FASは「やめとけ」「後悔する」といわれる6つの理由を解説
2026年07月30日更新
FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)は、M&Aや事業再生といった企業の重要局面を財務面から支える専門集団です。年収水準の高さと専門性の伸ばしやすさから、監査法人や事業会社の財務部門、金融機関からの転職先として選ばれてきました。
しかし、「FASはやめとけ」「転職して後悔した」という声も一定数あります。ただし、その声の多くは激務そのものではなく、入社前に想定していた仕事と実際の業務のズレから生まれています。
この記事では、やめとけといわれる理由を6つに分解し、向いていない人の特徴や年収の実態、FASを離れたあとのキャリアまで解説します。
著者

岡﨑 健斗
Okazaki Kento
株式会社MyVision代表取締役
東京大学を卒業後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。主に金融・通信テクノロジー・消費財業界における戦略立案プロジェクトおよびビジネスDDを担当。採用活動にも従事。 BCG卒業後は、IT企業の執行役員、起業・売却を経て、株式会社MyVisionを設立。
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監修者

大河内 瞳子
Okochi Toko
株式会社MyVision執行役員
名古屋大学卒業後、トヨタ自動車での海外事業部、ファーストリテイリング/EYでのHRBP経験を経てMyVisionに参画。HRBPとして習得した組織設計、採用、評価などの豊富な人事領域経験を生かした支援に強みを持つ。
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目次
FAS(財務アドバイザリー)の求人情報
移転価格コンサルティング(アソシエイト/シニアアソシエイト)
想定年収
500~800万円
勤務地
東京都港区
業務内容
企業がグローバルに行う取引において、その価格設定が適正であるかを検証します。経済環境や業界動向のマクロ分析から、取引の詳細なミクロ分析までを行い、国際的に認められる基準に基づいた価格設定を提案します。 グローバル企業が顧客の中心であるため、異文化に触れる機会が多く、国際感覚やコミュニケーション力が養われます。 データ分析力や論理的思考力が求められる分野であり、数字に強い方や分析を得意とする方に適しています。入社後は、実際の案件を通して高度なスキルを習得し、専門性を高めることができます。 【業務内容】 ●移転価格リスク分析評価 ●移転価格文書化対応支援 ●移転価格調査 ●事前確認申請 ●相互協議 など ※下記のような資格や経験をお持ちの方は、バックグランドを活かせます! ●海外駐在経験者 ●事業会社での財務経理のご経験 ●金融機関での営業経験 ●シンクタンク等、コンサルティング会社でのご経験 ●公認会計士あるいはUSCPAの資格をお持ちの方 【キャリアパス(プロモーション速度、JOBローテ有無)】 ●縦割りではないため横断的な業務を経験できるほか、グループ内の「アドバイザーズ株式会社」への短期出向などを通じて、通常の税理士業務にとどまらない「コンサルティング業務」に挑戦できる明確なキャリア形成の選択肢がある 。 【組織体制】 ●部署名:税務部門(「ハイネットワース部門」「コーポレートタックス」「国際税務」など) ●構成メンバー:厳密な縦割りではなく、横断的な業務や協力体制が可能な環境 。 ●部署の雰囲気:社風としては「穏やかで優しい会社」。バリバリと働く意欲だけでなく、人間的なバランスが取れている人が集まっており、穏やかで誠実なタイプが組織のカラーに合っている 。
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【業務改善コンサルタント】ITで会計・人事領域のDXに貢献/税理士法人山田&パートナーズグループ
想定年収
500~700万円
勤務地
東京都千代田区
業務内容
税理士法人山田&パートナーズグループの当社にて、業務改善コンサルタントをお任せします。 ●現状分析・戦略策定: クライアントが抱えている悩みをヒアリングし、ITで何ができるかを考えます。 ●システム企画・要件定義: ・ヒアリングを通して現状整理、課題整理 ・導入する製品(主にバックオフィス系のクラウドサービスなど)の選定 ・投資対効果(ROI)の算出 ●進捗管理・品質管理: ・計画立て(WBSなどを作成)、定例などで進捗管理 ・各ベンダーの開発チームとクライアントの橋渡し ●導入支援・運用定着: ・操作マニュアルの作成・研修・業務フローの見直し(BPR) ・データ移行支援 変更の範囲:会社の定める業務
