ロジックツリーとは?種類・作り方・活用例とすぐに使えるテンプレートを徹底解説
2025年02月27日更新
ビジネスで問題を解決したり意思決定をスムーズに進めたりするためには、課題や原因を整理して、要素をしっかり把握することが大切です。そこで役立つのが「ロジックツリー」です。
本記事では、ロジックツリーの基本的な考え方やメリット、種類、作り方、活用例などを詳しく解説します。
監修者

岡﨑 健斗
Okazaki Kento
株式会社MyVision代表取締役
東京大学を卒業後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。主に金融・通信テクノロジー・消費財業界における戦略立案プロジェクトおよびビジネスDDを担当。採用活動にも従事。 BCG卒業後は、IT企業の執行役員、起業・売却を経て、株式会社MyVisionを設立。
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ロジックツリーとは
問題解決や業務改善において、物事を論理的に整理する能力が非常に重要です。
ロジックツリーは課題の全体像を把握し、解決の糸口を見つけるために広く活用されているフレームワークの一つです。
ロジックツリーの基本的な定義と役割
ロジックツリーとは、課題解決や意思決定のために情報を整理し、論理的に分解する手法のことです。
木の枝が広がるように一つのテーマを複数の要素に分解していき、それらの関連性を視覚的に整理します。
ロジックツリーはコンサルタントの業務だけでなく、業務改善や新規事業計画、マーケティング戦略など幅広い分野で活用されており、課題の本質を見極めるための強力な手法です。
ロジックツリーが有効なシチュエーション
ロジックツリーが特に有効なのは、主に次のようなシチュエーションです。
複雑な課題を整理したいとき
課題が多岐にわたる場合、ロジックツリーを活用して問題を分解することで、解決すべき優先順位が明確になります。例えば新規事業の計画において、リソース配分やターゲット市場の選定を段階的に整理する際などに役立ちます。
チームで課題を共有したいとき
ロジックツリーは視覚的に分かりやすいため、複数人で課題に取り組む際に共通認識を持ちやすくなります。これによりチーム内での方向性のズレを防ぐことができ、効率的な意思決定が可能です。
仮説検証を進めるとき
例えば「顧客離れの原因は何か?」という課題分析をする場合、ロジックツリーで原因を分解し、「ラインナップが少ないのではないか」「サイトが見にくいのではないか」というような仮説を立てます。これにより新たな視点を得ることができ、新たな課題に気づきやすくなります。
[比較] ピラミッドストラクチャーとの違い
ロジックツリーと混同されやすい手法がピラミッドストラクチャーです。この二つはどちらも情報整理のフレームワークですが、目的と使い方に違いがあります。
ピラミッドストラクチャーは情報を結論から順番に示し、メインの主張を分かりやすくするために細分化していくトップダウン型の手法です。「結論→理由→詳細」の順で情報を展開するため、主にプレゼンテーションや報告書作成に適しています。
一方ロジックツリーは課題をボトムアップで分解し、全体像を見渡しながら解決策を導き出すため、主に課題解決に向いています。
ピラミッドストラクチャーの目的は一つの論点に関する明確な説明ですが、ロジックツリーは課題全体の網羅的な分析です。
このため、ロジックツリーは初期の情報収集や問題定義の段階で使われることが多いのに対し、ピラミッドストラクチャーはその成果をまとめる場面で使われることが多いのです。
ロジックツリーのメリットと特徴
ロジックツリーは意思決定や業務改善、新規事業の計画に役立ちますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょう。
ここでは、ロジックツリーを使うことで得られる具体的なメリットと特徴について詳しく解説します。
問題の全体像を把握しやすい
ロジックツリーの最大のメリットは、問題の全体像を視覚的に整理できることです。複雑な課題でも要素を細かく分解していくことで、「何が問題なのか」「どこに原因があるのか」が明確になります。
因果関係を明確化できる
ロジックツリーを活用すると、問題の「原因」と「結果」の関係を整理しやすくなります。問題の要因を洗い出し、さらにそれぞれの細かい原因を分析することで、具体的な改善策が見えてきます。
解決策の優先順位を設定しやすい
課題解決の際に全ての問題を一度に対応するのは難しいため、影響が大きく実行しやすい施策から取り組むことが重要です。ロジックツリーを使えば課題を細分化することで「どの解決策を優先すべきか」が明確になります。
チーム内での共有が容易
ロジックツリーを活用すると視覚的に整理できるため、チーム内でのスムーズな意思決定に役立ちます。言葉だけで説明するよりも、ツリー構造で可視化し情報をまとめることで、全員が同じ認識を持ちやすくなります。
ロジックツリーの種類と例
ロジックツリーには目的に応じた4つの種類があり、それぞれ異なるシーンで活用されます。
- Whyツリー:問題の原因を深掘りし本質的な課題を特定
- Whatツリー:事象や要素を整理し全体像を把握
- Howツリー:解決策を具体化し実行可能なアクションへの落とし込み
- KPIツリー:業績指標を分解し成果向上のための施策を明確化
これらのツリーを適切に使い分けることで、ビジネス課題の整理や意思決定がスムーズになります。それぞれの特徴と活用例を、図解とともに詳しく紹介しましょう。
Whyツリー(原因追求)
Whyツリーは、ある問題が発生した際に「なぜ?」を繰り返して原因を特定するためのツリーです。問題の根本原因を分解し探ることで、具体的な解決策を見つけやすくなります。
例えば「売上が低迷している」という課題の場合、ロジックツリーを活用して次のように分解できます。
このように枝分かれする度に「なぜ?」を繰り返すことで、売上低迷の具体的な原因を見つけることができます。
Whatツリー(要素分解)
