことで、どのような力が身につくと感じていますか。
岡田氏一番身につくのは、突破力だと思います。答えがない、情報も十分にない、クライアントも何をどう考えればいいか分からない。そうした見えにくい中でも体系的に追求し続け、必ず突破口を見出す「突破力」です。 毎回、扱うテーマも、産業も、技術も異なります。最初から専門家としてすべてを知っている必要はありませんが、限られた時間の中で論文、特許、海外事例、企業動向、規制や政策の情報を読み込み、何が論点なのかを見極める必要があります。さらに、どんなに未知のテーマでも、最終的には定量化やモデリングに落とし込みます。そのため、定量分析力や構造化する力も自然と鍛えられます。
──日和佐さんは、実際にどのようにキャッチアップされていますか。
日和佐氏数をこなしてキャッチアップしました。ただ、その中で特に重要なのは、評価基準を自分でつくることだと思っています。 クライアントの中に答えがないからこそ、私たちに依頼が来ます。「分かりません」「ありません」で終わるのではなく、ないものに対して評価軸をつくり、議論できる状態にする必要があります。たとえば、ある技術が有望かどうかを判断する際にも、単に「市場が大きそう」「技術が面白そう」では不十分です。市場の立ち上がり時期、代替技術との比較、顧客の導入障壁、量産化の難易度、必要な投資規模など、複数の観点から評価軸を設計していきます。 不確実なテーマに対して評価軸を設計し、意思決定できる状態に整えることは、AIで簡単に代替できるものではないと思います。情報を集めること自体はAIでもできる部分が増えていますが、実際のプロジェクトでは、情報が不完全だったり、クライアントごとに重視すべき観点が異なったりします。その中で、何を論点化し、どの基準で評価すべきかを見極め、関係者が納得して議論できる土台をつくることは、人が担うべき重要な役割だと感じています。
技術と市場の間にある壁を、現場感を持って乗り越える
──入社後に感じた、日本総研やこのグループならではの魅力はありますか。
日和佐氏新規事業やR&D支援というと、外から見ると華やかに見える部分もあると思います。ただ、実際にはとても泥臭い仕事です。考えることも、調べることも、話すべき相手も非常に多い。アイデアを出して終わりというものではありません。 だからこそ、事業が世に出ていくまでにどのような壁があるのか、どう乗り越えればよいのかをリアルに学べます。企業の中で技術を磨いていたときには見えにくかった、市場に出すまでのハードル、社内意思決定の難しさ、顧客に価値を伝える難しさ、パートナーを巻き込む難しさなどに向き合うことができます。 また、日本総研ならではの魅力として、SMBCグループ内外のネットワークを通じて大きな案件につながることがあります。思わぬところから大規模なテーマが生まれ、国や地域、複数の企業を巻き込むプロジェクトに発展することもあります。そうしたスケールの大きさも、この環境ならではだと思います。
岡田氏日本総研は、企業の事業開発だけでなく、官公庁や地域、金融機関との接点もあります。新規事業は一社だけで完結しないことが多く、技術、資金、規制、地域、顧客をどうつなぐかが重要です。その意味で、さまざまなステークホルダーをつなぎながら、事業化に近いところまで踏み込める点は、日本総研の強みだと考えています。
クライアントと共に、事業をつくる組織へ
──今後、グループをどのように発展させていきたいと考えていますか。

岡田氏現在取り組んでいる技術起点の事業開発やR&D支援は、今後も継続していきます。一方で、分析や調査の一部はAIが代替していくでしょう。そうなると、私たちが出すべき価値は、よりクライアントの中に入り込み、事業そのものをつくるところにあると考えています。 将来的には、コンサルタントがクライアント先に入り、事業開発の中核を担い、実際に事業を立ち上げた後にまとめて報酬を得るような形もあり得ると思っています。単に資料を作るコンサルティングではなく、クライアントの事業を本当に変えていく存在になりたいですね。今後は、クライアントと同じ目線でリスクや成果に向き合いながら、売上が立つところまで伴走する組織にしていきたいと考えています。
──どのような方であれば、この環境で活躍できると思いますか。
岡田氏スキルは一定程度必要ですが、それ以上に大切なのはポジティブさです。難しいテーマに向き合う中で、深刻に考えすぎて止まってしまうのではなく、「何とかなる」「まずやってみよう」と前に進める人が向いています。 これからは、社内で検討して持っていくというだけでなく、クライアントの現場に入り込み、事業をつくる局面が増えていきます。そのときに、悩みながらも止まらず、突破していける力が重要になります。未知の技術や市場に向き合う仕事なので、最初から正解を知っている必要はありません。むしろ、分からないことを面白がり、自分で調べ、人に聞き、現場に入りながら前に進める人に来てほしいです。
日和佐氏私もポジティブさは重要だと思います。技術者の方と議論する中で、厳しいことを言われる場面もあります。そういうときに落ち込むのではなく、「では教えてください」と現場に入り込み、学びながら前に進める人が適していると思います。 加えて、自分の武器を理解している方に来てほしいです。「何にでも合わせます」ではなく、「自分はこの領域をやってきた」「ここには自信がある」というものを持ち、それを新しい知識と融合させて、新しいものを生み出したいという気概のある方が向いていると思います。
転職を検討されている方へ
──最後に、転職を検討されている方へメッセージをお願いします。
日和佐氏事業開発・技術デザイン戦略グループでは、自分の専門性を起点にしながら、これまで触れてこなかった技術領域や市場に挑戦することができます。技術そのものを深く理解するだけでなく、その技術がどの市場で価値を持つのか、どのような顧客課題の解決につながるのか、事業化に向けて何を乗り越える必要があるのかまで考えていく仕事です。決して簡単ではありませんが、その分、一つひとつの案件を通じて視野を広げ、自分の武器となる専門性を深めていける環境だと感じています。 私自身、前職で研究開発に携わっていたからこそ、技術を事業につなげる難しさと面白さを日々実感しています。自分の専門性を生かしながら、技術の可能性を見極め、新しい事業の芽をつくっていきたい方にとって、非常に面白い環境だと思います。 技術を深く理解する力と、それを市場や事業の視点で捉え直す力。その両方を磨きながら、専門性の幅を広げ、新しい価値を生み出していきたい方には、ぜひ挑戦していただきたいです。
岡田氏事業開発のスキルを少し身につけたい、というよりも、どこに行っても新しいことを生み出せる根本的な力を身につけたい方と一緒に働きたいです。既存事業だけを続ける時代ではなくなっていく中で、未知のテーマに向き合い、突破口を見つけ、事業を形にする力はますます重要になります。 私たちの仕事は、分かりやすい答えがあるテーマばかりではありません。むしろ、誰もまだ答えを持っていないからこそ価値があります。技術や事業に対する好奇心を持ち、自分の専門性を生かしながら新しい領域に飛び込みたい方、そして事業が動くところまで関わりたい方をお待ちしています。