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財務コンサルタント(経験者 コンサルタント)
想定年収
600~1,000万円
勤務地
-
業務内容
・M&A に係る財務デューデリジェンスの実施 ・M&A に係る税務デューデリジェンスの実施 ・全社の業務効率化に向けた組織改革等のハンズオン支援 ・業務プロセス変革等のハンズオン支援 ・監査部門が実施する業務監査の実行支援 ・J-SOX 監査の実行支援 ・IPO に向けた経営基盤の構築支援 ・金融機関と協働した対象会社への財務デューデリジェンス実施 ・金融機関と協働した対象会社への事業デューデリジェンス実施 ・再生計画の策定支援
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経営企画・戦略企画・IR担当
想定年収
786万円~
勤務地
東京都中央区
業務内容
経営企画室メンバーとして、グループの成長戦略立案・推進と、IR活動の戦略的な高度化のため採用を行っております。 執行役員経営企画室長をはじめ、社長や取締役企画管理部長といった経営陣の近くで、グループの中期経営計画や長期的な成長戦略の立案・推進や、戦略的なIRを行うためのプラン検討、IR資料作成等を担って頂くポジションです。 経営企画室は社長直轄の組織で非常に風通しがよく、裁量をもった働き方が可能です。 IRに関しては、一定の経験を積んだ後には期間投資家との面談なども担当いただく予定で、 特に外国人投資家との英語での面談をする機会もあり、ビジネスレベルでの英語力を活かしたい方、伸ばしたい方にはやりがいのあるポジションだと考えています。 業績拡大局面にある上場企業の、少数精鋭の経営企画部門であり、淡々と決まったことをこなすような職場ではありません。 創造的な職場環境で、営業部門、営業企画部門、経理・財務等の企画管理部門などの多様な関係者と一緒に試行錯誤しながらグループ戦略を立案・推進し、IR活動を戦略的に強化していくための、協調性がありつつも行動力と思考力、そして弊社が大切にしている「誠実さ」を備えた人物をお待ちしています。 ◇ 弊社並びにグループ各社の経営指標や財務数値の定量・定性分析に基づく経営課題抽出と解決策の起案・推進による経営意思決定の推進 ◇ 弊社並びにグループ各社の中期経営計画の策定とモニタリング ◇ 新事業進出や海外進出戦略の起案と推進(含むM&A戦略) ◇ 部門責任者やグループ会社経営幹部とのコミュニケーション ◇ 全社横断的プロジェクト、グループ横断的プロジェクトの企画・推進 ◇ IR戦略の立案、実行 ◇ 機関投資家との面談 ◇ IR関連資料の作成 ◇ IR面談の実施状況や投資家からのフィードバックに関する分析、取締役会宛報告資料の作成 ◇ IR関連の法定開示資料作成支援 ◇ IR資料・開示資料の英語化、英文IR資料の作成、英語でのIR対応
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企業再生M&Aアドバイザー(みらい共創アドバイザリー)
想定年収
420~9,999万円
勤務地
東京都千代田区
業務内容
※企業再生アドバイザーであり、事業再生コンサルタント(ハンズオンでの立て直し)とは業務が異なりますのでご注意ください ●再生に関わる財務分析、再生スキームの策定支援、事業計画等の策定・実行支援、金融機関等利害関係者との交渉支援など。 具体的には、取引金融機関との合意・協力を得て、中小企業再生支援協議会の手続きを通じ、 スポンサー支援のもと企業再生を図るに当たっての各種調整・手続サポートを行う。 その際、対象となる企業の状況を理解し、適切なスポンサーを招聘する必要があり、 グループ会社のリソースや金融機関等のネットワークを活用し、各種手続支援・調整等のサポートを行う。 ●案件創出については、新規開拓よりはグループ会社からのトスアップがメイン。 ※企業再生アドバイザーであり、事業再生コンサルタント(ハンズオンでの立て直し)とは業務が異なりますのでご注意ください ■再生に関わる財務分析、再生スキームの策定支援、事業計画等の策定・実行支援、金融機関等利害関係者との交渉支援など。 具体的には、取引金融機関との合意・協力を得て、中小企業再生支援協議会の手続きを通じ、 スポンサー支援のもと企業再生を図るに当たっての各種調整・手続サポートを行う。 その際、対象となる企業の状況を理解し、適切なスポンサーを招聘する必要があり、 グループ会社のリソースや金融機関等のネットワークを活用し、各種手続支援・調整等のサポートを行う。 ■案件創出については、新規開拓よりはグループ会社からのトスアップがメイン。