Whatツリーは、特定の事象の構成要素を整理するためのツールです。全体像を把握するのに適しており、分析や戦略立案の際に役立ちます。
例えば、顧客満足度の構成要素を把握したい場合、ロジックツリーを活用して次のように分解できます。
このように分解し顧客満足度の構成要素を把握することで、「どこを改善すれば顧客満足度を向上できるのか」が明確になります。
Howツリー(問題解決)
Howツリーは、特定の目標を達成するための方法を分解し、実行可能な施策に落とし込むツリーです。戦略立案やプロジェクト推進に役立ちます。
例えば、「売上を向上させる」という目標の場合、ロジックツリーを活用して次のように分解できます。
このようにプロセスを細分化することで、改善に必要な過程や優先すべき事項を整理できます。
KPIツリー
KPIツリーは、企業や組織によるビジネスの目標であるKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)を達成するために、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を分解し、数値で管理するためのツリーです。ビジネスの目標管理やパフォーマンス評価に活用できます。
例えば、「ECサイトの売上を向上させる」という目標の場合、ロジックツリーを活用して次のように分解できます。
このように分解することで、KGI達成のための具体的な戦略を立てやすくなります。
ロジックツリーの作り方
ロジックツリーを効果的に活用するには、適切な手順で作成することが重要です。思いつくままに枝を広げるのではなく、論理的な一貫性を保ちつつ、全体像を整理することが求められます。
ここでは、ロジックツリーを作成するための具体的なステップを5つに分けて解説します。
ステップ1: テーマや課題を明確化する
まず、ロジックツリーを作成する目的やテーマを明確にしましょう。曖昧な状態で作成を始めると、途中で方向性がブレたり、意味のあるツリーにならなかったりすることがあります。
例えば、「売上を上げる方法を考える」「業務のムダをなくす」といった具体的なテーマを設定することで、何を考えればよいのかが明確になります。テーマを決める際には、以下のような質問を自分に投げかけてみるとよいでしょう。
- 何の問題を解決したいのか?
- どのような成果を得たいのか?
- どの視点から分析するべきか?
ステップ2: MECEを意識して要素を書き出す
次に、テーマに関連する要素を漏れなく、かつダブりがないように書き出します。ここで重要なのが MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive:漏れなく・ダブりなく) の原則です。
例えば、「売上を上げる方法」を考える場合、売上は「客数 × 客単価」で構成されます。このように、要素を分解して整理することで、ツリーの土台が作りやすくなります。
ステップ3: 必要に応じて分解を繰り返す
最初に出した要素をさらに細かく分解し、より具体的なレベルまで掘り下げていきます。
例えば、先程の「客数の増加」を考えた場合、その要因として「新規顧客の獲得」と「リピーターの増加」が挙げられます。これをさらに分解すると、以下のようなツリーが作成できます。
ステップ4: 分解した要素を分類・整理する
次に、分解した要素を整理し、ロジックツリーの構造を整えます。この段階で、各要素が適切な位置に配置されているかを確認しましょう。
ポイントとしては、以下の点に注意します。
- MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive:漏れなく・ダブりなく)が保たれているか(要素に抜けや重複がないか)
- 要素同士の関係が論理的か(ツリーの流れが自然か)
- 枝分かれの数が適切か(多すぎても、少なすぎても分かりにくい)
整理する際には付箋やホワイトボードを使って並び替えると、視覚的にわかりやすくなります。
ステップ5: ロジックの一貫性を確認する
最後に、作成したロジックツリーに矛盾や不整合がないかをチェックします。以下の観点で見直しを行いましょう。
- すべての要素がテーマに関連しているか
- 論理の流れが正しく、飛躍がないか
- 具体的な行動につながる構造になっているか
また、第三者に説明してみることも有効です。伝わりにくい部分があれば、ツリーの構造を見直す必要があります。
[ヒント] 初心者でも使いやすいフレームワーク
ロジックツリーをいきなり作成するのが難しい場合、以下のようなフレームワークを活用するとスムーズに作成できます。これらのフレームワークはビジネス課題の整理や問題解決の際によく使われるものでロジックツリーとの相性も良いため、初心者でも取り入れやすいです。
- 5 Whys:問題の根本原因を探る
- 4P:マーケティング戦略を分解
- 3C:市場・競合・自社の関係を整理
- SWOT:自社の強み・弱み、市場の機会・脅威を分析
それぞれ詳しく見ていきましょう。
5Whys
問題の根本原因を深掘りする際に有効な手法です。「なぜ?」を繰り返し問うことで、表面的な問題ではなく、本質的な原因を特定できます。
4P
マーケティング戦略を考える際に有効なフレームワークです。
- Product(商品戦略)
- Price(価格戦略)
- Place(流通戦略)
- Promotion(プロモーション戦略)
の4つの視点で施策を整理します。
3C
市場・競合・自社の関係を整理するためのフレームワークです。
- Customer(顧客):ターゲットのニーズや購買行動
- Competitor(競合):市場内の競争状況や競合企業の強み・弱み
- Company(自社):自社の強み・弱み、提供できる価値
の3つの要素において市場分析や競争戦略を考える際に役立つフレームワークです。ロジックツリーと組み合わせることで、より具体的な戦略を策定できます。
SWOT
自社の強み・弱み、市場の機会・脅威を分析するフレームワークです。
- Strengths(強み):自社の強みは何か?
