バリューチェーン分析とは?目的や方法をわかりやすく解説
2026年02月27日更新
「自社の強みがどこにあるのか明確に説明できない」 「コスト削減を進めたいが、どこから手を付けるべきかわからない」
経営戦略や事業改善に取り組む中で、こうした課題に直面することがあります。バリューチェーン分析(価値連鎖分析)は、事業活動を機能ごとに分解し、どの工程で企業の価値が生み出されているかを特定する強力なフレームワークです。
本記事では、バリューチェーン分析の基礎知識から、具体的な分析手順、IKEAやユニクロなどの成功事例までを解説します。さらに、分析精度を高めるための関連フレームワーク(SWOT分析や3C分析など)との組み合わせ方も紹介するので、自社の競争優位性を再定義し、勝てる戦略を立案するためにお役立てください。
著者

岡﨑 健斗
Okazaki Kento
株式会社MyVision代表取締役
東京大学を卒業後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。主に金融・通信テクノロジー・消費財業界における戦略立案プロジェクトおよびビジネスDDを担当。採用活動にも従事。 BCG卒業後は、IT企業の執行役員、起業・売却を経て、株式会社MyVisionを設立。
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監修者

山口 翔平
Yamaguchi Shohei
株式会社MyVision代表取締役
早稲田大学を卒業後、JTB、オリックス生命を経てコンサルティング転職に特化した人材紹介会社へ入社。 長年のエージェント経験を基に、より多くの求職者様に対して質の高い転職支援サービスを提供するため、株式会社MyVisionを設立。
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目次
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コンサルタントの求人情報
E_32_【AIエージェント活用/MAツール導入】顧客の成功をデザインするマーケティングプロジェクト推進担当(リーダー候補)
想定年収
500~800万円
勤務地
東京都港区
業務内容
●業務概要 多くの企業がDXを推進する中で、デジタルマーケティングの人手不足やノウハウ不足が課題となっており、業務におけるデータ分析や、生成AI等を活用した生産性向上に関するニーズも増加しています。 マーケティングディレクターとして、クライアント企業のサービスや製品の売上拡大を目的に、デジタルチャネルを活用したプロモーションを推進していただきます。 顧客が抱える課題は、リードジェネレーションからリードナーチャリング、カスタマーサクセスまで幅広いため、データを活用した施策立案から実行までを伴走支援する役割を担います。 また、マーケティンツールや生成AI活用したコンテンツ制作やデータ分析を通じて、効率的かつ高品質なマーケティング支援を実現していただきます。 ●想定業務 業務内容 ①事業・マーケティング戦略の策定と推進 クライアントのビジネス目標達成のため、マーケティングの戦略を立案し、部門横断的なプロジェクトとして施策を推進していただきます。 単一の施策に留まらず、マーケティング全体のプロセスを改善し、効率を高めるための仕組みづくりも担っていただきます。 ②データドリブンな改善活動と業務支援 MAツールやBIツールなどの様々なデータ・マーケティングツールを幅広く活用し、複数のプロジェクトや施策の進捗・成果をモニタリング。 データに基づいた仮説検証を繰り返し、成果を最大化するための改善提案をクライアントに行い、実行をサポートしていただきます。 ③マーケティング業務の効率化 AIエージェントや自動化ツール(UIPath等)といった新しい技術を活用し、日々のマーケティング業務を効率化・省力化する取り組みを推進していただきます。 上記のような業務を、クライアント社内のグループや部署、社外の協力会社等とコミュニケーションを取り、プロジェクト全体を円滑に進めるディレクターとしての従事していただきます。 ※配属後は数週間の研修後、プロジェクト支援に入っていただきます。 配属後は顧客の成果創出におけるコミュニケーション設計や施策設計~実行・検証、改善提案までを担当します。 ※所属メンバーはほぼリモートでの勤務になりますが、顧客環境やPJT内容によって顧客オフィスへの出社をお願いすることもございます。