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FASは「やめとけ」「後悔する」といわれる6つの理由
FASでやめとけといわれる背景には、労働時間の長さ、アサインによる経験差、業務内容のギャップ、求められる知識の広さ、責任の重さ、前職とのカルチャー差という6つの要因があります。
このうち転職者の後悔に直結しやすいのは、労働時間そのものよりも「アサインによる経験差」と「想像とのギャップ」です。入社前に確認しておけば避けられる項目が半分以上を占めます。
MyVisionでは、こうしたミスマッチを面談段階で洗い出す進め方をとっています。どんな流れで相談が進むかはご利用の流れにまとめてあります。
プロジェクトの佳境で労働時間が伸びるから
FASの労働時間は平準化されず、案件の山場に集中します。
M&Aアドバイザリーには入札期限や契約締結日という動かせない期日があり、その直前は買い手・売り手・弁護士・会計士のやりとりが一気に増えます。深夜や休日の対応が発生するのはこのタイミングです。
裏を返せば、案件と案件のあいだには比較的落ち着いた期間もあります。年間を通じて一定の残業が続くのではなく、繁忙と閑散の振れ幅が大きい働き方だと理解しておくほうが実態に近いでしょう。
生活リズムを一定に保ちたい人にとって、この振れ幅は大きなストレスになりやすいです。逆に、短期集中で動くことに抵抗がなければ、閑散期にまとまった休暇を取る働き方も選べます。
アサインされる案件で経験に差がつくから
同じファームに入っても、担当する案件によって身につく経験はまったく違います。
数千億円規模のクロスボーダー案件に入れば、初年度から海外の会計基準や税務スキームに触れられます。反対に、中小企業の事業承継案件が続けば、財務三表の実査と資料作成が中心になり、スキームを設計する経験は積みにくいままです。
FAS内部で「アサインガチャ」と呼ばれるこの構造は、若手ほど影響を受けます。とくに新卒や第二新卒で入社した場合、複数部門をローテーションする制度が設けられているファームでは、議事録の格納やデータ入力といった補助業務の期間が長引くこともあります。
配属先を選べる余地がどれだけあるのか、入社後のアサイン決定プロセスはどうなっているのか。面接の場で確認しておく価値があります。
想像していたM&A戦略より地味な作業が多いから
FASの仕事の中心は、戦略の立案ではなく検証です。
財務デューデリジェンス(買収前に対象企業の財務内容を精査する調査)では、過去数年分の総勘定元帳を突き合わせ、実態の営業利益や運転資本を洗い直します。1件あたり数百ページの資料を読み込み、異常値の理由を一つひとつ潰していく作業が続きます。
バリュエーションも同じで、DCF法のモデルを組んだあとは前提条件の妥当性を延々と検証します。経営層への提言はプロジェクトの最終局面にあり、日々の業務時間の大半は分析と資料作成に費やされます。
M&Aという言葉から連想する華やかさを期待して入ると、ここでギャップを感じます。数字の裏側を突き詰める作業そのものに面白さを見出せるかどうかが、続くかどうかの分かれ目です。
求められる専門知識の範囲が広いから
会計だけでは足りません。
日本基準に加えてIFRS(国際財務報告基準)や米国基準、組織再編税制、会社法、独占禁止法、そして対象企業が属する業界のビジネスモデル。案件ごとに必要な知識が変わり、そのつど短期間でキャッチアップする必要があります。
法改正や会計基準の改訂も続くため、業務時間外の学習が前提になります。監査法人時代は監査基準を深く極めれば通用したのに対し、FASでは浅くても広い領域を押さえたうえで、案件ごとに深掘りする動き方に切り替えなければなりません。
この学び直しを負担と感じるか、面白いと感じるか。適性を分ける要素のひとつです。
責任とプレッシャーが大きいから
FASの分析結果は、そのまま取引価格に反映されます。
デューデリジェンスで簿外債務を見落とせば、買い手は本来の価値より高い金額を払うことになります。バリュエーションの前提を誤れば、数十億円単位で評価額がずれます。取締役会に提出される資料の根拠を自分が作っているという緊張感は、若手であっても変わりません。
