SAPコンサルタントへの転職 SAPについても徹底解説
2024年06月24日更新
昨今、“SAPコンサルタント“は、「2027年問題」で人材が不足していることから、そのニーズは年々高まっており、SIer・コンサルティングファーム各社で積極的な人材採用が行われております。また、SAPコンサルタントは、ITの上流工程を担当できることや、高年収が期待できること等の理由で人気も高いです。
弊社では、SAPコンサルタントへの転職支援を積極的に行っております。特に、未経験からSAPコンサルへの転職を検討されている方は是非参考にしてみてください。
監修者
門山 友輔
Kadoyama Yusuke
システムベンダーで経験を積んだのち、大手転職エージェントであるパソナにてIT/コンサル業界向けの転職支援に従事。半期MVP6回、年間MVP受賞、全社売上レコード更新などの実績を有する。
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SAPコンサルへの転職 最新の採用動向
まずはSAPコンサルタントへの転職における最新動向について解説します。
SAPコンサルタントの採用動向のトレンド
現在、SAP人材は不足している状況にあり、コンサルティングファーム・SIer各社では積極的に人材採用を行なっています。その背景には「2027年問題」があり、現行バージョンであるECC 6.0の製造元サポートが2027年に打ち切りとなることから、多くの企業では後継となるS/4 HANAへの移行に着手しています。これに伴い、SIer・コンサルティングファーム各社ではシステム移行プロジェクトの受注が急増しています。
また、2027年以降も、リミニストリート社を始めとした3rd Partyベンダによる現行バージョンでの延命保守を選んだ企業向けのアップグレードや、S/4 HANA導入後の機能エンハンスメント、SAP未導入会社向けの新規導入、M&A等の企業の統廃合によるシステム切り替えなど、運用保守以外にも案件の需要が尽きることはありません。
未経験からSAPコンサルに転職成功する方の特徴
「未経験からSAPコンサルタントになれるか?」という質問をよく聞きますが、結論から言いますと十分可能です。昨今の需給バランスの傾向から、各社未経験でもSAPコンサルタントを積極的に採用しております。
特に「SIerでのSE・プログラマ経験がある方」や「事業会社で基幹業務の経験がある方」は、未経験からSAPコンサルタントへの転職に成功しやすいです。詳しく解説していきます。
SIerでのSE・プログラマ経験がある方
SIerでSEやプログラマとしての勤務経験がある方は、SAPの経験がなくとも、IT領域での経験・スキルが、SAPコンサルに求められるスキルと互換性が高いため、高い評価を得られる傾向にあります。
MicrosoftやOracle、OBICなどのSAP以外のパッケージソフトの導入・運用保守経験や、Javaなどでの業務アプリケーションの開発経験、DB設計の経験があれば、専門スキルの互換性が高いため、SAPコンサルタントへのキャリアチェンジのハードルも下がります。
また、SAPコンサルタントは、ITスキル以上に、顧客折衝やマネジメントの能力が求められます。上流工程やチームマネジメントの経験があれば、SAPそのものの経験がなくとも、即戦力として高く評価される傾向にあります。
その他、インフラ領域もSAP導入プロジェクトにおいては欠かせないポジションとなります。業務アプリケーションの経験がなくとも、サーバ構築・運用保守やDBのチューニングといったインフラ領域の業務経験があれば採用される可能性は高くなります。
事業会社で基幹業務の経験がある方
上記のSE・プログラマーの経験が全くない方でも、事業会社でSAPがカバーする基幹業務(調達・営業・物流・生産管理・経理・経営企画など)の経験があれば、SAPコンサルタントにキャリアチェンジできる可能性は高まります。
SAPコンサルタントにおいては、システムの知識以上に業務知識の方が求められます。SAPが導入されている会社のユーザ部門として、SAPを利用して業務を行っていた経験があれば、大きな強みとなります。言うまでもなく、自社向けのSAP導入プロジェクトにおいて、ユーザ部門のリードを経験された方は即戦力として高く評価されます。また、SAPそのものの利用経験がなくとも、SAPがカバーする業務領域で何らかの基幹業務システムを利用していた経験があれば、ベースの経験・知識はクリアしていると評価され、採用される可能性は十分にあります。
しかしながら、SE・プログラマー未経験、もしくはユーザ部門でのリード経験がない状態から、30代以降でキャリアチェンジするのは非常に難しいので、未経験の方は20代のうちに第二新卒枠でキャリアチェンジすることをお勧めします。
SAPコンサルタントとは?