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DXリードコンサルタント(グローバル:小売)
想定年収
650~1,800万円
勤務地
東京都品川区
業務内容
●業界動向 東南アジアハブとして多くの日系企業がシンガポール進出をする中、一部の企業を除いてIT活用は小規模体制で推進されており非日系企業と比較しアジア域内において遅れていることから顧客満足並びに生産性が低下するリスクを抱えています。一方、当地IT部門がある場合もリージョン全体をカバーする必要がありプロジェクトリードないしは専門的知識を保有する人材は常に不足しています。 ●業界に与える価値 Future Global Design(FGD)では、各レイヤーの顧客を支援すべく、IT戦略策定、システム導入の支援からマルチカントリープロジェクトを視野に入れたプロジェクトマネジメント支援を提供しています。進出日系企業のビジネスプロセス全体最適化、ITを活用したスキルアップやサービス向上、IT投資の最適化実現を顧客と共に取り組んでいます。 将来的には非日系、東南アジア全体を含めて本活動を広げていき、顧客の適切なIT投資と活用を支援してまいります。 ●職務内容 PM/PMO in 東南アジア 東南アジアを対象に金融・物流・小売業界などのクライアントに対して、IT企画やシステム/ソリューション導入フェーズなどのプロジェクトをリードして頂きます。また、これらプロジェクトを通じてクライアントの信頼を獲得し、経営とITの戦略的パートナーとしての地位を確立することが最大のミッションです。 ●職務の詳細 当該ポジションの最初の職務は、シンガポールに進出している日系小売企業の基幹システム刷新プロジェクトの推進になります。 PMOとして、ソリューション導入フェーズから積極的にクライアントのステークホルダー及びベンダーをリードし、プロジェクトの計画と実行においてリスク・コストの両面から最適解を追求しプロジェクトのQCDを達成するのがゴールです。 ●役割と期待 PMO(リーダー)として、以下の役割を担当して頂きます。 - プロジェクトのスケジュール管理と成果物のレビュー - リスクの早期検知と課題管理及び対策検討 - ステークホルダーへのプロジェクト進捗報告 - ミーティングのアレンジとファシリテーション - クライアント及びベンダーとの信頼関係構築 - 客先半常駐 in シンガポール ●案件事例 ・日系大手小売業の業務基幹システム刷新プロジェクトのPMO支援 ・本邦メガバンクのアジア・オセアニア拠点における勘定系システム更改プロジェクトのPMO支援 ・本邦地銀のシンガポール拠点における業務支援システム開発導入プロジェクト ●その他条件などについて ・採用後シンガポール現地法人での勤務を想定しています。(赴任に伴い給与の物価水準考慮、家賃補助、教育費一部補助) ※業務内容の変更の範囲: 当社業務全般に従事いただく可能性がございます。
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DX事業支援(UI/UXデザイン)
想定年収
-
勤務地
東京都港区
業務内容
●オリックス(株)法人営業本部デジタル戦略推進室にて勤務していただき、新規事業であるSaaSサービスのUI/UXデザインを担当していただきます。 ●ビジネス視点を持ち、関係部署を巻き込みながら業務を推進します。 ●様々なバックグラウンドを持った中途入社の社員も多く、自由闊達でフラットな組織です。 【業務例】 ●UI/UXデザイン ・Figmaを用いたUIデザインおよびプロトタイプ作成 ・UXを意識したデザインとインタラクションの検討 ・ユーザビリティテストの実施および改善提案 ・フロントエンド開発チームとの連携 ※詳細事業内容や採用後ポジションは面接時にご説明いたします。
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08.財務会計・業務改革コンサルタント | 経理経験者
想定年収
400~600万円
勤務地
東京都千代田区
業務内容
●業務プロセスの効率化 ・経理財務の業務改革 ・決算の早期化 ・経理財務BPO/シェアードサービス化 ●経営情報の可視化 ・予実管理プロセス改革 ・経営情報の多軸分析 ●ガバナンスの強化 ・経理財務領域の統合支援(PMI) ・内部統制構築支援/J-SOX ●IT戦略策定 ・RFP作成及びベンダー選定支援 ・システム導入プロジェクトにおけるクライアントPMO業務 ・会計システム/経費精算システム等の導入支援 ・パッケージソフトウェアのインプリメンテーション ※ITコンサルタントとチームを組成してIT領域の支援まで担います (業務の変更範囲について:その他当社の指定する職種)