事業再生の案件では、再生計画の内容が対象企業の従業員の雇用を左右します。数字の話であると同時に、人の生活に触れる仕事でもあります。
この重さを達成感として受け止められる人もいれば、消耗してしまう人もいます。
前職とのカルチャーギャップが大きいから
後悔の声としてよく挙がるのが、前職との働き方の違いです。
監査法人から移った場合、繁忙期と閑散期が明確だった環境から、案件単位で動く環境に変わります。事業会社の経理・財務から移った場合は、業務のスピードと成果物への要求水準の差に戸惑うケースが目立ちます。
FASでは年次に関係なくクライアントの前に立ち、自分の分析を自分の言葉で説明することが求められます。丁寧なOJTが用意されているとは限らず、走りながら覚える文化が根づいているファームも多くあります。
「こんなはずじゃなかった」と早期に退職する人が生まれる背景には、能力の問題ではなくこの文化の落差があります。
【MyVision編集部の見解】 MyVision編集部が支援の現場で見ている限り、FASを短期間で辞める人に共通するのは、激務への耐性ではなく「入社前に確認していた項目の少なさ」です。労働時間だけを聞いて、アサインの決め方、担当できる案件規模、部門ローテーションの有無を確認しないまま入社するケースが目立ちます。
FASはファームどころか部門単位で働き方が変わる業界です。面接で担当予定チームの案件構成を具体的に聞けるかどうかが、入社後の満足度を大きく左右しています。
FASへの転職をやめたほうがいい人の特徴
FASは合う人と合わない人の差が大きい職種です。以下に当てはまる場合は、慎重に検討したほうがいいでしょう。
| 特徴 | 理由 |
|---|---|
| 労働時間の安定を最優先したい | 案件の山場に稼働が集中し、事前に予測しづらい |
| 会計・ファイナンスに苦手意識がある | 業務の大半が数字の読み解きで、逃げ場がない |
| 指示がないと動きにくい | 若手でも自分で論点を立てる進め方が前提 |
| 学び続けることを負担に感じる | 案件ごとに新しい業界知識と法制度の習得が必要 |
労働時間の安定を最優先したい人
定時退社や残業の少なさを転職理由の第一に置いているなら、FASは向きません。
クライアントの意思決定スケジュールに合わせて動く以上、自分の裁量で稼働をコントロールできる範囲は限られます。育児や介護など、時間の制約が外せない事情がある時期に飛び込む選択肢としてもすすめにくいのが実情です。
同じ財務系でも、事業会社の経営企画やM&A部門であれば、専門性を活かしながら稼働の予測が立ちやすい環境を選べます。
会計・ファイナンスに苦手意識がある人
数字から離れられる場面がありません。
財務三表の構造を理解していない状態で入ると、案件の初日から議論についていけなくなります。未経験からの転職自体は可能でも、簿記2級相当の知識すらない状態でのチャレンジは現実的ではありません。
コンサルティングに興味があるものの財務が苦手という場合は、総合系ファームの業務改革やIT領域のほうが力を発揮しやすいでしょう。
指示がないと動きにくい人
FASでは、若手であっても「この論点をどう検証するか」を自分で組み立てる場面が続きます。
上司から手順書が渡されることは想定しないほうがいいです。仮説を立て、必要なデータを特定し、足りなければクライアントに追加依頼する。この一連を回す前提で動く職場です。
丁寧な教育を受けながら段階的にステップアップしたい志向なら、事業会社や中堅の会計事務所で経験を積んでから挑戦する順序も選べます。
学び続けることを負担に感じる人
案件が変わるたびに、扱う業界も適用される制度も変わります。
製造業のカーブアウト案件の次にヘルスケア企業のクロスボーダー案件が来ることもあり、そのたびに業界構造を短期間で頭に入れる必要があります。会計基準の改訂や税制改正も追い続けなければなりません。
すでに持っている知識で長く戦いたいという考え方とは、相性がよくない職種です。
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それでもFASを目指す価値がある3つの理由
やめとけといわれながらもFASへの応募が絶えないのは、投じた時間に対するリターンが明確だからです。
3〜5年で市場価値が跳ね上がるから
FASで積む経験は、転職市場での評価に直結します。
