RPAとは どこよりも丁寧な徹底解説
2024年06月24日更新
コンサル業界の研究を進めていくと、DX、IoT、ERPなどの用語が出てきますが、これらの用語がイマイチよく分からないといった方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、本シリーズでは、コンサル業界への転職を希望されている方向けに、コンサル業界の頻出用語を解説していきます。
今回は「RPA」について解説します。RPAは、昨今では業務効率化において多く活用されるソリューションで、ITコンサルタントはもちろんのこと、ビジネスコンサルタントも取り扱うケースが多々あります。コンサル業界を目指すにあたっては必ず知っておくべき用語となります。「最近”RPA”が流行っているらしいけど、よく分からない」という方でも、最後まで読めばRPAについてしっかりと理解できる内容となっております。
目次
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監修者
門山 友輔
Kadoyama Yusuke
システムベンダーで経験を積んだのち、大手転職エージェントであるパソナにてIT/コンサル業界向けの転職支援に従事。半期MVP6回、年間MVP受賞、全社売上レコード更新などの実績を有する。
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RPAとは?
RPA(Robotic Process Automation)とは、人間の代わりに業務をこなしてくれるツールで、決まった手順の定型業務や繰り返し行うルーティンワークを自動化することを得意としています。自動化と言えば、従来はExcelマクロやVBAが主流でしたが、これらはoffice製品上での作業に限られていました。RPAではPC上のあらゆる操作を自動化できるのが大きな違いです。
RPAの近況:市場成長率は右肩上がり
RPAの市場成長率は、現在右肩上がりです。世界有数のリサーチ会社であるガートナーから”RPA市場は2024年まで2桁の成長率で拡大する”という予測が発表されました。また、IT系リサーチ会社「MM総研」の調べによると、2019年11月時点でRPAの導入率は国内企業全体で38%、年商1,000億円を超える大手企業だけに限定すると51%という結果になりました。年商50億円以上から1,000億円未満の中堅企業では25%となっていますが、検討中の企業が2018年から右肩上がりで増加していることから大手以外でも注目度が高まっていると見て取れます。
出典:ガートナー、世界におけるRPAソフトウェアの売上高が2021年には20億ドル近くに達する見通しを発表 RPA国内利用動向調査2020
RPAが注目される背景
昨今、RPAが注目される社会的背景について解説します。
背景①:労働人口の減少
第一には、日本の労働人口の減少が挙げられます。銀行系シンクタンク「みずほ総合研究所」の調査によれば、2065年の労働力人口は、少子高齢化の影響を受けて、2016年と比較して60%程度にまで減少すると予測されています。また帝国データバンクでは、50%の企業が人手不足であるという結果が出ています。そこで、ルーティンな定形作業に充てている人をより本質的な企業活動に集中してもらうべく代替手段のひとつとしてRPAが期待されているという背景があります。 出典:みずほ総合研究所「少子高齢化で労働力人口は4割減」
背景②:働き方改革
第二には、「働き方改革」の推進が挙げられます。有給取得の義務化や36協定の変更など働き方に関する政府の取り組みも活発化し、企業の経営者や管理者として必須の取り組みとなっています。そのため、社員にいかに少ない時間で効率的に働いてもらうかが企業にとって大きな課題となります。そこで、RPA導入により定型業務にかかっていた労力を削減し、従業員がよりコアな業務(企画や営業活動など)に注力できることが期待されています。また、コロナウィルスの影響で急速にテレワークを求められたことも導入が後押しされた背景であると言えます。
背景③:グローバル競争の激化
昨今ではアジア諸国の台頭により、グローバルでの企業競争がより激化しています。グローバル間での競争に打ち勝つための戦略として、企業の「スリム化」によるコストカットが挙げられます。これまで定型業務にかけていた人員をRPAで代替することで、生産性を落とすことなく人員コストを削減できるため、企業の財務体質改善に繋がります。これにより、グローバルでの競争力を高めることができます。
RPAが適用できる業務の具体例
RPAは、主に定型化された事務作業を自動化することを得意としています。また、これまでのマクロやVBAと異なり、Office製品上の操作だけでなく、PC上のユーザが操作するあらゆるアプリケーションを、さらに、複数のアプリケーションを跨いだプロセスについても、自動化が可能です。RPAに代替できる業務の具体的な例を下記に紹介いたします。