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29.IT戦略・ERP導入コンサルタント | 事業会社出身者
想定年収
800~1,500万円
勤務地
東京都千代田区
業務内容
●事業概要: 激変する外部環境において、多くの企業が「限られた経営資源の最適配分」という課題に直面しています。 当社は、AI時代の成功法則として「コーポレートドリブン経営」を提唱。テクノロジーとBPRを組み合わせ、非創造的な業務を徹底的に自動化し、生まれた時間で経営戦略を可視化・実行する。 ーそんな「真の経営参謀」としての役割を担っています。 その中核を担うTechnology & Process Design(TPD)事業部は、中堅・準大手企業(年商100億〜3,000億円で、より中核は500億円~1,500億円)をメインターゲットに、AI活用を前提としたデータ基盤を基幹システムの刷新×BPRを通じて、「経営管理の高度化」と「現場の業務変革」を同時に実現しています。 ●仕事内容: 基幹システム(ERP等)の刷新プロジェクトにおいて、上流工程から実行支援まで、プロジェクトマネジメントおよびコンサルティング業務をリードしていただきます。 ・企画・構想策定: 経営課題に基づいたあるべき姿(To-Be)のデザイン ・BPRの推進: Fit to Standardを前提とした、部門横断的な新業務プロセスの設計 ・システム選定支援: RFPの作成、システム・ベンダー選定のアドバイザリーを特定製品に偏ることなく実施 ・導入PMO: プロジェクト全体の進捗管理、課題管理、およびユーザー部門間の利害調整 ・意思決定支援: 経営層に対するデータに基づいた投資判断や戦略的アドバイス (業務の変更範囲について:その他当社の指定する職種)
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バリューチェーン分析とは
バリューチェーン分析とは、マイケル・E・ポーター教授が提唱した、企業の事業活動を「価値(バリュー)の連鎖(チェーン)」として捉えるフレームワークです。
原材料の調達から製品が顧客に届くまでの各工程を機能ごとに分解し、「どこで価値が生まれ、どこにコストがかかっているか」を分析します。
具体的には、以下の4点を明らかにするために用いられます。
- コスト削減の機会特定:コストがかかりすぎている工程を見直す
- 付加価値向上の機会特定:顧客満足度を高める工程を強化する
- 競争優位性の源泉特定:競合他社と比較して優れている点を探る
- 事業再編・再構築の検討:アウトソーシングや資源配分の判断材料にする
これらを可視化することで、自社の強みや弱みを客観的に把握できます。
感覚的な判断ではなく、構造的な理解に基づいた戦略を立案するために不可欠なプロセスです。
バリューチェーン分析の構成要素
バリューチェーンは、企業活動を価値創造の観点から「主活動」と「支援活動」の2つに分類したものです。
主活動は、顧客に直接的な価値を提供する一連のプロセスです。外部から原材料を調達・保管する「購買物流」にはじまり、製品やサービスへ転換する「製造・オペレーション」、完成品を配送する「出荷物流」、市場に魅力を伝えて販売する「マーケティング・販売」、販売後の顧客満足度を維持する「サービス」の5段階で構成されます。
一方の支援活動は、主活動が円滑かつ効率的に遂行されるよう横断的にサポートするプロセスです。戦略や財務などの組織基盤を運営する「全般管理」、従業員の採用や育成を行う「人事・労務管理」、競争力を高める「技術開発」、必要な資源を最適な条件で購入する「調達活動」の4要素から成り立っています。
バリューチェーン分析をおこなう目的
バリューチェーン分析をおこなう主な目的は、以下の3点です。
- 自社の強みを可視化するため
- 無駄なコストを削減し利益拡大するため
- 経営資源の最適な分配方法を考えるため
バリューチェーン分析の第一の目的は、自社の事業活動全体を俯瞰し、強みを可視化することです。
具体的には、製品やサービスが顧客に届くまでの購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービスといった主活動と、それらを支える人事・労務管理、技術開発、調達活動といった支援活動の連鎖を詳細に分解し、それぞれの活動が最終的な顧客価値の創造にどのように貢献しているかを明らかにします。