財務デューデリジェンス、バリュエーション、PMI(M&A成立後の統合支援)といった業務は、経験者の絶対数が限られています。3〜5年しっかり案件を担当した人材は、PEファンドや事業会社のM&A部門から声がかかる状態になります。
同年代の平均と比べて年収水準が高いだけでなく、次のキャリアで選べる選択肢の幅が広がる点が大きな違いです。
出口の選択肢が広いから
FASは終着点ではなく通過点として設計できます。
PEファンド、投資銀行、事業会社の経営企画やCFO候補、スタートアップの財務責任者。いずれも財務モデリングと企業価値評価の実務経験を求めており、FAS出身者はその要件を満たしやすい立場にあります。
ハードな数年を投資期間と割り切れるなら、その後に働き方を選び直せる可能性が高い職種です。
M&A市場の拡大で需要が続くから
案件数の増加が、FASの人材需要を支えています。
後継者不在を背景とした事業承継M&A、大企業のノンコア事業の切り離し、海外企業の買収。いずれも財務面の専門支援を必要とする取引で、市場規模は中長期で拡大が見込まれています。
【MyVision編集部の見解】 短期的なワークライフバランスを最優先する人に、FASをすすめていません。M&Aや事業再生はクライアントが社運をかけた局面に立ち会う仕事であり、深夜や休日の緊急対応が避けられない場面が必ず出てきます。
この数年間を将来への投資と位置づけられる人にとっては、回収の確度が高い選択肢です。FASで3〜5年を過ごした人材はPEファンドや事業会社のCFO候補として引き合いが強く、結果として時間も場所も選べる立場に近づいていきます。判断すべきは激務かどうかではなく、その数年を投資と考えられるかどうかです。
FASに向いている人
向き不向きを分けるのは、会計知識の量ではありません。
短期集中で成果を出すことに納得できる人
繁忙と閑散の波を前提として受け入れられるかどうかが、最初の条件です。
案件の山場に集中して働き、終わったら休む。このリズムに違和感がなければ、FASの働き方はむしろ効率的に映るでしょう。若いうちに場数を踏みたいという動機とも噛み合います。
利害が対立する場をまとめられる人
FASの現場で問われるのは、計算力よりも調整力です。
買収される側の従業員の感情、利害が対立する銀行団との交渉、売り手と買い手の価格ギャップ。正解のない板挟みの状況で、粘り強く関係者の信頼を積み上げられる人がパートナークラスまで昇進しています。
PCに向かって黙々と分析するタイプよりも、泥臭いコミュニケーションを厭わないタイプのほうが、この業界では伸びやすい傾向があります。
数字の背景にあるビジネスを知りたい人
財務諸表を眺めるだけでは、企業価値は評価できません。
なぜこの事業の利益率が下がっているのか、この在庫の増加は何を意味するのか。数字を入り口にしてビジネスの構造を解き明かす作業に面白さを感じられる人は、FASの仕事を自分のものにしやすいでしょう。
【MyVision編集部の見解】 会計や数字に強い人が向いていると思われがちですが、重視されやすいのは調整力です。デューデリジェンスの現場では、開示を渋る売り手企業から必要な資料を引き出す交渉が日常的に発生します。
正論を振りかざすだけでは資料は出てきません。相手の立場を汲みながら、それでも必要なものは必要だと伝えられる。この人間力の有無が、実務でのアウトプットの質を左右しています。会計士資格を持たずにFASで活躍している人の多くは、この力で評価されています。
FASとは
FASは「Financial Advisory Services」の略称で、企業の財務に特化した専門コンサルティングサービスを指します。
経営コンサルタントが事業戦略や業務改善を主戦場とするのに対し、FASは財務・会計・資本の視点から経営課題に向き合います。公認会計士や金融機関出身のプロフェッショナルが中心となり、M&A、事業再生、不正調査といった局面を支援するのが特徴です。
FASの主な業務内容
| 業務 | 内容 |
|---|---|
| バリュエーション(企業価値評価) | M&Aや資金調達の際に、対象企業や事業の価値を算定する |
| デューデリジェンス(DD) | 買収対象企業の財務・税務・事業のリスクを詳細に調査する |
| M&Aアドバイザリー | 買収や売却の戦略立案から交渉、契約締結までを支援する |
| PMI(M&A後の統合支援) | 成立後の組織・業務プロセス・ITシステムの統合を進める |
| 事業再生・再編 | 経営不振企業の再建計画策定やノンコア事業の切り離しを支援する |