次にSAPについて解説します。
SAPとは?
SAPとは、ドイツに本社があるソフトウェア会社で、代表的な製品であるERP(Enterprise Resource Planning)と呼ばれるパッケージソフトにおいては世界シェアNo.1を誇ります。ERPとは企業の経営資源となるヒト、モノ、カネ、情報を全社レベルで管理し、活用することで、経営の効率化を実現しようという考えを実現するためのシステムです。SAP ERPは大企業を主なターゲットとしており、日本はもちろん世界中の企業で利用されています。
SAPコンサルタントの仕事内容
SAPコンサルタントの役割は、企業の経営・業務課題を分析し、SAPという手段を用いて解決することです。課題解決のために求められるシステムの要件を定義し、設計・開発・本番移行およびプロジェクトマネジメントといったSAPの導入に必要な一連のタスクを担います。SAPコンサルタントは、クライアントの要望通りにシステムを作るSEとは異なり、自らあるべき姿を提案するアプローチでシステム導入を進めていきます。
SAPコンサルタントはプロジェクト単位で仕事を行うため、基本的には客先に常駐して仕事することになりますが、昨今はCOVID-19の影響でリモートワークが主流となっております。本番稼働前は遅くまで働くこともありますし、プロジェクトが遅延していると長時間労働が恒常化することもしばしばあります。その代わり、プロジェクトが終わればまとまった休暇を取ることもでき、人によっては1か月間海外でバカンスを楽しむといった方もいます。このように、SAPコンサルタントはメリハリのある働き方を実現することが可能です。
SAPコンサルタントのプロジェクトの働き方
今回はとあるSAPコンサルタント(Aさん)の事例をもとに、週のスケジュールや働き方を紹介いたします。
Aさんご経歴
- 年齢:27歳(当時)
- 学歴:都内有名私立大学卒
- 職歴:中途入社
プロジェクト
- クライアント:国内大手メーカー
- フェーズ:要件定義
- チーム:会計チーム
1週間のスケジュール
月曜日
休み明けの月曜日は、まずは今週のスケジュールを確認します。要件定義フェーズでは、クライアントとの打ち合わせが多いため、週のスケジュールを確認次第、翌日以降の打ち合わせ準備に取り掛かります。要件定義フェーズでは、Fit & Gap分析という、実機でデモンストレーションしながら、SAPの機能がクライアント業務に適合するか否かの検証を行うため、投影資料だけでなく、デモで使うシナリオやデータの準備も並行して進める必要があります。
火曜日
この日はクライアントとの要件定義セッションです。セッションそのものは無事終わりましたが、持ち帰り検討事項が出たので、次回打ち合わせまでに回答できるよう調査を進めます。また、明後日の木曜日には、別テーマで要件定義セッションがありますので、そちらの準備に取り掛かります。
水曜日
この日はプロジェクトの社内進捗ミーティングです。各チームから進捗状況や課題の発生有無が報告されます。今のところはどこのチームも大きな問題は発生していないですが、購買チームから、会計チームで検討しなければいけない課題が出たと報告がありました。SAP導入プロジェクトは規模が大きく複数のチームに別れるため、チームを横断した課題をいかに取りこぼさないかが重要となります。そういった課題を進捗ミーティングで共有し合い、しっかりと連携を図っていきます。
木曜日
この日もクライアントとの要件定義セッションです。まずは前回の質問に回答してから、その日の本題に入ります。前回の課題は解決しましたが、また新たな課題が出ました。翌週の会議までにまた回答できるよう準備を進めます。
金曜日
週終わりとなりますので、1週間のタスクの進捗を確認し、課題を整理し、来週のセッションの準備を進めます。「今日は華金。友達との飲み会があるけど、まだ仕事が残っているなー。」土日に仕事を持ち帰るのは良くないので、金曜日のうちに片づけることに。約束の時間には少し遅れて華金会場に向かいます。
SAPコンサルタントの年収
SAPコンサルタントの年収レンジは500万〜1,500万円程度であることが一般的です。ABAPエンジニアやモジュール担当者レベルでは、高年収を狙うことは難しいですが、チームリーダーやプロジェクトマネージャーのポジションを担うことができれば、年収1,000万円超えも可能です。また、英語や中国語といった外国語のスキルが堪能な方は、活躍できるプロジェクトの幅が広がるので、年収が上がりやすい傾向にあります。