このプロセスを通じて、他社と比較してどの活動が優れているのか、独自のノウハウや特殊なスキルがあるのかが明確になります。
第二に、バリューチェーン分析は、無駄なコストを削減し、結果として利益を拡大することが目的です。
事業活動の各段階では必ずコストが発生しており、この分析を通じてコスト構造を詳細に把握することで、非効率な部分や削減可能なコストを具体的に特定できます。
そして第三の目的として、経営資源の最適な分配方法を考えることです。
企業が保有するヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源は有限です。
分析結果に基づき競争優位性の強化に繋がる活動や、大きなコスト削減効果が見込まれる活動など投資対効果の高い領域を見極めることで、そこに優先的に資源を配分することが可能になります。
サプライチェーン分析との違い
バリューチェーン分析とサプライチェーン分析は混同されがちですが、焦点となる範囲や目的が異なります。それぞれの違いは以下のとおりです。
| 分析手法 | 目的 | 焦点・範囲 |
|---|---|---|
| バリューチェーン分析 | 「どこで価値を生み出すか」の追求 | 自社内の活動・価値創造プロセス(ミクロ〜マクロ視点) |
| サプライチェーン分析 | 「いかに効率的に届けるか」の追求 | 企業間のモノの流れ(オペレーショナルな視点) |
バリューチェーン分析のやり方
バリューチェーン分析は、現状を可視化し、競合優位性を確立するための重要なプロセスです。
分析は、大きく以下の4つのステップで進めます。
- 自社の事業活動(バリューチェーン)を洗い出す
- 各工程のコストを把握・分析する
- 競合と比較して自社の強み・弱みを特定する
- VRIO分析で競争優位性を評価する
具体的な例を交えながら解説します。
自社の事業活動(バリューチェーン)を洗い出す
最初のステップは、自社の事業活動を工程として細分化し、可視化することです。
事業活動を「主活動」と「支援活動」に分類し、どの活動で付加価値が生まれ、どこにコストが発生しているかを整理します。
スーパーマーケットを例に、具体的な洗い出しイメージを見てみましょう。
【主活動の例】 顧客に商品を届ける直接的なプロセスです。
- 購買物流:顧客ニーズに基づいた商品の選定、仕入れ、在庫管理
- 製造・オペレーション:商品の陳列、レジ業務、店舗維持管理
- 出荷物流:オンライン販売における商品の梱包、配送手配
- 販売・マーケティング:広告、販促キャンペーン、店舗レイアウトの工夫
- サービス:問い合わせ対応、返品受付などのアフターフォロー
【支援活動の例】 主活動を支えるバックオフィス業務です。
- 技術開発:POSシステムの導入、オンラインストアの開発
- 人事・労務管理:店舗スタッフの採用、教育、勤怠管理
- 調達活動:店舗備品や設備の調達
- 全般管理:経営戦略の策定、財務管理、店舗開発
このように細分化することで、漫然と業務を見るのではなく、「どの工程がボトルネックか」「どの工程が顧客満足に貢献しているか」を特定する準備が整います。
各工程のコストを把握・分析する
次に、洗い出した各活動に対し、実際に発生しているコストを割り当てていきます。
事業全体のコスト構造を可視化し、収益性を高めるための重要なフェーズです。
ここでは、コストの金額だけでなく、コストを変動させる主要因(コストドライバー)を特定することがポイントです。
- 製造工程の要因:生産量、機械の稼働時間
- マーケティングの要因:広告の出稿量、制作本数
各活動に投入されているコストと、その活動が生み出す付加価値を比較検討することで、「コストに見合う価値を創造できているか」をシビアに評価できます。
経営資源が過剰に集中している箇所や、逆にリソース不足で機会損失している箇所を明らかにします。
競合と比較して自社の強み・弱みを特定する
自社の分析だけでなく、競合他社との比較を取り入れることで、市場における立ち位置を客観的に評価します。
有価証券報告書やWebサイト、業界レポートなどの公開情報を活用して競合のバリューチェーンを推測して自社と比較検討します。
- 強み(優位性): 競合より高い付加価値を生んでいる領域、コスト競争力で勝っている部分、模倣困難な独自ノウハウがある箇所