| フォレンジック(不正調査) | 粉飾決算や横領が発生した際の事実解明と再発防止策を提案する |
案件の入口はバリュエーションやデューデリジェンスが多く、経験を積むにつれてM&Aアドバイザリー全体の設計や、PMIのプロジェクトマネジメントを任される流れが一般的です。
フォレンジックと事業再生は独立した専門部門として運営されるファームが多く、キャリアの早い段階で領域を選ぶことになります。
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FASと投資銀行・M&A仲介・戦略コンサルの違い
同じM&Aに関わる仕事でも、立場と報酬構造が異なります。
| 職種 | 立場 | 主な役割 | 報酬構造 |
|---|---|---|---|
| FAS | 買い手または売り手の一方につく助言者 | DD、バリュエーション、PMIなど専門領域の検証 | 時間単価ベースのフィー |
| 投資銀行(IBD) | 買い手または売り手の一方につく助言者 | ディール全体のアレンジと資金調達 | 成約時のフィーが中心 |
| M&A仲介 | 買い手と売り手の双方につく | 相手探しから成約までの仲介 | 双方からの成功報酬 |
| 戦略コンサル | クライアント企業の助言者 | M&A戦略の立案、ビジネスDD | 時間単価ベースのフィー |
FASと投資銀行はどちらも一方の当事者につく点で共通しますが、担当範囲が違います。投資銀行が資金調達を含むディール全体を組み立てるのに対し、FASは財務・税務の検証や統合実務といった専門領域を深く担当します。
M&A仲介は双方から報酬を受け取る構造のため、中小企業の事業承継案件が中心です。取引を成立させること自体が成果になり、FASのように取引の妥当性を検証する立場とは役割が異なります。
戦略コンサルとの違いは、時間軸にあります。戦略コンサルが「買うべきかどうか」を扱うのに対し、FASは「いくらで、どう買うか」を扱う。実行フェーズに近いところで価値を出す職種です。
年収水準は投資銀行が最も高く、FASと戦略コンサルが続きます。ただしFASは時間単価ベースの報酬構造をとるため、ディールの成否によって年収が大きく振れにくい点が特徴です。
FASの年収
FASの年収は、同年代の平均を大きく上回ります。ファームと職位によって幅があるため、それぞれ整理します。
ファーム別の平均年収
| ファーム名 | 平均年収 |
|---|---|
| 合同会社デロイト トーマツ(旧DTFA) | 約938万円 |
| フロンティア・マネジメント株式会社 | 約1,030万円 |
| 株式会社経営共創基盤(IGPI) | 約1,081万円 |
| PwCアドバイザリー合同会社 | 約1,101万円 |
| 株式会社KPMG FAS | 約1,196万円 |
出典:OpenWork
なお、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社は、デロイト トーマツ コンサルティングおよびデロイト トーマツ リスクアドバイザリーと2025年12月1日付で合併し、商号が「合同会社デロイト トーマツ」に変わりました。求人票やコーポレートサイトの表記も切り替わっているため、応募時は新社名で確認してください。
参考:デロイト トーマツ グループ「新会社名称『合同会社デロイト トーマツ』を発表〜12月1日に発足」
職位別の年収レンジ
| 職位 | 想定年収 |
|---|---|
| アナリスト | 600〜900万円 |
| アソシエイト | 900〜1,200万円 |
| VP・マネジャー | 1,200〜1,500万円 |
| シニアVP・シニアマネジャー | 1,500〜2,200万円 |
| ディレクター・パートナー | 3,000〜6,000万円 |
アナリストからアソシエイトへの昇格はおおむね3年前後、マネジャーまでは入社から6〜8年が目安です。ここまでは実績次第でスピードが変わる程度ですが、ディレクター以上は案件を獲得する力が問われるため、昇格のハードルが一段上がります。
年収の伸びを目的にFASを選ぶ場合、マネジャークラスの1,200万円台が現実的な到達点になります。そこから先を目指すなら、専門性に加えて営業力を身につける必要があると考えておいたほうがいいでしょう。
Big4系FASと独立系FASの違い
同じFASでも、ファームの成り立ちによって案件も働き方も変わります。
| 項目 | Big4系FAS | 独立系FAS |
|---|---|---|