SAPコンサルタントへの転職について
最後にSAPコンサルタントへの転職について解説します SAPコンサルタントへの転職メリットとして、以下の5点が挙げられます。
- クライアントの経営・業務改革に貢献できる
- 年収が高い
- グローバルな舞台で活躍できる
- 幅広いキャリアチェンジが実現できる
- フリーランスとして独立できる
それぞれについて解説します。
SAPコンサルタントに転職するメリット
クライアントの経営・業務改革に貢献できる
SAPコンサルタントの役割は、企業の経営・業務課題を解決することです。SAPはあくまで「手段」にすぎません。検討の場ではSAPの製品仕様にとらわれず、そもそもの経営や業務に踏み込んだ議論が行われます。システム設計においても「この機能を実装することで、本当に課題を解決できるのか?」と、常に自問自答し、時にはクライアントに対して反対意見を述べることも求められます。
単に言われた通りのシステムを作る訳ではなく、ビジネス視点であるべき解決策を考え抜き、ユーザ企業の経営・業務改革に貢献できることこそが、SAPコンサルタントとしての大きなやりがいになります。
年収が高い
SAPコンサルタントは主に上流工程のコンサルティングや、チームマネジメントの役割を担うため、システム知識だけでなく、ユーザ企業の経営・業務の知識、論理的思考力やコミュニケーション能力など、高度かつ幅広いスキルが求められます。従って、下流のSEやプログラマーよりも人月単価が高くなり、高年収となる傾向にあります。
グローバルな舞台で活躍できる
SAPはしばしば、大企業グループの統一システムとして導入されるため、海外拠点への展開を担当できるチャンスが多数あります。また、開発をオフショアに委託するケースも多く、インドや中国といった海外の開発者とコミュニケーションを取りながら仕事を進めるケースも多々あります。これらのことから、国籍や文化を超えたグローバルな舞台で仕事ができるというのも魅力の1つであると言えます。
幅広いキャリアチェンジが実現できる
SAPコンサルタントは、高度なコンサルティングスキルや経営・業務の専門知識が必要となることから、その経験は転職市場でも高く評価されます。よって、より上流のビジネスコンサルタントや戦略コンサルタントへのキャリアアップも可能となります。
また、事業会社においても、情報システム部の運用保守要員というよりは、IT企画・IT戦略といった、より経営に近い役割を担うことができ、将来的にはCIOを目指すことも可能です。こうしたことから、SAPコンサルタントの経験はキャリアチェンジにおいても、幅広い選択肢を獲得できると言えます。
フリーランスとして独立できる
SAPの経験やスキルがあればフリーランスとして独立することができ、企業に所属している頃よりも高い年収を狙うことができます。中には収入が3倍程度になるケースも見られます。独立前に所属していた企業の社格やタイトル、プロジェクト経験にもよりますが、最低5年程度のSAPコンサルタントの経験があれば、月単価120〜180万円が狙えます。特定モジュールの高い専門知識を有している、もしくはマネージャー以上のポジションを担うことができれば、月単価200、300万円超えも十分可能です。
また、週3勤務や、年間で半年のみの勤務などワークライフバランスを重視した自分のペースで働いたり、フリーランスコンサルの報酬を元手に、新たなビジネスを立ち上げて投資するなど、様々な働き方の実現が可能です。
SAPコンサルタントの大変な部分
ここまで、SAPコンサルタントの良い点ばかりを説明しましたが、大変な部分もあります。
SAPコンサルタントは、システムの知識のみならず、業務知識やプロジェクトマネジメントなど、幅広い知識が求められます。これに加えクライアントの業界に対する理解も必要なため、勤務時間外でも日々自己学習が求められます。
また、プロジェクト単位での働き方となるため、フェーズ終盤や本番稼働前はハードワークになりがちです。スケジュールが大幅に遅延しているプロジェクトでは、深夜労働が恒常化するケースもあります。昨今では各社で働き方改革が推進され、長時間勤務が常態化しないような制度が確立されてきてはいるものの、クライアントに対して期日内での業務遂行責任を果たさなければいけないのは変わらないため、どうしてもハードワークをせざるを得ないタイミングは生じます。