- 弱み(課題) :競合に対して劣っている点、コストが過大になっている部分、事業全体の足を引っ張っているボトルネック工程
単なる「良い・悪い」の印象論ではなく、工程レベルでの具体的な勝てるポイントと負けているポイントを浮き彫りにします。
VRIO分析で競争優位性を評価する
最後に、特定した強みが「持続的な競争優位」につながるかを評価するために、「VRIO(ブリオ)分析」をおこないます。
以下の4つの視点で経営資源をチェックし、その強みの質を見極めます。
- Value(経済価値) その資源は、機会の活用や脅威の無力化に役立ち、売上や利益に貢献しているか
- Rarity(希少性) その資源を保有している企業は少数か、競合が容易に入手できないものか
- Imitability(模倣困難性) 競合がそれを真似しようとした際、多大なコストや時間がかかるか
- Organization(組織) その資源を有効活用するための組織体制やフローが整備されているか
バリューチェーン分析で「どこが強いか」を特定し、VRIO分析で「その強さは本物か」を検証することで、精度の高い戦略立案が可能になります。
【MyVision編集部の見解】
教科書的な解説では「各工程のコスト削減」に目がいきがちですが、MyVision編集部が実務やケース面接対策において重視する「本当に見るべきポイント」は、「工程間のつながり」です。
たとえば、「調達コスト」を下げた結果、「製造コスト」や「不良品対応」のコストが跳ね上がっては意味がありません。優秀なコンサルタントは、個別の工程だけでなく「全体最適になっているか」という視点でバリューチェーンを評価します。この「つながりを見る視点」こそが、単なる分析屋とストラテジストを分ける境界線です。
バリューチェーン分析の具体的な事例
バリューチェーン分析を深く理解するために、世界的な企業の成功事例を見ていきましょう。
IKEA、ユニクロ、トヨタ自動車の3社は、それぞれ独自のバリューチェーンを構築し、他社には真似できない競争優位性を確立しています。
IKEA
IKEAのバリューチェーンは、設計・調達・物流を一体で最適化し、低価格を実現している点が最大の特徴です。
主活動の起点は、購入者が組み立てることを前提とした製品設計にあります。
フラットパック構造を採用することで輸送時の容積を圧縮し、物流コストを削減しました。
調達・製造面では世界各国のサプライヤーと連携し、スケールメリットを追求しています。
また、独自の行動規範「IWAY」によって品質や労働環境の基準を統一し、供給体制の安定化を図っているのもポイントです。
店舗運営においては、倉庫型店舗でのセルフサービス方式を導入しました。
徹底した効率化により、デザイン性と低価格を両立する独自の競争優位を築いています。
※参考:IKEA Global「The IKEA value chain」 ※参考:IKEA「Democratic Design」
ユニクロ
ユニクロは、企画から販売までを自社で一貫して管理するSPA(製造小売業)モデルを中核としています。
主活動の起点は、素材メーカーと共同でおこなう商品企画や素材開発です。
ヒートテックに代表される機能性素材を開発することで、他社との明確な差別化を図りました。
製造面では自社工場を持たず、海外の委託工場を活用するファブレス体制をとっています。
一方で、「匠(TAKUMI)チーム」と呼ばれる技術者を現地へ派遣し、品質管理を直接指導することで高いクオリティを維持しています。
販売フェーズでは、需要予測に基づく在庫コントロールにより、安定供給と過剰在庫の抑制を両立させました。
すべての工程を統合的に管理することで、高品質な商品をリーズナブルに提供できる体制を構築しています。
※参考「ユニクロのビジネスモデル」
トヨタ自動車
トヨタ自動車のバリューチェーンは、「トヨタ生産方式(TPS)」を軸とした調達・製造プロセスに強みを持ちます。
購買物流では「ジャスト・イン・タイム(JIT)」を徹底し、必要なものを必要なときに調達する仕組みを構築しました。
在庫コストを削減し、生産効率を最大化しています。
製造工程では、異常発生時にラインを止めて問題を解決する「自働化」が機能しています。
不良品の流出を防ぐとともに、「カイゼン」活動を通じてムダを排除し続けているのが特徴です。
支援活動においては、サプライヤーとの長期的なパートナーシップが基盤です。
環境負荷を低減するグリーン調達や次世代モビリティへの投資も積極的におこない、持続的な競争力を維持しています。