| 代表的なファーム | 合同会社デロイト トーマツ、PwCアドバイザリー、KPMG FAS、EYストラテジー・アンド・コンサルティング | フロンティア・マネジメント、経営共創基盤、山田コンサルティンググループ |
| 案件規模 | 大型・クロスボーダー案件が多い | 中堅企業の再生・承継案件が多い |
| 業務範囲 | 部門ごとの専門特化が進んでいる | 一人が担当する範囲が広い |
| 監査法人との関係 | 独立性規制により受託できない案件がある | 制約が少なく柔軟に受託できる |
Big4系は大型案件に関わる機会が多い反面、部門による分業が進んでいます。財務デューデリジェンス部門に配属されればその領域を深く経験できますが、ディール全体を見渡す機会は限られます。
独立系は、一人が担当する範囲が広いのが特徴です。事業再生の現場でハンズオン支援に入るなど、実行フェーズまで踏み込む案件も多くあります。分業が進んでいない分、幅広い経験を早期に積める環境といえるでしょう。
やめとけと語られるときの前提が、どちらのタイプを指しているのかで話は変わります。稼働の重さでいえばBig4系の大型案件のほうが波が大きく、担当範囲の広さでいえば独立系のほうが負荷が高くなりがちです。
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未経験からFASに転職するために準備すること
未経験からの転職は難関ですが、準備の順序を間違えなければ道はあります。
有利になる資格を押さえる
資格そのものより、何を証明できるかが評価されます。
| 資格 | 評価されるポイント |
|---|---|
| 日商簿記2級 | 財務三表を読める最低限の証明になる |
| TOEIC | クロスボーダー案件への適性を示せる。800点前後が目安 |
| USCPA(米国公認会計士) | IFRSや米国基準の知識と英語力を同時に示せる |
| 税理士 | 組織再編税制やタックスDDで専門性を発揮できる |
| 公認会計士 | 財務DDやバリュエーションで即戦力と見なされやすい |
公認会計士を持っていれば選考は有利に進みますが、必須条件ではありません。事業会社の財務部門や銀行の法人融資で培った経験が評価されて入社する人もいます。
資格がない場合でも、学習中であることを面接で伝えられれば前向きな姿勢として受け止められます。優先順位をつけるなら、簿記2級を取得したうえでUSCPAの学習に着手する流れが現実的です。
志望動機で「なぜFASなのか」を語れるようにする
コンサルティングに興味がある、M&Aに関わりたい。この水準の理由では通りません。
FASが提供するM&Aアドバイザリー、財務デューデリジェンス、バリュエーション、事業再生のうち、どの領域で何を身につけたいのか。そして5年後にどんなプロフェッショナルになっていたいのか。ここまで具体化して初めて、志望動機として機能します。
自身の原体験と接続できるとさらに説得力が増します。営業職として顧客企業の与信を判断した経験、経営企画で投資判断の資料を作った経験。財務的な視点の必要性を実感した場面があれば、それを起点に組み立ててください。
面接で財務視点の経験を接続する
スキルの羅列ではなく、FASの業務にどう活きるかまで言い切る必要があります。
USCPAの学習で財務諸表分析の基礎を習得した、という説明だけでは足りません。その知識を使って前職のどの場面で何を判断したのか、そしてデューデリジェンスの現場でどう再現できるのか。この接続まで語れると評価が変わります。
過去に扱った案件の金額規模、関わった部門の数、自分が担当した範囲。定量的に説明できる材料を棚卸ししておきましょう。
FASに詳しい転職エージェントを使う
FASは部門単位で状況が変わるため、外から見えない情報の比重が大きい業界です。
同じKPMG FASでも、バリュエーション部門と事業再生部門では稼働も求められるスキルも違います。どの部門でいま採用が動いているのか、面接官が誰で何を重視するのか。こうした情報は求人票には載りません。
MyVisionではFAS各社の部門別の選考傾向を蓄積しており、過去の面接で実際に聞かれた質問をもとにした対策も提供しています。支援を担当するのはコンサルファーム出身のエグゼクティブコンサルタントです。詳しくはコンサルタント一覧を確認してください。
FAS経験者のその後のキャリアパス
FASを出たあとの進路は、大きく3つに分かれます。
PEファンド・投資銀行
財務モデリングと企業価値評価の実務経験が、そのまま応募要件に合致します。