請求書作成
営業システムに入力済みの注文データから一部の数値情報を抽出、毎月決まったタイミングで請求書作成システムに入力し請求書を作成、プリントアウト、取引先へのメール送信といった一連の作業を自動化できます。
発注リスト転記
顧客からメールで受信した発注リスト(Excel)を自社の受発注管理システムに転記する作業を自動化できます。
広告レポート作成
RPAは、データ収集・分析も得意としています。マーケティング部門が広告運用の費用対効果集計をする際、特定キーワードのCPA、CPCなどのデータをGoogleアナリティクスから抽出したり、数値をグラフ化するといった作業も自動化できます。
勤怠集計・通知
人事部門で、社員の勤怠を管理・集計する場合、勤怠システムから残業時間の数値を集計し、残業が多い従業員や部署をリストアップして、担当者へ確認するよう自動でメール送信をする作業です。このような複数アプリケーションを跨いだ業務も自動化できます。
競合の価格調査
インターネット上から、EC事業者の競合価格調査を収集して分析・検証する業務についても自動化できます。
経費精算集約
特定のメールアドレスに【経費精算】という件名で届いたメールに添付ファイルが付いていれば、決まったフォルダへ添付ファイルを保存し、テンプレートを使って担当者にメールを送信するといった業務を自動化できます。
入金確認業務
毎月末に集中して作業が発生する入金確認業務もRPA化が可能です。まず、ネットバンキングにログインし、入金リストのCSVをダウンロード。新しい入金があれば、該当する顧客を管理システムで検索し、入金チェックを入れ、担当者に通知を送ります。
主要なRPA製品
ここでは、主要なRPA製品について紹介いたします。
UiPath
UiPathは、世界中の大手企業に多数導入されており、世界No.1のシェア率を誇ります。ドラッグ&ドロップによる簡単な操作で、非IT人材でもシナリオを作成し、作業を自動化できる点が特長です。また、UiPathはUiPath Studioという開発環境やOrchestratorという実行機能などと連携させることで、さらに拡張性の高い作業の自動化が実現できます。
WinActor
WinActorは、NTTデータが提供する国産RPAツールの代表的なデスクトップ型のRPAです。国内の多くの企業で働き方改革やDXの実現に活用されています。Windows用ソフトで実行する操作をソフトウェアロボットに覚えさせることで、作業の自動化が可能となります。また、WinDirectorと呼ばれる管理ツールを導入することで、WinActorの一元管理ができます。
BizRobo!
老舗的なRPAツールといえるBizRobo!は、多くの企業への導入実績があります。ドラッグ&ドロップで直感的にロボ作成が行えるため、プログラミングができない人やITスキルが乏しい人でも業務自動化を実現できます。また、最近はクラウド型のRPAツールや、AI-OCRと組み合わせた商品もリリースするなど、自動化できる業務の幅が広がっている点も注目されています。
Blue Prism
Blue Prismはサーバ型のRPAツールで、フローチャート形式でロボを作成してPCの作業を自動化できる点が特徴です。高いセキュリティの開発環境が提供されることから、医療機関や金融機関などへの導入が多く、信頼性の高いツールと言えます。また、AIと連携させることで、より高度な作業の自動化が実現できる点も特徴的と言えます。
Automation Anywhere
Automation Anywhereはデフォルトで500種類以上のロボ・テンプレートが提供されているため、導入後すぐに作業を自動化しやすい点が差別化ポイントです。さらに、AIや分析ツールと連動させることができるため、一般的なRPAでは自動化できない非定形作業の一部を自動化できる点も大きな特長といえるでしょう。
Power Automate Desktop
マイクロソフト社が提供するデスクトップ型のRPAです。マイクロソフト社のものだけあって、ExcelなどのOffice製品との相性が良いといったメリットがあります。また、最大の特徴は無料で使える点です。とりあえずRPAの導入テストをしてみたい場合におすすめできます。ただしロボットの制作にはある程度のITスキルを要します。
RaBit
RaBitは業界最安値級のRPA開発サービスです。1,500社への導入で養われた効率的なRPA制作ノウハウを活かすことで、一般的には数十万円以上は最低でもかかってしまうRPA開発を”66,000円”で実現いたします。また最短4日で実現するRPA開発であることから、スピード感を重視する中小企業での実用に最適です。
RPA導入に強みのある企業
RPA導入は、OA機器の専門商社、SIer、コンサルティングファーム各社において導入の支援を行っています。特に、下記のようなOA機器の専門商社や中堅SIerもしくは大手SIerのグループ会社では、積極的にソリューションとして掲げており、専門部隊を擁しています。