※参考:TOYOTA「ステークホルダーの皆様と共に成長するサイクル」 ※参考:TOYOTA「トヨタ生産方式」
バリューチェーン分析に活用できるフレームワーク
バリューチェーン分析は単独で用いるだけでなく以下のようなほかのフレームワークと組み合わせることで、さらに高い効果が得られます。
- PEST分析
- ファイブフォース分析
- 3C分析
- SWOT分析
- VRIO分析
- コア・コンピタンス分析
- KPI/KGIツリー
詳しく見ていきましょう。
PEST分析
PEST分析は、企業を取り巻くマクロ環境を網羅的に把握し、それが自社の事業活動にどのような影響を与えるのかを予測・評価するためのフレームワークです。
PEST分析は、以下の4つの頭文字を取ったもので、これらの要因が企業経営にどのような影響を与えるかを分析します。
- P:政治的要因(Politics)
- E:経済的要因(Economy)
- S:社会的要因(Society)
- T:技術的要因(Technology)
PEST分析の結果をバリューチェーンの各活動に照らし合わせることで、マクロ環境の変化が自社のどの部分にどのような影響(機会または脅威)をもたらすのかを詳細に検討することができます。
たとえば、技術的要因として新たな自動化技術が登場した場合、バリューチェーンの「製造・オペレーション」活動においてコスト削減や品質向上の機会が生まれるかもしれません。
また、社会的要因として環境意識が高まっている場合、「技術開発」活動において環境配慮型製品の開発が求められるでしょう。
▼PEST分析について詳しく知りたい人は、以下の記事もおすすめです。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、業界の収益性を決定する5つの競争要因を分析し、業界の構造や魅力度を明らかにするためのフレームワークです。
ファイブフォース分析では、以下の5つの競争要因(脅威)に着目します。
- 業界内の競争
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
バリューチェーン分析がコスト削減や付加価値向上の機会を探るために「自社内部の活動」に焦点を当てるのに対し、ファイブフォース分析は「自社を取り巻く外部環境」の競争要因を明らかにします。
これらふたつのフレームワークを組み合わせることで、多角的な戦略的洞察を得ることが可能になります。
3C分析
3C分析は、事業戦略やマーケティング戦略を立案する際に用いられる、基本的かつ重要なフレームワークのひとつです。
- 顧客 (Customer):市場や顧客のニーズは何か。
- 競合 (Competitor):競合他社はどのような状況か。
- 自社 (Company):自社の強みや弱みは何か。
これら3つの要素を多角的に分析することで、自社が市場で成功するための戦略を導き出すことができます。
3C分析によって導き出された自社の現状認識、とくにその強みや弱みといった要素は、バリューチェーンのどの活動が中心なのか見ていくことで、より具体的な戦略へと昇華させることができます。
たとえば、3C分析の結果、自社の「高い製品品質」が強みであると認識された場合、バリューチェーン分析を用いることでその品質が研究開発部門の卓越した技術力によるものなのか、あるいは製造工程における厳格な品質管理体制の賜物なのか、または高品質な原材料の調達力に支えられているのか、といった具体的な要因を特定することが可能です。
▼3C分析について詳しく知りたい人は、以下の記事もおすすめです。
SWOT分析
SWOT分析は、以下の4つの要素の頭文字を取って名付けられた分析手法で、企業や事業の現状を多角的に把握し、今後の戦略立案に役立てることを目的としています。
- Strengths (強み)
- Weaknesses (弱み)
- Opportunities (機会)
- Threats (脅威)
これらの要素を、「内部環境」と「外部環境」、「プラス要因」と「マイナス要因」というふたつの軸で整理します。
バリューチェーン分析を通じて具体化された企業の「強み」と「弱み」は、次にSWOT分析の枠組みの中で、市場の成長機会や競合の動向、技術革新、法規制の変更といった外部環境の「機会」や「脅威」と照らし合わせられます。
このクロスSWOT分析の過程において、バリューチェーンの情報は戦略の具体性を高めるのが特徴です。
たとえば、自社の「強み」である高度な研究開発能力を、成長著しい新規市場という「機会」に結びつけることで、「強みを活かして機会を捉える戦略」として考えることができます。