PEファンドは投資先の選定から価値向上までを担うため、デューデリジェンスの経験者を継続的に採用しています。投資銀行についても、FASで大型案件を担当した実績があれば中途採用の対象になります。
いずれも採用枠が限られる領域ですが、FASでの案件実績が明確であれば挑戦する価値はあるでしょう。
事業会社の経営企画・M&A部門・CFO
腰を据えて一社に関わりたい人が選ぶルートです。
上場企業の経営企画部門やM&A部門では、買収候補の評価やPMIの推進を担当します。スタートアップであれば、資金調達とIPO準備を担うCFOのポジションもあります。稼働の予測が立てやすくなる一方で、年収は下がるケースが多い点は押さえておきましょう。
FASでの経験を活かしながら働き方を整えたい場合、この選択肢が現実的です。
同業FAS・コンサルファーム
業界内での移籍も一般的です。
Big4系から独立系へ移って担当範囲を広げる、あるいは独立系からBig4系へ移って大型案件に関わる。特定の領域を深めるために、事業再生に強いファームへ移る人もいます。
FAS業界は人材の流動性が高く、3年程度の経験があれば選択肢は複数出てきます。
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ポストコンサルの転職先・キャリアパス9選と後悔しないための対策
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FASに転職するならMyVision
MyVisionは、コンサルティングファーム200社以上とのネットワークを持つコンサル業界特化の転職エージェントです。在籍するエグゼクティブコンサルタントは、コンサルファームでの実務経験者と転職支援の実績を積んだスペシャリストで構成されています。
FAS領域では、M&Aアドバイザリー、財務デューデリジェンス、バリュエーション、PMIといった部門別のポジションをカバーしています。一般には公開されていない求人や特別選考ルートの案内も可能です。
まとめ
FASがやめとけといわれる理由は、労働時間の長さ、アサインによる経験差、業務内容のギャップ、求められる知識の広さ、責任の重さ、前職とのカルチャー差の6つです。
このうち入社後に自分でコントロールできる要素は多くありません。だからこそ、面接の段階でアサインの決まり方や担当予定チームの案件構成を確認しておくことが、後悔を避ける最も効果的な手段になります。
3〜5年の経験を投資と割り切れる人にとっては、PEファンドや事業会社のCFOという出口が現実的に見えてくる職種でもあります。判断すべきは激務かどうかではなく、その数年を自分のキャリアにとって意味のある投資と呼べるかどうかです。
自分に合うファームがどこなのか、未経験から挑戦できる状態にあるのか。迷ったときは、業界の内情を把握しているエージェントに相談したうえで判断してください。
FASに関するよくある質問
FAS転職を検討する人から寄せられる質問をまとめました。
FASはなぜ激務といわれるのですか
FASが激務といわれるのは、M&Aや事業再生に契約締結日や入札期限といった動かせない期日があり、その直前に業務が集中するためです。
年間を通じて残業が続くというより、案件の山場に稼働が偏る働き方です。閑散期にはまとまった休暇を取れるファームもあり、繁忙と閑散の振れ幅が大きい点が実態に近いといえます。
未経験からFASに転職できますか
未経験からの転職は可能ですが、財務・会計の素養を証明できることが前提になります。
事業会社の財務部門、銀行の法人融資、監査法人での監査経験など、数字を扱ってきた実務があれば選考の土俵に乗れます。資格がない場合は、日商簿記2級の取得を最低ラインと考えておくといいでしょう。
FASと投資銀行はどう違いますか
どちらも取引の一方の当事者につく助言者ですが、担当する範囲が異なります。
投資銀行は資金調達を含むディール全体を組み立てるのに対し、FASは財務・税務の検証や統合実務といった専門領域を深く担当します。報酬構造も、投資銀行が成約時のフィー中心であるのに対し、FASは時間単価ベースが中心です。
FASを辞めたあとはどんなキャリアがありますか
PEファンドや投資銀行、事業会社の経営企画・M&A部門やCFO、同業FASやコンサルファームへの移籍が主な進路です。
財務モデリングと企業価値評価の実務経験は応募要件に直結するため、3年程度の経験があれば複数の選択肢が出てきます。稼働を落として専門性を活かしたい場合は、事業会社の財務部門が現実的な選択肢になります。