- Weaknesses(弱み):改善すべき課題は?
- Opportunities(機会):市場のチャンスはあるか?
- Threats(脅威):外部環境のリスクは?
の4つの点で自社の状況を整理し、戦略を考える際に便利なフレームワークです。
ロジックツリー作成時の注意点
ロジックツリーは、構造が複雑になりすぎるとかえって混乱を招いてしまいます。作成する際は視覚的に分かりやすくするため、次のような意識が重要です。
<シンプルな構成>
- 枝分かれを多くしすぎない(3~5階層を目安にする)
- 1つの要素に過剰な情報を詰め込まない
- 重要なポイントは太字や色を使って強調する
<MECE(漏れなく・ダブりなく)>
- 同じ内容が重複しないように整理する
- 抜け漏れがないか、全体を俯瞰して確認する
<視線の流れを考えたレイアウト>
- 左から右、または上から下のように視線の流れに沿ったレイアウトにする
- 矢印や線の使い方を統一する
<視覚的なバランス>
- 要素ごとの間隔を均等にする
- フォントやカラーを統一し、見やすくする
ロジックツリーをすぐに活用できるテンプレートとツール
ロジックツリーの作成には、テンプレートやツールを活用しましょう。ここでは、すぐに活用できるテンプレートとツールを紹介します。
Microsoft Excel
Microsoft ExcelのSmartArtには、ロジックツリーのテンプレートを呼び出す機能があります。
以下のような手順で呼び出しが可能です。
挿入>SmartArt>階層構造>横方向階層
Excelさえ所有していれば別途ダウンロードや会員登録などが不要のため、手軽に使用することができます。
Lucidchart
Lucidchartはオンライン上で色んな作図ができるツールです。マインドマップやフローチャート、システム構成図、UML図まで作成することができ、ロジックツリーのテンプレートも豊富です。
オンラインツールのためチームメンバーとの共同編集も可能で、GoogleやMicrosoft、Slackなど他アプリと連携することもできます。
参照:Lucidchart 参照:Lucidchart:作図テンプレート
ferretメディア
ferretメディアでは無料会員登録を行うと、PowerPoint形式のロジックツリーのテンプレートをダウンロードすることができます。
Miro
Miroは無地の画面にテキストや図を書き込むことが出来るオンラインホワイトボードツールです。テキストの打ち込みも画面への手書きも可能で、チームメンバーとリアルタイムでの共同編集もできます。ボード数が3つまでの制限付きの無料版と、無制限で使用できる有料版があります。
テンプレートも豊富で、「ロジックツリーツール」もあります。
ロジックツリーを活用した具体例
ここでは、ロジックツリーの具体的な活用事例を紹介します。
売上改善のためのロジックツリー
売上を向上させるために、「売上 = 客数 × 客単価」という基本公式に基づいてロジックツリーを作成します。
残業削減プロジェクトでの活用
残業の原因を「業務量」「効率の悪さ」「マネジメント」の3つに分解し、具体的な対策を検討します。
新規事業の計画プロセス
新規事業を成功させるには、「市場分析」「顧客ニーズ」「競争優位性」などをロジックツリーで整理し、戦略を立てます。
[応用] 看護や教育分野での活用例
ロジックツリーは業界を問わず、課題の整理や解決策の策定に役立ちます。ビジネス分野だけでなく、医療・教育分野などにも応用可能です。
看護分野での活用例
課題:病院での医療ミスを減らしたい
教育分野での活用例
課題:生徒の学習意欲を向上させたい
まとめ
ロジックツリーは、このように様々な分野やシーンにおいて、問題解決や業務改善に役立つフレームワークです。
原因分析や要素分解、解決策の整理や売上向上、業務効率化、新規事業計画などさまざまな場面で有効です。
適切なツールやテンプレートを活用すれば、初心者でも簡単に実践できます。
課題を論理的に整理し、最適な解決策を導き出すために、ぜひロジックツリーを活用してみましょう。
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