▼SWOT分析について詳しく知りたい人は、以下の記事もおすすめです。
VRIO分析
VRIO(ブリオ)分析は、企業の持つ経営資源(リソース)が競争優位性を持つかどうかを、4つの視点から体系的に評価するためのフレームワークです。
以下の4つの頭文字を取って評価をおこないます。
- Value(経済価値):その経営資源は、外部環境の機会を活かすか、脅威を無効化することで経済的な価値を生んでいるか
- Rarity(希少性):その経営資源を保有している企業は少数か、入手が困難か
- Imitability(模倣困難性):その経営資源を競合他社が模倣しようとした際、多大なコストや時間がかかるか
- Organization(組織):その経営資源を有効活用するための組織体制やフローが整備されているか
バリューチェーン分析によって洗い出された自社の「強みと思われる活動」をVRIOの視点で精査することが重要です。
これにより、その強みが一時的なものなのか、それとも長期的に利益を生み出し続ける「持続的な競争優位の源泉」なのかを見極められます。
コア・コンピタンス分析
コア・コンピタンス分析は、他社には真似できない、自社の中核となる強み(コア・コンピタンス)を特定するための分析手法です。
単なる「得意分野」ではなく、コア・コンピタンスとして認められるには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 顧客に何らかの利益をもたらす自社能力であること
- 競合相手に真似されにくいこと
- 複数の市場や製品に応用・展開できること
バリューチェーン分析と組み合わせることで、一連の事業活動の中で「どのプロセス」がコア・コンピタンスを生み出しているかを具体的に特定できます。
特定された活動へ集中的に経営資源を投下することで、他社との差別化をより強固なものにし、市場における優位性を確立する戦略が可能になります。
KPI/KGIツリー
KPI/KGIツリーは、企業の最終的な目標(KGI)を達成するために必要なプロセス指標(KPI)を、ロジックツリーを用いて構造化・可視化するフレームワークです。
目標達成に向けた因果関係を以下のふたつで整理します。
- KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標。売上高や利益率など、最終的に達成すべきゴール
- KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標。ゴールにいたるプロセスが順調かを測る中間指標
バリューチェーン分析で可視化した各工程(活動)に対して適切なKPIを設定することで、事業全体の目標達成に向けた進捗管理が容易になります。
どの工程のパフォーマンスが全体の成果(KGI)に貢献しているか、あるいはボトルネックになっているかを数値で把握し、具体的な改善アクションにつなげるために有効です。
【MyVision編集部の見解】
MyVision編集部では、「バリューチェーン分析だけで戦略を完結させること」を推奨しません。
なぜなら、バリューチェーン分析はあくまで「現状の可視化」に過ぎず、それ自体が「競争優位」を保証するものではないからです。
実際に、自社の強みを洗い出しただけで満足し、「それが他社に模倣されにくいか(VRIO)」の検証を怠った結果、すぐに競合に追いつかれてしまうケースは後を絶ちません。「バリューチェーンで強みを見つけ、VRIOでその持続性を確かめる」というセット運用を徹底することが、勝てる戦略立案の鉄則です。
まとめ
バリューチェーン分析は、企業の事業活動を価値(バリュー)の連鎖(チェーン)として捉え、どの工程で付加価値が生み出されているかを分析して競争優位戦略を検討する手法です。
目的は自社の強みの可視化、無駄なコストの削減、経営資源の最適な分配です。
具体的なやり方として、活動の洗い出し、コスト把握、競合比較、VRIO分析などがあります。
PEST分析などほかのフレームワークと組み合わせることで、より効果的な戦略立案に繋がります。
経営の知識のひとつとして、ご参考にいただければ幸いです。
MyVisionは、実務経験豊富なコンサルタントが在籍しており、一人ひとりの志向に合わせたキャリア支援をするのが特徴です。
あなたの市場価値を最大化するキャリアパスを提案いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。