したがって、「毎日定時に上がって、アフターファイブを楽しみたい」といった方にはお勧めできません。
SAPコンサルに求められるスキルや経験
SAPコンサルタントは、SAP導入プロジェクトにおいて構想策定から稼働後支援までの全てのフェーズを一貫して担当することになります。従って、担当モジュールの製品知識・業務知識・ITスキル、論理的思考力、高いコミュニケーション能力、チームマネジメント力など、高度かつ幅広いスキルや経験が求められます。
SAPコンサルタントに転職するために有利な資格
未経験からSAPコンサルタントを目指す場合、最低限「日商簿記2級」と「基本情報技術者」があれば、有利になります。SAPを始めとしたERPパッケージでは、購買・販売・製造等のデータが最終的に会計データに繋がってくるため、会計領域以外のコンサルタントを目指す場合も、簿記の知識が必要とされます。また、ITシステムを扱うことになるため、情報システムの基本的な知識は必須となります。
その他、「ITストラテジスト」「PMP」「プロジェクトマネジメント」「USCPA」は、その取得難易度から、ITコンサルティングや経営コンサルティング、プロジェクトマネジメントにおいて高度な知識を有していると評価される資格となります。
また、TOEICや各種外国語検定も、グローバルプロジェクトで活躍できることのアピールとなります。英語はもちろんのこと、中国語スキルも、SAP未経験であったとしても高く評価されます。
SAPコンサルタントに転職成功するための対策
経験・未経験問わず、キャリアの棚卸を行い、アピールできる経験・スキルをまずは把握しましょう。専門的スキル・経験以上に面接官が特に重要視するポイントは、「リーダー経験」と「コミュニケーション能力」となります。面接では質問に対しては端的かつ的確に受け答えできるよう、準備と対策を行いましょう。
SAPコンサルへの転職でよくあるご質問
最後にSAPコンサルへの転職でよくあるご質問をまとめました。
SAPコンサルタントのキャリアパス
SAPコンサルタントは、幅広いキャリアパスを選択できます。
SIerやコンサルティングファームのSAPコンサルタントとしてのキャリアアップを目指す場合、プロジェクトマネージャやクライアント責任者といった、マネジメント寄りのポジションを目指していくこととなります。
また、コンサルティング経験を活かして、Non-Itのビジネスコンサルタントや戦略コンサルタントといった、より高度なコンサルティングスキルが求められる領域でのコンサルタントへのキャリアチェンジを狙うことも可能です。
その他、事業会社の情報システム部門の社内SEという選択肢もあります。事業会社の情報システム部門では、システムの運用保守のみならず、企業の情報システムに関わる業務を全般的に任されることになります。SAP以外の製品の導入や、次期システムのグランドデザイン、製品選定、予算策定、BPO検討など、ある意味SAPコンサルタント以上に幅広い経験ができるチャンスがあり、魅力的なポジションであると言えます。
未経験からSAPコンサルタントに転職することはできるのか
結論から申しますと、未経験からでもSAPコンサルタントに転職することは可能です。特に昨今、「2027年問題」による人材不足から、SIer・コンサルティングファーム各社の採用門戸は広がっており、転職できる可能性は高いと言えます。
しかしながら、幅広くかつ高いスキルが求められることから、未経験からの転職のハードルは低くありません。特に未経験からSAPコンサルタントを目指す場合、しっかりとした面接対策を行うと同時に、時間があれば前述の資格取得に向けた学習をお勧めいたします。
まとめ
SAPコンサルタントは幅広くかつ深い専門知識・スキルが求められるため、世界的に人材不足だといわれています。その分、SAPコンサルタントの報酬・年収は高く設定されており、各企業から重用される存在です。職務は重いですが、リモート可の案件も昨今増えており、自由度の高い働き方も可能になってきています。
SAPコンサルタントになるには、SAPに特化した知見と実績が必要で、以前は狭き門とみられていました。しかし、現在は案件数に対し稼働できるSAPコンサルタントが少ないため、未経験からでもSE・プログラマーとしての業務経験や、事業会社での基幹業務の経験を上手くアピールできれば十分にチャレンジ可能です。SAPコンサルタントならではのやりがいと上流コンサルタントとしての地位、高い報酬を目指す人にはおすすめの職種となります。