コニカミノルタジャパン
OA機器メーカーであるコニカミノルタの製品を主に扱う専門商社です。OA機器のソリューション営業を行う中で、お客様から事務作業効率化のための相談を受けるケースが多く、RPAソリューションを事業化した経緯があります。
大塚商会
OA機器の専門商社で、ソフトウェア製造・SI事業も展開している独立系の企業です。RPAソリューションについても、トライアルから導入支援、メンテナンスまで幅広く対応しており、日本国内においては高いシェアを誇っております。
NTTデータ
国内最大規模のSIerで、国内シェアNo.1のRPAであるWinActorの製造元です。主に金融機関や官公庁の大規模プロジェクトを多く手掛けています。
NTTビジネスソリューションズ
NTT西日本のグループ企業で、ICT事業を展開しています。WinActorをRPAソリューションとして掲げております。
コムチュア
独立系のSIerで、ワークフローツールやRPAツールといった情報系ツールの導入に強みがあります。
コンサルティングファームにおけるRPA導入の位置づけ
コンサルティングファームでもRPA導入案件の取り扱いがありますが、ソリューションとして大々的に掲げるというよりは、あくまで業務改革の手段として提案・導入支援を行っているケースが多いです。従って、RPA専任のコンサルタントとしてキャリアアップを目指すというよりは、「ビジネスコンサルタントのキャリアの中でRPA導入プロジェクトを経験する」という方がほとんどと言えます。総合系ファームにおいては、IoTやDXを専門に扱う部門や各種インダストリ部門で案件を抱えています。コンサルティングファーム各社のRPA導入プロジェクト事例は以下の通りです。
アクセンチュア
アクセンチュア
アクセンチュアは、自社の業務やプロジェクト業務において積極的にRPAを活用することで、現場に即したソリューションを提供できることに定評があります。また、BPO(Business Process Outsourcing)コンサルティングにも強みがあり、BPOを受けた後にRPAを駆使して業務プロセスを効率化していく手法で実績を挙げています。 代表的な事例としては、SMBC(三井住友フィナンシャルグループ)向けの業務改革プロジェクトが挙げられます。
出典:アクセンチュア、三井住友フィナンシャルグループにおける先進的な自動化ソリューション導入を通じたデジタル変革を牽引 ロボットが「相棒」の職場 アクセンチュア社員一人ひとりが業務にRPA活用
デロイトトーマツコンサルティング
Big4の一つであるデロイトトーマツコンサルティングは、自社の人事業務にRPAを導入・実証を行った事例が有名です。周辺の業務プロセスの削減効果と合わせて、全体の2割超のコスト削減効果を得られたという実績があります。これをベースに、業務改革のソリューションの1つとして、RPAの提案および導入支援を展開しています。
出典:人事業務におけるRPA活用~デジタル人材と共に飛躍する人事へ
EYアドバイザリー・アンド ・コンサルティング
Big4の一つである、EYアドバイザリー・アンド ・コンサルティングにおいても、多数のRPAの導入事例があります。実際、米国の独立系調査会社であるフォレスター・リサーチ社の調査レポート「フォレスター・ウェイブ:ロボティック・プロセス・オートメーション・サービス(2019年度第4四半期版)」において、ロボティック・プロセス・オートメーションのサービスリーダーに選出された実績があります。
出典:Robotic Process Automation(RPA)-その価値と監査での活用事例- EY、米独立系調査会社の調査レポートにおいて「ロボティック・プロセス・オートメーションのサービスリーダー」に選出
アビームコンサルティング
SAPソリューションに強みのあるアビームコンサルティングでは、SAPの導入コンサルティングとあわせて、経理や調達といったバックオフィス業務においてRPAソリューションを適用するケースが挙げられます。 代表的な事例としては、YKKベトナム社向けのRPA導入プロジェクトが挙げられます。
出典:YKKベトナム社
まとめ
本日は、RPAについて解説しました。業務プロセスの効率化は「DX」や「働き方改革」の中では重要なテーマであり、それを実現できるRPAソリューションは、近年大きく期待されています。しかしながら、コンサルティングファームのスタンスはあくまで、「業務改革のソリューションの1つ」であり、コンサルタントとして”技術に詳しい”ことよりは、”どのプロセスに適用すれば効率化に繋がるか?”の視点でプロジェクト業務に臨むことが求められます。 また、RPA導入プロジェクトではない、他の業務改善やシステム導入プロジェクトにおいても、クライアント業務を理解する上で、RPAの仕組みや業務への適用方法などは押さえて置くべき内容となります。 この記事をきっかけに、少しでもRPAについての理解を深めていただければ、幸いです。